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『第六十三話 ダンジョン攻略戦in教会(Ⅱ)~ティッセ・ダイマスsaid 前編~』

 他のメンバーと別れたティッセとダイマスは、一番左の通路をゆっくりと歩き始める。

 先ほどと同じように松明はあるものの、明らかに出現する頻度は減っていた。

 そのため、通路は非常に薄暗い。


 おまけに二人が並んでギリギリ歩けるくらいの幅しかなく、戦おうにも剣では不利。

 計算されたダンジョンだといえるだろう。


「こんなダンジョンが認知されていないほうがおかしいんだけど……何かおかしい」

「ああ。認知されていないダンジョンもあるにはあるが……ここはどう見ても探索済みだ」


 壁に使われている煉瓦からは魔力を感じる。

 これはモンスターが既に倒されているという証拠であり、探索者がいたという証拠だ。

 しかも、つい最近に。


「マスナン司教たちの気配は変わらないか?」

「ずっと地下にいるよ。どうやら広い部屋にいるみたいで、二人とも動いているけど」

「大まかな位置は変わらないってことか」


 ダイマスの【支配者の分析】は人の思考などは分析できるものの、気配は察知できない。

 ゆえにティッセの【気配察知】は助かるのである。

 そのまま歩いていると、ティッセがモンスターの襲来を知らせた。


「モンスターの気配だ。Aランク級のモンスターが二体。恐らくはガーゴイルだろうな」

「分かった。僕が前衛を担当する。ティッセは後衛をお願い」


 ダイマスはそう言うと、空中を睨みつける。

 ガーゴイルは蝙蝠型の魔物だ。

 体が石で出来ており、ギルドではAランク相当の実力がないと倒せないと言われている。


「前は僕がやる。リーデン王家式剣術の壱、【桜花】」

「分かった。火の精霊よ、彼らを燃やす弾を放て。【火炎弾】」


 左右に並んで接近してきたガーゴイルは、ティッセとダイマスの攻撃により瞬殺される。

 しかし、ガーゴイルの死とともに通路が変貌。

 前方に、ボスが待機していますと言わんばかりの模様が彫られている扉が出現した。


「ティッセ、あの扉は……」

「中から強い魔力を感じる。中ボスだとは思うが……下手をすればアリアクラスだぞ」


 精霊使いのアリアはメンバーの中でもかなり魔力が多い。

 それと同程度といえば、ギルドでSランク冒険者だけのパーティーが組まれるほどである。

 つまり災害級の魔物だということだ。


「回避できる道はないみたいだし……覚悟を決めるしかないね」

「そうだな。念のために精霊を準備しておこう」


 ティッセがそう言うと、肩の当たりの空間が歪み、そこから小さな女子が飛び出してきた。

 髪、瞳、そして服が真っ赤で、背中には透明な翼が見える。


「火の精霊を用意した。これでいつでも魔剣が作れるから心配はいらない。突っ込むぞ」

「分かった」


 ダイマスは短い返事をすると、持っていた剣を強く握りしめた。

 ティッセが勢いよく扉を開けた途端に、三メートルはあろうかというゴーレムが顔を上げる。

 青い瞳が怪しく光り、まるで部屋に入るのを待っているかのように静止。

 ひたすら入り口を見据えていた。


「厄介だね。あのゴーレムは魔法耐性を持っている。近づかないと攻撃が当たらないぞ」

「しかし、こんなに見られてたらな……。部屋に入った瞬間に蜂の巣になるぜ」


 ティッセがゴーレムの右腕を指で示す。

 そこにはガトリング砲のようなものが装着されており、明らかにティッセたちを狙っていた。


「でも、ここで黙っていても仕方がないだろ。僕が指揮を執るから大丈夫だ」

「【支配者の分析】か。ちゃんと俺を動かしてくれよっと!」


 ティッセが不敵な笑みを浮かべながら部屋に突入すると、ゴーレムが動き出した。

 右腕のガトリング砲から雨のように水魔法が降り注ぎ、ティッセの体を濡らしていく。


「ちっ……水魔法を放つことで、火の精霊の威力を弱めているのか。予想以上に狡猾だ」

「右に三歩進んでから、前に四歩。三秒静止してから右に四歩進んで!」


 ティッセが極力濡れないように、ダイマスは部屋の外に陣取って采配を振るっている。

 ゴーレムは部屋の中にいる敵しか攻撃しない設定になっているのだろう。

 ダイマスは一度も攻撃を受けていなかった。


 やがてゴーレムに近づいたティッセは左足に魔剣を突き刺すが、手ごたえがまるでない。

 それどころか、むしろ回復しているように見える。

 ティッセは舌打ちをしてから一歩下がり、ゴーレムの巨体を見上げるしかなかった。


「ダイマス、これはどういうことだ? 剣を突き刺したら回復しちまったぞ」

「ダメージは受けていなかったはずなんだけど……。より強くなっているってことかな?」


 ダイマスも状況が掴めていない。

 どんな能力があれば、魔法攻撃に耐性がつき、物理攻撃で回復するようになるのか。


 いや、そもそもダメージを与えることが出来るのだろうか。

 ティッセとダイマスが混乱していると、ゴーレムが足元にいるティッセに気づいたのだろう。

 左足を上げて、ティッセを踏み潰そうとした。


「おっと! とにかく来てくれ。こいつの相手は俺一人だけじゃ無理だ!」

「そうだね。少し試したいこともあるし……行くか!」


 ダイマスが部屋に入ると、ゴーレムは左腕からもう一つのガトリング砲を出した。

 しかも今度は火魔法のガトリングであり、氷魔法を使うダイマスにとっては天敵である。


「やっぱり僕たちのデータが入っているみたいだね。でも、どうして……」

「分からないことが多すぎるな! しかし、まずはこいつの攻略法を探らないと!」


 ティッセは水魔法を避けながらゴーレムの巨体を見やる。

 その胸には扉と同じ模様が彫られており、無機質なゴーレムを豪華に見せていた。


「とにかく攻撃するぞ!」

「ティッセは頭を頼む。僕は胴体だ。ダメージを与えられる場所を探すぞ!」

「おう!」


 ヘルシミ王国の王都が占領されるまで、あと二日と五時間。

 ティッセとダイマスはボス戦を行っていたのだった。


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