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成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜  作者: 銀雪
第六章 辛いことも、理不尽なことも乗り越えて その三 ハルック・リリー編
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『第百三十一話 戦局を打開せよ』

 作戦開始から一時間二分後。

 副将を務めていたバルバスに部隊を率いてもらって、第四騎士団に合流させる。

 人数で劣っている私たちは、一つの戦場に集中しなければ勝ち目などない。


 ゆえにどちらかの敵を全滅させる必要がある。


 東門側の戦場には門や壁があるからね。

 大通りの突き当たりで待つしかない王都側に比べて、戦う人数は少なくてすむ。

 つまり全滅させるのも楽だということだ。


 戦闘を長引かせば長引かせるほど、こちらが不利になっていくのは目に見えているので、人海戦術で押し切ってしまいたい。


「すみません、遅くなりました」

「悪いわね、シーマ。戻ってきてもらって」

「イリナさんが狙われる方が大変ですからね。指揮もオーランなら大丈夫です」

「分かったわ」


 一人で指揮をするのは不安なので、バルバスと引き換えにシーマを戻している。

 ここで現在の状況を整理しておこう。


 まずはべネック団長の部隊。

 王都側に配置されており、残りの兵数は約五百。

 そのうち、アリアが率いる後衛が二百。

 第四騎士団の半数がここに編成されており、母に操られた第二騎士団と戦闘中。


 ノートン団長の部隊。

 東門側に配置されており、残りの兵数は約二百。

 そのうち、アリアが率いる後衛が百。

 先ほどまでジャックの部隊と戦っていたせいか、やや消耗が激しい。

 帝国の冒険者と戦闘中。


 エルス副団長の部隊。

 遊撃隊として準備しておいた舞台だったが、現在は王都側で戦ってもらっている。

 残りの兵数は約五十で、帝国の冒険者と戦闘中。


 オーランの部隊。

 もともとはシーマが指揮していた遊撃隊で、残りの兵数は約四十。

 路地裏を突破してきたAランクからCランクまでの冒険者で占められている。

 東門側で冒険者たちと戦闘中。


 最後にバルバスの部隊。

 もともとは私が指揮していた遊撃隊で、残りの兵数は約三十五。

 東門側で帝国の冒険者たちと戦闘中。

 

 王都側に約五百五十、東門側に約二百七十五。

 合計すると約八百二十五が私たちヘルシミ王国側の残存兵力だ。

 

 一方、相手の兵力はどうだろう。

 

 まずはレイラが率いる第二騎士団長。

 残りの兵数は約九百だが、今も洗脳が解けた兵士たちが次々と寝返っている。

 前衛が多いからか、防御重視の戦法を取っている私たちを倒せていない。


 王都側の冒険者部隊。

 残りの兵数は約百であり、主に魔法使いや弓隊などの後衛で編成されている。

 第二騎士団は後衛にやや乏しいから、もともと第二騎士団との共闘狙いだろう。


 最後に東門側の冒険者部隊。

 残りの兵数は約三百で、こちら側は剣士や重戦士などの前衛が中心となっている。

 アリアが率いる後衛部隊が確実に葬っているから、こちらも問題はない。


 王都側に約九百、東門側に約三百。

 合計すると約千二百が相手であるリーデン帝国側の残存兵力となる。


 問題はべネック団長の部隊だろう。

 防御重視の戦法を取ることで凌いではいるものの、相手の兵数は依然として多い。

 人数の面から見ても、五百対九百と四百の差がある。

 

 しかし、すでに投入することができる部隊は全て投入しているので、耐えてもらうしかないな。

 


 作戦開始から一時間十分が経過した。

 東門側の戦場ではなおもこちら側が押しており、ついに残存兵力でも逆転した。

 こちらの残りは約二百五十、相手の残りは約百五十。


 相手は前衛が中心で魔法に対抗する手段に乏しく、後衛部隊に倒されている。

 このままのペースでいけば、あと十分ほどで全滅させられるに違いない。


「降伏に応じないかとも思ったんだけど……」

「まさか、あそこまでハンルさんへの忠誠心が強いとは思いませんでした」


 シーマがため息をついた。

 私はリーデン帝国で冒険者だったシーマを使者に送り、降伏を促したのである。

 しかし相手は取りつく島もなかった。


 ハンルが敵視しているヘルシミ王国に下るくらいなら、この場所で死ぬと言い切ったのである。


「それよりも、問題はべネックさんの方でしょう」

「……ちょっと待ってて」


 順調な東門側とは対照的に、王都側の戦場はなおも不利な戦いを強いられていた。

 冒険者のうち、数が少ない前衛が率先して前に出てくるようになったのだ。


 第二騎士団の兵と違い、冒険者は気絶させてもこちら側の兵数が増えない。

 ゆえに殺すしか道はなく、殺そうと前に出たら敵の後衛に撃ち抜かれる。

 もはや八方塞がりの様相を呈していた。


 ここは私が出るしかないと判断し、とある人物を前線から呼び寄せる。


「お前が俺を呼んだのか?」

「ええ。シーマの手伝いをしてあげて。私はこれからべネック団長の救援に行くわ」

「任せとけ。報酬は弾んでくれよ!」


 私が呼んだのはAランク冒険者のマッデン=エスラー。

 素行不良でヘルシミ王国に左遷された男だが、報酬を増額すれば問題なし。

 マッデンに副将を依頼して、私は単身で前線に向かう。

 

 べネック団長を襲おうとしている冒険者を袈裟斬りにして、横に蹴りとばした。


「大丈夫ですか、べネック団長!?」

「イリナか。あまり大丈夫ではないな。なにせ次から次へと敵が襲い掛かってくる」

「後衛の冒険者たちが厄介ですね」


 こちらの後衛は第二騎士団の後衛を抑えるので精一杯で、手が回らない。

 だけど、もうすぐのはずなのだ。

 不意をつけるのはリーデン帝国だけではないということを、相手に教えてやる。


「グリード式剣術の壱、【琥珀の舞】」


 近くにいたBランク冒険者三人を土属性の剣で斬り、Cランク冒険者を斬る。

 Cランク冒険者を盾にしていたAランク冒険者も首を刎ねる。

 剣についた血を振り落とし、背後から飛んでくる魔法を地面で転がって避ける。

 立ち上がる勢いを利用して別のBランク冒険者も縦に斬った。


「イリナ、向こうから別の部隊が近づいてくるぞ!」

「おいおい、また別の敵かよ!」

「もう勘弁してくれよ!」


 べネック団長の言葉を皮ぎりに、部隊のいたるところからブーイングが上がる。

 作戦開始から一時間二十二分後。

 こちらに近づいてきた部隊は第二騎士団の中心部を突破し、私のもとまで来た。


「お待たせ、遅くなって悪かったわね」

「いえいえ、厳しかったので助かります。ありがとうございます、ヒナタさん」


 先ほど、私が通信を繋げたのはヒナタさん。

 アリアの実の姉であり、リーデン帝国の第三騎士団長だった女騎士の大先輩だ。


「数が必要だって話だから、とりあえず僧兵を四百連れてきたわ」

「十分です! ありがとうございます!」


 べネック団長の部隊とエルス副団長の部隊を合わせた兵数が、約四百七十。

 ヒナタさんの部隊四百を合わせると、約八百七十になる。

 相手の兵数が残り八百くらいだから、ようやく同数かややこちらが上回ったくらいになった。


「さあ、私の大切な妹たちを殺そうとした不届き者を成敗するわよ!」


 そう言ったヒナタさんは、とても頼もしかった。


少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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