プロローグ
部屋中に安堵の溜め息が響いた。
それまで張り詰めていた空気が緩み、人々は互いに顔を見合わせ、微笑み合った。
そして、それをかき消すように赤ん坊が泣き始めた。
王女が誕生したという知らせは、瞬く間に国中に広まった。
齢、四十に近い王妃が始めて産んだ子供、王位継承者である。
ナカリアでは、王妃または女王の第一子は、その性別に関わらず、王位継承者となる。
国民としては、王位継承者の誕生を心から喜んでいいはずだった。
ひとつ問題があった。
王妃は、双子の王女を出産したのだ。
それも、先に手を出した胎児は手を引っ込め、もう一人が先に出てきたのである。
王位を二人で継ぐわけにはいかない。
国王は知らせを聞くと深く悩んだ。
今まで、王家に双子が生まれたことなどなかった。
数秒差で生まれただけで、どちらもたった今、生まれたばかりなのだ。
どちらを王位継承者にするか、この一つの選択が国の未来を変えるのだ。
このことは当然国中で議論を巻き起こし、国は混乱した。
国王は大臣たちと何度も会議開き、今は二人ともに同等の王位継承権を与えることを決定した。
そして、二人が十八歳になったとき、王位継承者としてどちらが相応しいかを試す試験が行われることになった。
そんなことを知りもせず、二人の赤ん坊はすくすくと育っていった。