【09】おいでよ!メラ忍の里2(アプリ坊主外伝9)
さて、みなさんはバウムクーヘンという食べ物をご存知だろうか? そう、コンビニ等でよく見かける樹木の年輪に似たケーキの事です。
その歴史は意外と古く、なんと紀元前まで遡るそうな。古代の人々が木の棒に生地を絡めつけて焼き、また生地を絡ませて…と延々と繰り返し、気がついたら21世紀になっていた訳ですね(飛躍)
なにやら飛躍している道中に、時は戦国時代の真っ只中、ふと一人の職人がおりました。
「ん”ん”~~っ!」
「トレビア~~ン!!」
名を【バウムクーヘン伯爵】と言い、外国出身の彼は単身日本に渡り、ゴールドラッシュで沸いている現地で一財産を成すべく今、こうしてバウムクーヘン作りの奥義を長老の前で披露しているという訳なのです
「あっ///あづっ!!」
「バッ…」
「バウムぅ~」
「あづうぅ!!」
バウムクーヘン伯爵は股間でバウムクーヘンを焼いていた。なぜ股間で焼かなければならないのか?それはそこに棒があるからだ。
棒と穴。この人類の命運を懸けたテーマが人々の涙を誘うのだ(適当)
『おッ…おお!』
囲炉裏を取り囲む長老以下、メラ忍の里の人々が感嘆の声をあげる
「(カタカタカタ)」
「トレビア~ン…ん”っ!!」
彼の股間の天護の構造は至ってシンプルだ。
手元のハンドルをくるくると前後に回転させると、内部の歯車が垂直に噛み合って可動し、動力が棒状の部分に伝わる。
ただ、それをそのまま回転させてしまうと、伯爵の股間がねじ切れてしまうだけなので、棒状の部分は二重構造になっていた
「(…ドボッ!)」
「(カタカタカタ)」
「熱つぅ!!」
原材料のパンケーキミックスに天護を浸し、それを直火であぶる。未だかつてこれほどまでにスリリングなバウムクーヘンの焼き方が在ったであろうか?
『これはなんたる妙技ッ!!』
『流石は異国の紳士』
『ばうむくーへんなる物を股間で焼き上げておるッ!!』
『内ヶ島の御殿様もさぞ、お喜びになさるに違いないッ』
長く伸ばした長老の髭がちりちりと業火の熱を帯び、うねうねとうごめく
「ん”ん”~~っ!」
「トレビア~~ン」
「バウムク~ヘェ~ン♪」
「あづっ!」
慎重に股間をあぶる伯爵。体臭と木の焦げた香りとパンケーキの甘い香りとが混ざり、まばたきのようなチラチラとした微かな囲炉裏の中心から放たれたそれは、長老部屋の外壁へと伯爵の影法師をなぞる。
あと念の為書いておくが、危険ですので絶対に真似をしないように。
彼は訓練された料理人なのでそれはもう、股間でケーキを焼くことぐらいは簡単にできる。
だが我々はそういった訓練は受けてはいない。股間の火傷は即、死に繋がる。すなわち我々が股間でバウムクーヘンを作る事は渋々断念せざるを得ないのだ。
「ん”おぉっ!!」
「(ジュウウウ!)」
パンケーキミックスに浸した天護から湯気が立ち上る
『(がさがさがさ)』
『ハフッ!!はふっ……もぐ』
長老の側に控えていた下忍が、コンビニ袋からミルフィーユを取り出しパクつく。その時だった
『……ぇ~!』
遠くで叫び声が聴こえた
『まてぇぇぇ!!』
「はぁ…はぁ!」
「まつかコノヤロウ!」
そのやりとりはみるみるうちに近づき、やがてドタドタと長老屋敷へと乗り込んでくる。
『何事ぢゃ!』
「一大事でござる」
「どっかの隠密が大暴れしてます!」
『どっかとはどこじゃ?』
「…どっかです」
そうこうしているうちに
「おまえが長老かコノヤロウ!!」
旅人が到着する
『…なにか御用ですかな?』
『こちらは只今取り込んでます故…』
「股間に小麦粉…」
「なにをわけのわからん事をやっている!!」
「とにかく逃げ切ったのだから俺の勝ちだ」
「さっさとホテルを用意しやがれコノヤロウ」
『…そういうことでしたらすぐに用意させましょう』
しばらくして追いついた追っ手がぞくぞくと押し寄せ、食物繊維が足りていない腸内のように廊下に詰まる。彼らは長老と旅人のやりとりを静かに見守っていた。




