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『第百四十三話 邪神の力(ハル視点)』

 まずは屋敷の原状復帰をするべきだろうか。

 これからやることの順序を考えていると、ロバン公爵が頭を下げる。


「申し訳ない。私の詰めが甘かった」

「いいえ、大丈夫です」

「とりあえず皇帝の使いが来る前に片づけておかなければ。少しでも誤魔化そう」


 ロバン公爵が足元に転がっていた本を手に取る。

 するとタイミングを計ったかのように、銀色の鎧を着た男が屋敷に入ってきた。


「お前ら。その場から動くな!」

「ちっ、随分と早いご到着だ。近衛騎士団とやらは暇なのか?」


 苦々しい表情で吐き捨てるロバン公爵。

 この屋敷に着いたタイミングから察するに、私たちを尾行していたようなもの。

 暇なのかと聞きたくなる気持ちも分かる。


「お前は黙っていろ。お前たち、屋敷に傷などがないか調べてこい」

「分かりました」

「もちろん隅までくまなく調べるんだぞ?」


 先頭の男がニヤリと笑う。

 なるほど。

 傷を偽装して報告しようとしているわけか。


 ついてもいなかった傷をつけたうえで、他の者が傷をつけたと報告する。

 当然、レッバロン子爵家は屋敷の管理もできない奴だと噂になるだろう。

 その上で屋敷が皇帝から下賜されたものだと判明してみろ。

 非難の的になること間違いなしだ。


「……だったら」

「はぁ? 何か言ったか?」

「だったら奥の手を使うしかないですね、と言ったんです。穿て、【邪神の加護】」


 夢を叶えるためなら努力は惜しまない。

 この能力を使いこなすために、私がどれだけの痛みに耐えたと思っているんだ。

 私みたいな下級貴族はそれだけの努力を重ねても夢を叶えられるか分からない。


 それなのに。 

 一度も苦労したことのない上級貴族のお坊ちゃんが偉そうにしてんじゃねぇよ。


「全ては私の意のままに。【精神汚染】」

「あぁ……」


 まるで緊張の糸が切れたかのように、近衛騎士の奴らがその場にへたり込んだ。

 これで汚染完了。

 お望み通り、その場から一歩も動くことなく洗脳して差し上げましたわ。


「お、おい……その能力は……」

「ごめんなさい、ロバン公爵。今まで助けていただいてありがとうございました」

「やめろ……来るなあああぁぁ!」


 お偉いさん方に報告されたら捕まっちゃうから、私の夢が叶えられないでしょう。

 だから心が痛むけど、ロバン公爵も洗脳するしかない。


「さて、これで一件落着っと」

「ハル様、私たちは何をしましょう?」

「そうね……まずは屋敷はマルク公爵が荒らしたのだと皇帝に報告なさい」


 ここが一番重要だ。

 むしろ、マルク公爵がやったという報告をしてもらうためだけに洗脳した。


「あとはいつも通りの業務でいいわ」


 今後、こいつらに関わるつもりもない。

 洗脳を疑われないためにも、普通の業務をさせておいた方が都合がいい。

 それにしてもあの皇帝……。


 わざわざ近衛騎士団が来たということは、皇帝が関わっているということだ。

 あの我がまま皇帝が近衛騎士団を他人のために使うわけがない。

 つまり近衛騎士団が関わってきた時点で、皇帝が裏にいることが確定する。


「どんな顔をするのかしら」


 自分が信頼して送り出した家臣にまんまと裏切られたのだ。

 あのクソ皇帝がどんな顔をするのか、見られないのが実に残念だな。


 烈火のごとく怒るのだろうか。

 それとも冷静に処断するのだろうか。


「――まあ、私には関係ないからいいや」


 それよりも他に誰か来る前に、さっさと屋敷を片付けちゃわないと。

 洗脳する人が増えても困る。

 普通の上級魔法の三倍くらいの魔力を使うんだよな、あの技。

 信用できる大工にも壊された部分の修理を頼まなきゃいけないし……ああ、もう!


「あの……私は?」

「は?」


 思わず低い声を出してしまった。

 背後を振り返ると、所在なさげにロバン公爵が立っている。

 完全に忘れていた。


「私は何をすればいいんでしょう?」

「ロバン公爵は早く家にお戻りください。妙な噂を立てられますよ?」


 私との噂なんて洒落にならないですよ、ロバン公爵?


少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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