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『第三十七話 属性調べ』

 その後、昼食を食べた俺たちは再度訓練場に集まる。

 朝は剣の素振りや木剣を使った模擬戦など、近接戦を中心とした訓練だったからな。

 次に行われるのは魔法の訓練だろう。


 そんなことを待ち時間に考えていると、べネック団長が小さな水晶を持ってきた。

 透明な球体が太陽の光に照らされて美しく輝いている。


「随分と綺麗な水晶ですね。これは何ですか?」

「自分が持っている属性を調べる魔道具だ。古代属性にも対応しているぞ」

「古代属性なんていつ使うんですか」


 俺は呆れながら問いかける。

 古代属性は千年前に使われ始めたと言われている、今の精霊魔法の原点だ。

 精霊が絶滅してしまって放てない属性も多く、調べても役に立つことはないだろう。

 しかし俺の予想に反して、べネック団長は真剣な口調で話し始めた。


「古代属性を使わないと解けない迷宮なども存在する。そのような時に必要な事項だ」

「なるほど……?」


 べネック団長は真面目そうな顔でみんなを見回す。

 ギルドマスターがそのようなことを言っていたと思うが、綺麗さっぱり忘れてしまった。

 そもそも俺は迷宮に潜る依頼を受けることが少ない。


 つまり、他の冒険者たちに比べると迷宮の知識なんていらないということだ。

 わざわざ依頼に必要がない情報なんて覚えないって。


「確か、対応する古代属性の魔力を流すことで解ける仕掛けが大半ですよね」


 ダイマスがポツリと漏らす。

 迷宮はほとんどが国の管轄に置かれるため、何らかの形で関わる機会もあったのだろう。

 むしろSランク冒険者だったのに知らなかった俺がおかしいのだが。


「分かったら調べ始めるぞ。朝に行った模擬戦の順番に調べに来い。まずはダイマスだ」

「了解です」


 ダイマスが水晶に手を乗せると、指の間から黄色、白色、灰色の光が天に伸びていった。

 天に伸びた色が、その人が精霊に好かれる属性を表しているのだろう。

 剣に込めることができる魔力もこれに当たる。


「ふむ。ダイマスは土と光と古代属性の時空属性だな。悪くはない組み合わせだと思うぞ」

「時空属性って……あの超レアスキルと言われている!?」


 自分が時空魔法を使える体質だとは思っていなかったのか、ダイマスが目を見開いた。

 しかし魔力ならともかく、時空魔法を操る精霊は既に絶滅していてる。

 もし時空魔法を使うことが出来たら、彼や第三騎士団の大きな武器になったのだが。


「次はアリアだな。【精霊使い】を持っていたとしても精霊の好みは反映されるから注意だ」

「そんな初歩的なことは知っています!」


 アリアは極めて心外だという顔をしながら水晶へと手をかざす。

 光の色は水色、黒……ピンク?


「氷、闇、古代魔法で誘惑属性とは随分と妙な組み合わせだな。なかなか面白い」

「ちょっと、誘惑属性って何ですか!?」


 アリアが悲痛な叫びを上げる。

 誘惑属性は未だに絶滅していない唯一の古代属性で、相手を洗脳状態に出来る属性だ。

 これを属性と呼んでいいのかは微妙なところだが、一般的には属性として扱われている。


「誘惑の精霊も珍しいからな。頑張って捕まえたらいいんじゃないか?」

「そんな精霊に好かれても嬉しくないです……」


 誘惑属性は剣に通してもあまり意味を持たないしな。

 ガックリと項垂れたアリアをチラッと見ながら、姉であるイリナが前に出てきた。

 能力からして近接戦を主とする剣士タイプだし、精霊に好かれるタイプではないだろう。

 水晶から伸びていった色は青と緑の二色で、古代属性はない。


「水と風だな。イリナにとって魔法はあくまで補助だから、これで十分だろう」

「ええ。風があれば相手と距離を取ったり、その逆も出来ますから使い勝手はいいですよ」


 イリナは結果に満足そうだ。

 水属性も先ほどの模擬戦のように相手が木剣を使っていた場合は腐らせることが出来る。

 意外と実践向きの能力だと言えるだろう。


 最後は俺だが、普段は火しか使っていないから赤一色しか伸びなかったりして。

 一抹の不安を感じながら水晶に手をかざすも――何も起こらない。

 あれ? 火の精霊には好かれているんじゃないの?

 俺が首を傾げていると、べネック団長も故障を疑ったのか水晶を凝視しはじめた。


 次の瞬間、「うわっ!?」という悲鳴とともに四色の光が天に伸びていく。

 赤、白、紫、銀という不思議な組み合わせだ。

 これには目をしばらく擦っていたべネック団長も首を傾げた。


「火属性、光属性、毒属性までは分かるのだが……金色が分からないな。新属性か?」

「僕も分かりませんね。ただ……神属性の可能性はあります」


 ダイマスが漏らした言葉を聞いた第三騎士団の全員が、一斉に無言で辺りを見回す。

 しかし真っ昼間だからか、訓練場の周りには誰もいない。

 再度【気配察知】を使って辺りを確認した俺は、ため息をついてからダイマスを睨んだ。


「いきなり物騒なことを呟くな!」

「神属性の精霊に好かれる人は上級貴族に飼い殺しにされるという噂もあるのよ!?」


 俺とイリナの抗議にダイマスは慌てだす。

 助けを求めるようにべネック団長を一瞥したが、彼女はジト目で視線を送るだけ。

 言い訳を諦めたダイマスが頭を下げた。


「ごめん。金色の光なんて初めて見たから興奮しちゃって。次からは気をつけるよ」

「頼むぜ。俺は上級貴族に軟禁されるなんて絶対に嫌だからな」


 せっかく新しい地でチャンスを掴もうというところで、妙な邪魔が入るのは避けたい。

 神属性は危険な属性だ。


 恐ろしく強力な力を得られる代償として、自我を失わせる効果があるといわれている。

 まさか自分が“それ”を使えるかもしれないなんて……。

 そういえば、謁見の間でイリナが攻撃されたときに自我を失っていた気がする。

 あれも神属性と何か関係があるのだろうか。


「オホン、とりあえず自分が得意な属性が分かったところで魔法の訓練を始めるぞ」

「「「分かりました!」」」


 その後、俺たちはべネック団長の指導のもとで魔法の技術を磨いた。

 一日が訓練だけで終わってしまったが、冒険者時代と比べれば自分のペースで出来るのでむしろ楽になったといってもいいだろう。


 少なくとも三日後、非常に面倒な案件が舞い込んでくるまでは。


少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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