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成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜  作者: 銀雪
第六章 辛いことも、理不尽なことも乗り越えて その一 シーマ編
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『第百六話 戦闘の準備を……させてくれよ!』

 風魔法による演説の拡散が終了した直後から、そこらで人探しが行われていた。

 ターゲットは俺とダイマス。

 リーデン帝国の権力者によって、王都を救うための人質に指名されたからな。


「敵は何が目的なんだ?」

「まったく見当がつかないわね。処刑するにしても、私が呼ばれないのは変だし」


 ヒナタは、本来ならば機密情報保護のために始末されるはずだった。

 もしも犯罪者を処刑してしまうつもりならば、彼女を呼ばないのは確かに妙だ。


「くそっ……ティッセって誰だよ!?」

「ダイマスって奴も見つからないし……。早く見つけないと王都がなくなる!」


 装備を見るに中堅冒険者か。

 こっちに来てから日が浅く、魔物専門の隊だから民と触れ合う機会も少なかった。

 だから、相手はこちらの顔を知らないのだろう。


 捜索隊は未だに有力な手掛かりも見つけられないまま、王都中を歩き回っている。


「厄介なことをしてくれたわね。とりあえず作戦会……」

「すまない。お前たちはティッセとダイマスって奴らを知っているか?」


 白い鎧を着た男が質問を投げかけながら、こちらに近づいてくる。

 言葉を遮られたアリアが絶対零度の視線を向けた。


「そんな人は知らないわ。こっちだって忙しいんだから、どっかに行ってください」

「な、何だよその態度は! 使者を見つけないと王都が滅びるんだぞ?」

「そんなの分かっているわ。こっちも最悪な結末を迎えないように動くつもりよ」

 

 どこか決意を込めた声だった。

 アリアは金色のツインテールを揺らしながらこちらを振り返り、べネック団長を見つめる。


「私たちは何をしたらいいですか?」

「まずは王都の状況を把握しておこう。私たちは帰ってきたばかりだからな」

「なるほど。簡単に伝えますね」


 小さく頷いた男――ガルは王都の冒険者ギルドに所属するAランク冒険者だ。

 ガルによると、現在の王都は混乱状態にあるらしい。


「第一騎士団長は王命で国を離れていますし、第二騎士団長は敵に操られています」

「レイア=マレクス殿だな」

「その通りです。暴走したレイア殿によって第三騎士団と近衛騎士団が壊滅」

「んっ……?」


 べネック団長が戸惑ったような声を上げた。

 第三騎士団は壊滅したどころか、あなたの目の前にいるんですけど。


 指摘しても余計に面倒なことになると感じたのか、べネック団長もあえてスルーして話を続ける。


「だから、今も東門を死守している第四騎士団が王都にいる唯一の騎士団なんです」

「ノートン団長は無事なのか」

「相手の将がジャック殿ですからね……。士気的にも厳しいんじゃないですか?」

 

 ジャックの名が出たところで、ダイマスが眉をひそめた。

 帝国の第二騎士団の団長であるジャックは、一方的にダイマスを敵視している。

 ところが直接対決の結果は十六戦で一勝も出来ていない。


 そんな状況下でもジャックは諦めずに「次こそは勝てる!」といって突撃してくるのだから、改めて考えてみても、厄介なことこの上ないな。


「分かった。それで王都の状況は?」

「西門がリリー殿に。北門がレイラ殿に。南門がハルック殿に破られました」

「全ての騎士団が揃い踏みか」

「ハルック殿は王城攻略に。リリー殿はレイア騎士団長とともに王都へ向かった」


 王都を掌握する段階で、王都を巡回していた近衛騎士団と激突したのだろう。

 ヴィル国王ならば戦闘技術の高い近衛騎士団を、躊躇なく民のために使うはずだ。


「レイラ殿は消息不明です」

「よく教えてくれた。ティッセとダイマスとやらが早く見つかるといいな」

「そうですね。――もう見つけましたけど」


 ガルが剣を抜いてべネック団長に突きつけたが、そこは百戦錬磨のべネック団長。

 素早く反応して鍔迫り合いに持ち込んだ。


「何のつもりだ」

「それはこちらのセリフです。Aランク冒険者たる僕にティッセが分からないと?」

「ちっ……」


 また俺のせいかよ!

