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『幕間5 リーデン帝国重役会議(Ⅲ)』

2020.12.30 加筆しました!

 新しい騎士団長は、どう考えても騎士だとは思えない風貌をしていた。

 むしろ皇帝の側室だと言われた方が納得できる。


「リリー、レイラ。彼らがリーデン帝国の重役たちだ。詳しい説明は後でな」

「はい。皆さん、これからよろしくお願いいたします」


 二人が浅くお辞儀した。

 その様子を見たハルックが嫌悪感を露わにしたが、言葉には出さない。

 もう皇帝を諫められるものは会議室内には存在しないと分かっているからだ。


「お前たちには紹介しておこう。まずは第三騎士団長のリリー=グリードだ」

「よろしくお願いいたします」


 リリーは今年で三十歳になる女性騎士で、イリナとアリアの母親でもある。

 元々は近衛騎士団に所属していたが、皇帝に見初められてヒナタの後釜に座った。

 鋭い水色の瞳は相手に威圧感を与えるだろう。


「第三騎士団長は、娘がヘルシミ王国に逃亡してしまったという可哀想な女性だ」

「なるほど。娘を取り戻したいということですか」


 騎士総長のダンが冷静に問いかけた。

 そろそろ名誉挽回しないと、自身の進退問題に関わるダンにとって部下は生命線。

 きちんと使える人物か見極める必要がある。


「はい。娘を取り戻すためならば何だって致します」


 リリーは小さく頷いたが、彼女にとって娘たちを逃してしまったのは痛恨のミス。

 ゆえに触れられてほしくない部分でもあることは想像に難くない。

 質問をぶつけたダンもそれを敏感に感じ取り、すぐに話題の転換を試みた。


「皇帝陛下、彼女の紹介はまだですか?」

「おお、そうだったな。第四騎士団長に就任してもらうレイラ=モーズだ」

「よろしくお願いいたしまーす」


 レイラは今年で二十三歳になる若手の踊り子で、騎士になった経験すらない。

 見覚えのない人物だと気づいたのだろう。

 ハルックが嫌悪感を露わにしたのも、このレイラを見たからである。


 皇帝が地方に行ったとき、橙色の髪の女性が街中で踊っているのが目に留まった。

 何らかの関係を持とうと話しかけたところ、昔は女騎士に憧れていたという。

 そこでハリーを排除し、彼女を後釜に据えようと画策したのだ。


「レイラはまだまだ若手だ。きっちり面倒を見てやってくれ」

「……承知いたしました」


 ダンは一泊の間を置いて、しかしやる気があるように装って返事をした。

 部下としては恐らく使えない。

 しかし皇帝の覚えがいいようなので、別の意味で使えると判断したのである。


 新しい騎士団長たちとの顔合わせも済んだところで、話題はいよいよ戦いに移る。

 まず質問したのは近衛騎士団長のオールだ。


「今回は常備軍二万を投入するということですが、総指揮官をどなたにするので?」

「私だ。今回は私が自ら出る」


 皇帝はそう言うと、歴代の皇帝が戦に出るときに必ず持っていたという剣を取る。

 銀色の刃が蝋燭の明かりに照らされて鈍く光っていた。


「分隊は私、ヘールス、リリー、レイラの四人に指揮を執ってもらおう」

「承知いたしました。第一騎士団長、出陣まで手ほどきをお願いできませんか?」


 レイラが突然ハルックに問いかける。

 彼女は美貌で皇帝に取り立てられた人物のため、指揮についてはもはや素人。

 このままでは使い物にならない。


 ハルックは気が進まなかったが、皇帝とダンが鋭い視線でこちらを見ている。

 ゆえに頷くしか選択肢はない。

 これもヘルシミ王国打倒のためだと自分に言い聞かせ、なんとか納得した。


「分かりました。皇帝陛下、出陣はいつでしょうか」

「七日後だ。それだけあればレイラにも指揮技術が身に着くし、準備も整う」

「はっ」


 ハルックは短く返事をしただけだったが、内心では舌打ちをしたい気分であった。

 七日間で指揮の技術が身につくはずないだろう。

 しかし先ほども言ったように、皇帝の暴走を止められる人物は既に存在しない。

 

 ハルックはため息をついて天を仰いだ。

 すると会議室のドアを数回ノックする音が響き、皇帝が眉をひそめた。


「何者だ?」

「イルマス教国の教皇猊下がお見えになりました。いかがいたしますか?」

「スラダム殿が? この部屋に通せ」


 即答であった。

 しばらく経ってから再びドアがノックされると、皇帝は重々しい口調で言う。


「入室を許可する」

「はっ。教皇のスラダムでございます。今夜はヘルシミ王国についてお話が少々」

「ほぅ?」


 入室したスラダム教皇は恭しい動作で膝をつき、ヘルシミ王国の地図を広げる。

 ところどころに赤い点が打たれていて、門にも印がつけられていた。


「赤い印がついているところが教会です。戦争を行う際の補給線はここを」

「おお……いいのですか?」

「私どもは先にヘルシミ王国への攻撃を開始しています。第一弾は成功しました」

「第一弾?」


 訝しげに尋ねる皇帝に向けて、スラダム教皇は一つの魔道具を見せた。

 近づかなくとも禍々しい気配が漂っているのが分かる。

 四人の騎士団長たちが揃って眉をひそめた。


「何ですか、この禍々しい魔道具は」

「魔力溜まりを人為的に作る魔道具です。これで騎士団の連中をフルフス王国付近に追いやることに成功しました」

「なるほど。そこで相談なんですが……我が国と協力関係を結ばせてはもらえないでしょうか。もちろん謝礼は弾みます」


 皇帝はスラダム教皇に顔を近づけた。


 この場でイルマス教会と同盟を締結したリーデン帝国は、七日後に侵攻を開始。

 ヘルシミ王国の王都を窮地に陥れるのであった。

少しでも面白いと思ってくださったら。

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