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成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜  作者: 銀雪
第六章 辛いことも、理不尽なことも乗り越えて その二 ハンル・皇帝編
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『第百十一話 囚われの二人』

第六章、その二がスタートです!

 湿った空気が肌を撫でる。

 シーツも敷かれていない硬いベッドと、小さな窓しかない小部屋に俺たちはいた。

 つまり俺たちは幽閉されているのだ。


「わずかな時間だったが、収穫もあった。まずハンルは相当な強さで呪われている」

「あれはすごかったねー」


 ダイマスが苦笑する。

 呪われているというより、操られているといった方が正しいかもしれないが。


「それに加えてマルティークと皇帝もいる。正面突破で倒すのは不可能だ」

「ティッセの父親を忘れていないかい?」

「げっ、そうだった。ジジイを含めて四人+怪物か。倒すなんて不可能じゃ……」


 ハンル、マルティーク、皇帝の前衛タイプ三人を同時に相手するだけでも厳しい。

 中衛タイプの怪物に、後衛タイプのジジイまで加わったら勝ち目がないぞ。


「怪物とティッセ父をどう抑えるかだろうね」

「どう抑えるも何も……この国の全冒険者を集めても勝てるかどうかってレベルだ」


 そもそも俺たち二人がかりでも大きくハンルに劣っている。

 国の全冒険者を集めても、ようやくマルティークがギリギリ抑えられるかどうか。

 そのマルティークでもハンルには絶対に勝てない。


「おまけにそこら中を第二騎士団の連中がうろうろしている以上、脱獄も難しい」

「俺たち、詰んでないか?」


 逆転の一手が全く見えない。


 ハンルの能力【魔法無効】は、純粋な魔法だけでなく魔剣も無力化してしまうし。

 マルティークの能力【気配消去】を使われたら、集中しないと気配を探れないし。

 皇帝の能力である【威圧】は、俺たちの動きを一瞬だけだが硬直させる。


 相手の方が人数で勝っている場合、一瞬の隙がそのまま死に直結しかねない。

 よくもまあ、厄介な能力を持っている三人が集まったものだ。


「だけど……弱点がないとも思えない」

「同感だね。例えば【支配者の分析】は使っているとき、目が光るのが弱点だ」

 

 相手にバレてしまうからな。

 ちなみに【気配察知】は、相手が格上だとわずかな違和感を与えてしまう。

 このように、どの能力にも強いところと弱いところがあるはずだ。

 

 ――じゃあ、あの三人の能力の弱点は?


「深く考えるのもいいが、一応は処刑を待つ身だということも頭に入れておこうぜ」

「……そうだね」

「タイムリミットはあと三日。それまでにハンルのおっさんを正気に戻さないと」

 

 俺はまだ死にたくない。

 それに、レイラと一度は会話をしないといけないだろうからな。


「お前たちは何をごちゃごちゃと喋っているんだ」

「えっ?」


 通路に目を向けると、見るからに仕立てのいい服を着た一人の男が立っていた。

 ヘルシミ王国の第一王子であるミックザムだ。


「あの化け物にたった二人で挑むなど馬鹿なのか? 弟も倒せなかったというのに」

「弟って……あの【神の加護】を持った?」

「そうだ。ハンルとかいう奴に無抵抗でやられた。魔法が効かないなどありえん」


 ミックザムが顔を歪める。

 ハンルは、あの能力があったからこそ無茶な攻めが出来るといってもいい。

 だから能力を使えないようにすれば対処のしようはあるのだが、諸刃の剣だ。


 能力に頼っているのはこちらとて同様だし、むしろ能力なしの方がSSランク冒険者としての戦闘力、経験、勘をフルで使われてしまう。


「どうしてミックザムはここに?」

「王城には奴らが知らない隠し部屋がたくさんある。そこで対策会議を開くんだよ」

「なるほど。三つほど懸念点がある。まず第一に、俺たちはここから出られない」


 どこに隠し通路があるかなんて知らないし。

 それにダイマスはともかく、王族でもない俺が隠し通路を知るのはマズいのでは?


「第二に、見つからないという保証はどこにあるのかな」

「敵に見つかり、ドアが一つしかないなんてことになったら今度こそ詰みだぞ」


 これが第三の懸念点だ。


 見つけたのが単なる一兵卒なら戦いようはあるが、ハンルだったら突破は不可能。

 大人しく処刑を待つより他はない。

 もしくはその場で斬り殺されるかのどちらかだろうな。


「大丈夫だ。他国の人間は入れないように特殊な術式を組んでいる」

「どういう基準なんだ? 他国の人間が入れないなら俺たちも入れないじゃないか」


 もともとリーデン帝国の国民だし。

 今は騎士簿という騎士の名前が書かれた名簿に載っている、ヘルシミ王国民だが。


「心配いらない。脱出口を教えよう」

「分かった。どこにあるんだ?」


 どうやら術式については教えたくないらしい。

 まあ、俺も王族の秘密を知ってしまって、口封じのために処刑とかごめんだ。

 世の中には知らなくていいこともある。


「窓に鉄格子がはまっているだろ。その中で一番右にある鉄格子を三回右に回せ」

「ちょっと待ってて。よし、回したよ」


 窓の近くに立っていたダイマスが回したが、特に何かが起こった様子はない。

 先ほどまでと変わらない牢獄の光景だ。


「次に、一番左を同じく三回右に回したあと、右から三番目を七回左に回す」

「随分と面倒だな」

「悪用されないようにな。何も知らずにいじって、空いちゃったでは話にならない」

「確かに」


 そんなことになってしまえば脱獄し放題で、牢獄がある意味がない。

 ダイマスが全ての作業を終えると、無機質な壁が動き出して、通路が姿を現した。


「奴ら、王族用の檻にお前たちを入れていたのが幸いした」

「ここ、王族用だったんですね」

「だから二人一緒に入れたんだ。普通の牢獄は一人でも狭いと感じるくらいだぞ」


 ミックザムが呆れたようにため息をつく。

 俺たちは無言で肩をすくめると、現れた隠し通路をゆっくりと覗き込んだ。


 牢獄と同じように石造りになっており、ダンジョンの通路を思い出させる。

 意外にも天井が高く、魔道具だろうランプが通路を明るく照らしていた。


「先に行く。曲がり角は全て右に進み、三回目の角を曲がったら僕の名を呼べ」

「分かった。よろしく頼む」


 俺たちが頭を下げると、ミックザムは頬を赤く染め上げて無言で去っていった。

 意外と照れ屋なのか?


「頼られたのが嬉しかったんだろう。弟は【神の加護】持ちだしね……」

「ああ、分かる気がする」


 ハンルの部下になってからはそういう声も聞かなくなったが、俺もよく陰口を叩かれていた。


 原因は妹のハルがレア能力を取ったこと。

 陰口を叩いてた奴らも詳細は知らなかったが、レア能力だとは分かっていた。

 そういえば、能力は最後まで教えてもらえなかったな。


『今はリーデン帝国に行くことも難しいんだよな』なんて思っていたら戦争状態だ。

 想像もしていなかったよ。………だなんて。


「早く行こうぜ。ミックザムたちを待たせるのもマズい」

「そうだね」


 俺たちは通路に足を踏みいれ、曲がり角を右に曲がること三回。

 角を曲がった俺たちの目の前にミックザムがいて、悲鳴を上げそうになった。


「待っていたよ。さあ、入って」

「「失礼します」」


 ミックザムが示した部屋に入ると、ソファーが二つ向かい合わせに置かれている。

 そしてソファーには四人の人物が座っていた。

少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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