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『幕間4 リーデン帝国重役会議(Ⅱ)』

第三章ラストでーす!

 ティッセたちが王城で模擬戦をしている頃。 

 宰相のフーナからもたらされた情報が、リーデン帝国の上層部を感激させた。


 ――ヘルシミ王国にティッセたち、そしてべネック=ロマナも在籍している。


 今まで問題とされていたことを一気に二つも片づけられる。

 喜んだ皇帝はヘルシミ王国に攻め込むべく、臨時で重役会議を行うことにした。


「今宵は皆によい報告がある。あのべネック=ロマナがヘルシミ王国で確認された」

「べネック=ロマナって……あの行方不明の?」

「そうだ。これで面倒な案件を二つまとめて片づけることが出来るぞ」


 訝しげに尋ねた第三騎士団長、ヒナタ=パールの問いに皇帝は上機嫌で答えた。

 ティッセたちがヘルシミ王国に逃げたことも分かっているのだ。

 ヘルシミ王国を手中に収めることが出来れば、五人の罪人を一気に捕縛できる。


 その言葉に第二騎士団長のヘールス=ジャックが狂気じみた笑みを浮かべた。

 彼は彼で、ダイマスに並々ならぬ敵愾心を抱いている。


「それは本当に良い報告です! これでダイマスを心置きなくぶっ飛ばせる!」

「勝ったこともないくせに……」


 第四騎士団長のハリー=オスカルがポツリと漏らすが、運よくフーナの声にかき消された。


「つきましては、すぐにでも常備軍二万を投入するべきだと考えます」

「投入するのは構わないでしょうが……相手の兵力は分かっているのですか?」

「相変わらず空気の読めない女だ。時にヒナタ。お主の第三騎士団長の任を解く」


 皇帝がにべもなくクビを宣告する。

 彼にとって、諫めるような言葉を突きつけてくるヒナタは厄介な存在であった。

 今回の討伐作戦にも反対だという心情が言葉の端々から読み取れる。


 ――そんな奴はリーデン帝国にはいらない。


 敵国を攻める前なのにもかかわらず、リーデン帝国陣営に大きな亀裂が入った。

 騎士総長のダン=シエールがわずかに眉をひそめる。

 突然クビを宣告されたヒナタは取り乱す様子もなく、あくまで冷静に尋ねた。


「私がクビ……ですか。失礼ですが第三騎士団を潰すおつもりですか?」

「おいヒナタ!?」

「そうですぞ! 第三騎士団の団員は揃ってヒナタ=パールを慕っております!」


 ハリーが慌ててヒナタを押しとどめる一方で、ダンが擁護に回る。

 彼は密かにヒナタを好いており、彼女のクビをどうにか回避したかったのだ。

 しかし、ここぞとばかりに近衛騎士団長――オール=マイズが反撃に回った。


「おやおやー、ダン殿は皇帝陛下の決定に異議を唱えるおつもりですかー?」

「ヘルシミ王国を倒すためならば、私はいくらでも異議を唱えましょうぞ!」

「つまり第三騎士団が機能しないと、我が国に勝利はないというのですか?」


 今まで沈黙を貫いていた第一騎士団長、ハルック=モーズが呟いた。

 以前、ティッセたちに敗北した彼はヘルシミ王国に強い憎しみを抱いている。

 そんなハルックの地雷を踏みぬいてしまったことに気づいたダンは、顔を歪めた。


「そういうわけではない。しかし戦力はあるに越したことはないだろう」

「皆さま、落ち着いてください。大切なことを見落としていらっしゃいますわ」


 不毛な争いを一旦収束させたのは、皇帝の隣に座っていたフーナである。

 フーナはヒナタを一瞥してから、まるで舞台女優のように大げさな口調で語った。


「皆さん、今回の相手はどこですか? はい、ハリーさん」

「ヘルシミ王国ですけど……」

「その通り。つまり今回の戦は人が……ヘルシミ王国の騎士が相手というわけです」


 次に続く言葉が予測できてしまったダンは、あまりの悔しさに唇を噛んだ。

 反論のしようがない完璧な理論。

 オールなどは自身の勝利を確信して、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。


「第三騎士団は何を倒すのが仕事でしたっけ? ねえ、ダン騎士総長?」

「ぐっ……」

「確かにそうですなぁ。私も役割の件などすっかり失念しておりました」


 オールがわざとらしく手を叩いた。

 これ以上の説得は不可能だと判断したヒナタは、静かに立ち上がって一礼した。


「ヒナタ、クビに応じるのか?」

「はい」

「今までご苦労だったな。ゆっくりと休むといい」


 ヒナタはその言葉には何も答えず、もう一度礼をするだけに留めた。

 飄々とした態度を崩さず退室していくヒナタに、皇帝の口から舌打ちが漏れる。

 あんな失礼な奴、解雇して正解だった。


「ちっ……最後まで愛想のない女だ。ついでにハリー、お前もどこかに行け」

「ぼ、僕もですか!?」


 突然の解雇宣言に慌てた様子を見せるハリーだったが、実はこの展開は予測済み。

 皇帝が第四騎士団長を良く思っていないことは重役全員の共通認識であった。

 後任探しをしていたということも、もちろんこの場にいる全員が把握している。


「そうだ。いいからさっさと去れ。邪魔だ」

「し、失礼いたします」


 先ほどまでとは違い、ダンも擁護する気はなさそうだった。

 何かに弾かれたように会議室を後にするハリーを見送った皇帝は指を鳴らす。

 すると二人の女性が部屋に入ってきた。


「紹介しよう。左が新第三騎士団長のリリー。右が新第四騎士団長のレイラだ」


 再び、騎士団に激震が走った。

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