 リーデン帝国を逃げるときも、この目立つ赤髪でどれだけ大変な思いをしたか。

 この国に来て、ようやく自分の髪を気にしなくて済むようになったのにっ!


「バレちまったからには仕方がねぇ。先輩たる俺が苦しまないように逝かせてやる」

「落ち着いてくださいよ。なにも密告しようとはしていません」

「だったら、どうするつもりなんだよ!? お前は団長に剣まで向けたんだぞ!」


 怒りが抑えられない。

 

 近衛騎士団と模擬戦をしていて、ルイザにイリナの骨が砕かれたとき以来か。

 こうやって暴走するのは。

 あの時はアリアが魔法で止めてくれたんだったか。


「仕方がないじゃないか! ああでもしなければ君たちは逃げた! 違うか!?」

「そりゃ逃げるだろうよ! 敵地に事前準備なしで乗り込ませるつもりか!?」


 少なくとも、俺たちを血眼になって探している奴らに見つかればそうなる。

 事前に何の準備も、連携の確認もしないで戦いに向かう馬鹿がどこにいるんだ。

 せめて準備くらいさせてくれよ。


「だから違うと言っている。王都の冒険者ギルドに連れていくつもりだったんだ」

「お前は馬鹿か? 俺は冒険者ギルドを追放されているんだぞ」

「その心配は無用だ。ヘルシミ王国のギルドマスターは今回の処分に懐疑的なんだ」


 頭の中を疑問が埋め尽くす。

 

 基本的に各国のギルドは繋がっていて、除籍処分になると他国でも登録できない。

 つまり、除籍処分は最低でも三国のギルドが賛成してくれなければ成立しない。

 そうでなければ冒険者側に圧倒的に不利だからだ。

 

 賛成国はリーデン帝国、ヘルシミ王国、イルマス教国の三国だと思っていたんだけど、今の話を聞くと違うのか?


「ヘルシミ王国のギルマスは恐ろしく厳しいんじゃないのか?」

「確かに厳しいですが、証拠を何よりも重視します。フルフス王国の方が怖いです」

「ジュリアさんの祖国か」


 ダイマスが懐かしい名前を口に出す。

 ジュリアさんは、アマ村の事件の時に助太刀してくれたフルフス王国の騎士団長。

 今は教皇となったローザンと初めて会ったとき、彼女の変装をしていたな。


「それで? 俺たちを冒険者ギルドに連れて行ってどうする」

「回復ポーションやアイテムを融通しようと思っていたんですよ」

「…………」


 これだけ大規模な戦いだから、負傷者もたくさん出ているだろう。

 そうすると回復ポーションの需要が増えるから、値段が倍以上に跳ね上がる。

 融通してもらえるならそれに越したことはないが。


「お前の言葉が罠でない可能性がどこにある。俺は人を簡単に信じない主義なんだ」

「へぇ……随分と慎重になりましたね。あんなに人を信じていたティッセさんが」

「何か言ったか?」

「特になにも。しかし困りましたね。回復ポーションも切れてしまってますし……」


 ガルがポケットを探る。

 その隙をついて、俺は【支配者の分析】を使っているダイマスに話しかけた。


「何か分かったか?」

「恐ろしいことが分かったよ。僕たちはまんまと手のひらの上で踊らされていた」

「どういう……」


 その先は言葉にならなかった。

 ガルの後ろから、ぞろぞろと見知った人たちが歩いてきたからである。


「久しぶりだな」


 その集団の最前列にいる男。

 筋骨隆々の体に、【鷹の目】というスキルを兼ね備えたAランク冒険者。

 オーラン=ブラスがニヤリと笑った。

少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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