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『第百四十二話 諸侯会議②(ハル視点)』

 ロバン公爵の資料には、横領を始めとして様々な悪事が書かれていた。

 これを全部マルク公爵がやったと?

 そんな私の疑問を読み取ったかのように、ロバン公爵が冷静に話し始める。


「資料に書かれているのは全部マルク公爵の行動です。証言者も下に」

「第四騎士団長に宮廷魔術師……国の重鎮のオンパレードじゃないか」

「証言者というか、正確には目撃者ですかね?」


 ロバン公爵が苦笑する。

 そんな中、私は目撃者の欄にあるレイム=レッドスという名前を指でなぞった。

 宮廷魔術師を務めている、私の実の父親。


 この人のような魔術の要職に就くのが私の将来の夢である。

 そして、夢を叶えるためには魔法大学に通う必要がある。

 だから爵位を守るため、不本意ながらこうして戦っているというわけだ。


「こ……これは……」


 さすがのマルク公爵も歯切れが悪い。

 嘘だと断じれば、自分より地位の高い人たちが嘘をついているということになる。

 しかし沈黙は肯定と同義。

 冷や汗をかき、視線をあちらこちらに彷徨わせながら唸っていた。


「マルク公爵よ、ここに書かれていることは事実か?」

「あっ、ああ……」

「はっきり言ったらどうなんですか、マルク公爵。随分と往生際の悪いことで」


 勝利を確信したロバン公爵がニヤリと笑う。

 まごうことなき愉悦の笑み。

 派閥争いで長年対立しているから、フラストレーションも溜まっていたのだろう。


 一方で、ロバン公爵の派閥に所属している貴族たちは厳しい視線を向けている。

 こちらは自白を促しているような感じか。

 ロバン公爵に笑われ、ロバン公爵派の貴族たちから責めるような目をされるとか。

 まさに針の筵である。


「じ、事実でございます」


 こうなってしまっては、もはや逃れようもない。

 マルク公爵は罪を全面的に認め、皇帝の目の前にゆっくりと歩み寄った。

 そして土下座をかます。


「申し訳ございませんでした、皇帝陛下。どうかご慈悲をお願いいたします!」

「うーん……」

「皇帝陛下!?」


 この盤面では、さすがの皇帝も判断を迷っているようだ。

 皇帝はうちに法外な通行料を要求しているのを知っていて、加担までしていた。

 ロバン公爵にこの点を追及されたらマズい。


 というのも、ロバン公爵は皇位継承権第二位の座を保持しているのである。

 彼の母親が現皇帝の姉で、前ロバン公爵のもとに降嫁しているからだ。

 最悪の場合は皇帝にふさわしくないと判断され、失脚する可能性がある。

 それも息子ともども。


 失脚を避けたい皇帝は、マルク公爵の処遇を先送りにすることで逃亡を図った。


「しばし待て。沙汰は追って伝える。それまで王都の屋敷で謹慎だ」

「はっ、承知いたしました」


 マルク公爵はそう言って、自分の席に戻る。

 罪を告発したロバン公爵も、皇帝の罪を暴くことなく着席した。


 まあ、いいだろう。

 これ以上の告発は不敬罪に問われる可能性もあるし、何より本当に助かった。

 ロバン公爵にはあとでしっかりとお礼を言っておかなければ。

 そんな風に思っていたんだけど……。


「あの爺!」

「申し訳ございません、レッバロン子爵代理。まさかこのようなことを……」


 ロバン公爵が項垂れる。

 諸侯会議が終わって王都にある私たちの屋敷に帰ると、屋敷が荒らされていた。

 それはもう、メチャクチャに。


 犯人が誰かなんて、そんなの分かり切っている。

 マルク公爵だ。

 正確にはマルク公爵が依頼した破落戸か、護衛の騎士か何かが犯人だろう。


「しかも、この屋敷は二代前の先祖が皇帝から下賜してもらったもの」

「それを管理できなかったとあれば……」


 二人揃って、顔を青ざめさせる。

 どんな手を使ってでもレッバロン子爵家は没落させるという強い意志を感じるな。


「最悪の場合は爵位剥奪ですね」

「しかも、今回の諸侯会議で私たちは皇帝に悪印象をもたれていますからね」


 皇帝からすれば貴重な収入源を絶たれたようなものだ。

 実際は違法なお金なんだけど、あの我がまま皇帝にはそんなものは関係ない。

 自分の利益になるかどうかだけで物事を考える人だ。


 さて、どうするか。

 この状況をどうにかして乗り切らなきゃ、私に未来はない。


少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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