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『第十話 市街地での戦い』

2020.12.30 加筆しました

「おいティッセ、私の指示も聞かずに……ああ、もう!」

「べネック団長、ホルダームさんは通行人に任せましょう。まずはあっちです」

「それもそうだな……皆さん、すみませんがこの人をよろしくお願いします!」


 ホルダームの容態を見ていたべネック団長が、ダイマスの提案で声を張り上げる。

 すぐに四人の男性がホルダームを運び始めたので、無事に教会に運ばれるだろう。

 これで彼を巻き込む心配はなくなったな。


「おやおや……まあ、彼はどうでもいい。 それよりもあなたたちです」

「間違いなく皇帝の指示だよね。ハルック=モーズ第一騎士団長?」


 ホルダームを心配そうに一瞥しながら、ダイマスが尋ねる。

 ハルックは無言を貫いたが、それは何よりも雄弁に肯定の意を示してしまっていた。


「やっぱりね。しかし厄介だな。べネック団長の指示を……」

「魔剣生成、魔剣・一の型【円火(えんか)】」


 俺はダイマスの言葉を待つことなく、火の精霊を剣に宿らせて魔剣を作る。

 円火は、対多数の戦闘に向いている剣であり、円のように炎の波を起こすことが出来る剣だ。

 剣の切っ先を向けられたハルックが、珍しいものを見るかのように目を細めた。


「ほう、君が噂の魔剣士ですか。面白い。私も全力で相手いたしましょう」

「ありがとよっ!」


 ハルックが体制を整える前に、急いで距離を詰める。

 どれだけ油断していても、魔剣があっても、相手は一つの騎士団を統べる男だ。

 時間をかければかけるほど、こちらが不利になる。


 普通なら燃えるはずのない刃が、精霊が起こした炎で真っ赤に波打つ。

 俺は駆けだした勢いのまま、間合いに入ると同時に剣を横に一閃。


 何かを斬った感触が手に伝わってくる。


「イリナ、ダイマス、魔法だ! 魔法で援護してくれ!」

「分かった。精霊よ、僕の求めに応じて氷を突き刺せ、【アイス・カッター】」

「精霊よ、私の求めに応じて敵を吹き飛ばせ、【サイクロン・ミニ】!」


 俺が後退するのと同時に、イリナとダイマスの魔法が突き刺さる。

 斬った感触は恐らくフェイク、あるいは鎧を傷つけただけに過ぎないだろう。

 第一騎士団長が……そんなに簡単にやられるはずがない。


「水遁式剣術の弐、【激流斬】!」


 俺の予想通り、ハルックは剣でイリナとダイマスの魔法を相殺した。

 ――二人分の魔法を、剣を一回振っただけで。

 普通ならありえないが、ハルックの能力があれば可能だということか?


 しかも、あれは剣技というもので、それぞれの属性の魔力を込めた剣だ。

 精霊を剣に宿らせたものを“魔剣”と呼ぶのに対し、あれは“属性剣”と呼ぶ。

 能力は魔剣に劣るものの、それぞれの属性が色濃く反映される。


「私の能力を見くびってもらっては困る。さあ、今度はお前たちの出番だ」

「おい、行くぞ!」

「ああ、我らは要らないと思うが……とりあえず団長をお助けしろ!」


 ハルックが意地の悪い笑みを浮かべると、後ろに控えていた騎士たちが動く。

 彼らも第一騎士団所属の騎士だろうから、相当なエリートだ。

 何かしらの強力な能力を有しているとみて、間違いないだろう。


「精霊よ、私の求めに応じて闇の矢を降らせよ、【ダーク・アロ―・レイン】」

「無駄だ。我が隊には聞かぬ」

「――っ! べネック団長、闇の矢が何かに弾かれています!」


 べネック団長が闇の矢を騎士たちに撃ちこむが……何かに弾かれている。

 あれは【天空防御】!?

 空からの攻撃を防ぐことができ、かなりのレア能力だと言われているのだ。


「くっ……あれでは攻撃がほぼ通らないではないか!」

「マズいですね。誰が能力持ちか分かりませんよ」


 一般的には、能力を使っている者が意識を失うと、能力の効果も停止する。

 だから【天空防御】の持ち主を倒せばいいのだが、それが分からない。

 こうしている間にも、俺たちと騎士たちの距離はどんどんと縮まっていた。


「こっちに近づくな。精霊よ、僕の求めに応じて壁を作れ、【ランドウォール】」

「無駄だ。火炎式剣術の壱、【火炎斬】」


 ダイマスが時間稼ぎで土の壁を出したが、すぐに火の剣技で破られてしまう。

 もはや魔法での迎撃は困難。

 今まで杖を持っていたイリナとダイマスが、腰から剣を抜いた。


「土石流剣術の壱、【土埃の舞】」

「風流剣術の壱、【つむじ風】」


 ダイマスが一人目を袈裟斬りで撃破し、そのままの勢いで二人目を撃破する。

 斬りつけられるたびに土埃が舞うから、敵はさぞかし大変だろう。


 一方のイリナは風の剣技であることを利用し、襲い掛かってくる人数を調整。

 確実に撃破していく。


 そのまま十分ほど戦闘を続けるが、お互いに決め手がなく、かなり焦っていた。

 相手は人数で押そうと試みるも、こちらの剣技を攻めあぐねている。

 こちらも人数差があるため、下手に突っ込むと自殺行為になりかねない。

 結果、泥沼の消耗戦になり果てていた。


「お前ら、そこで何をしているのだ!」


 そんな泥沼の戦いを中断させたのは、一人の男性の声だった。

 馬に乗っている男は市街地で行われている戦いを見るや否や、鋭い声を上げる。

 そしてハルックを視界に入れた。


「お主は第一騎士団長のハルックだな? なぜ市街地で戦っておる」

「はっ、皇帝陛下の指示で罪人を連行しにきたのですが、抵抗されまして」


 確かに嘘は言っていない。

 しかし、ハルックの言葉は俺たちに悪印象を持つきっかけになったようだ。

 男がこちらを睨みつけてくる。


「罪人だと? Sランク冒険者に宰相殿じゃないか。お前たちが抵抗を?」

「お久しぶりです。エーキンス王弟殿下」


 ダイマスがその場に跪く。

 俺、イリナ、べネック団長が目を大きく見開き、全員が素早く跪いた。

 あれ、デールさんはどこ行った?


少しでも面白いと思ってくださったら。

また、連載頑張れ!と思ってくださったら、ぜひ感想や評価をお願いします!

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