九話 逃走につき
木々が生え並ぶ森は足場が悪く、走るのに適しているとは言えない。
そんな森の中を野生の動物や他の魔物の存在を気にする余裕などなく、ブレイクはジャクリ、ジャクリと柔らかな土を踏み鳴らして疾駆する。
その度に足元から伝わる振動はブレイクの傷口を開き、地面に赤い染み点々と残していた。
体力の損耗は激しく、ブレイクは短い呼吸を幾度となく繰り返しながらもウッドファングから離れるべく、鉛のように重たい足を動かした。
「はぁ……はぁ……もう、足が……」
額から汗を垂らし、震える足に手を突く。
逃げ続けても傷口は更に開き、死ぬ可能性は上がる。しかし、足を動かし続けなければ明確な死がやってくる。ブレイクは呼吸を整えると腰に吊るしていた太陽草を口に含んだ。
「うげ……」
「何してるの?」
「太陽草を齧ってるんだ」
「……太陽草ってヒールポーションの原材料だけれど、そのままじゃ効果なんて少ししかないんじゃないの?」
「その少しが俺達の命を繋ぎ止めてるんよだ。要は気持ちってことだ」
「気持ちで死なないなら、訳ないわね」
「現に生きてるだろ? 死に掛けだけどな」
そう言って、ブレイクはひょろりと根が食み出た口の端を歪めた。
複雑な作業工程を経て精製されるヒールポーションとメンタルポーションの原材料となる太陽草と月光花をなんの手も加えられていない状態で齧っても回復効果は見込めない。しかし、口内に広がる強烈なエグ味は血液不足で朦朧とする意識を辛うじて繋ぎ止め、僅かばかりの回復効果がブレイクの命を保っていた。
呼吸を整えていると、突然ガクガクとブレイクの体が揺さぶられた。
「遠吠えが止んだ、追ってくる!」
黒ローブが焦った声で出血によるものとは違う死の気配を喚きたてる。
魔物と冒険者は日々喰うか喰われるかのしのぎを削り合う関係である。その相手が手負いともなればウッドファングがブレイク達を見逃すはずがない。
多少距離を取ったブレイク達だが、手負いの二人の移動速度と森を自在に走破するウッドファングでは地力が違う。ウッドファングはすぐにでも傷口から滴り落ちた血の臭いを辿って二人を追い立て始めるのは明白だった。
「ちくしょう、早すぎるだろ! もっと吠えてろよ!」
ブレイクは止めていた足を再び動かし、悪態を吐く。
優れた身体能力を持ち、更には地の利と数の面でも勝るウッドファングが少しばかりブレイク達を見失ったとて、追跡を始めればすぐに追いついてくる。それが分かっているからこそ、ブレイクの溜息は尽きない。
「まったく、勘弁して欲しいぜ……」
動くことを止めて太陽草で一時的に治まった出血も、ブレイクが動き出すとぶしゅりと噴き出した。
延命措置も長くはもたない。
それは黒ローブも理解していたのか、汚れる事も厭わずに少しでも溢れる血を止めようとブレイクの背に体を密着させた。
(や、柔らかい……!)
死神がすぐそこで鎌首を擡げる中、慎ましやかではあるが、ふにゅりと背中越しに伝わる柔らかな感触は夢がしっかりと詰まっている事を如実に語っていた。
危機的状況であうろが、些細な幸運を見逃さないのも年の功が成せる業だろう。
良い歳をしていてもブレイクは男なのである。
死神が迫る中、邪な考えに支配されかけたブレイクの耳元で黒ローブが囁く。
「リルーシュよ」
「あ? なんだよ、いきなり?」
「私の名前。助けた相手の名前も知らないのなんて、嫌じゃない? あなたの名前も教えてよ」
「……」
ブレイクは突然何を言い出すのかと眉を寄せる。
冒険者は基本的に実力至上であり、武勇を重んじる傾向が強い。そこに謙遜など存在しなく、名と顔を売る機会があれば我ここに在りと大々的に存在を証明するのだ。
しかし、それは戦う事の出来る人間の特権である。力無き者が勇を騙ればそれは愚行でしかなく、人はそれを蛮勇と呼ぶ。
当然ブレイクは力無き者である為、自らを宣伝しようとは考えていない。寧ろ、せせこましく隅で生きるのが正しいとすら思っている。
それでも王都ではその奇行故に良くも悪くも名と顔を知られてしまっているのがブレイクと言う男なのである。
(犯罪者でもないのに名前を隠す必要性もないが、俺を知らないって事は王都の人間で無いのは確かだ。それに、相手の手の内を探らずに自分から名乗っちゃってる辺り、多分冒険者になってかなり日が浅いのか……? だとすればよく知りもしない奴等とパーティーを組んだはいいが、魔物に襲われて見捨てられたって所か。たまにそんな事があると聞いた事はあるが……まさか自分が遭遇するとはな。まったく、誰だよ。成り立てを講習も受けさせずに送り出した奴は……)
パーティーは魔物と戦う以上に野営したりと生活を共にする必要がでる。それはつまり、良く知らない相手と組むのは自殺行為に近いと言う事である。
ブレイクは持っていない人間だからこそ、起こり得る危険性を十分に理解しており、よくそんな危険な真似をしたものだと驚いた。
本来であればギルドの監修で行われている新人講習を受ければ危機管理に対する心得などを教えてもらえるので、このような事態が起きるのは稀なのだが、様々な要因が重なり合った結果の末にリルーシュが今に至ったのかをブレイクは知る由もなかった。
ブレイクが疑ってかかっている間もリルーシュは無邪気にブレイクの名前を聞き続ける。
「ダメなの?」
(って、負傷して辛うじて生きている状況なのに警戒してどうする。どうせこいつとは一蓮托生。怪我をしていると言うのは嘘で、隙を見て俺を囮にする算段でもしていない限り不利な動きはしないだろう。それに王都に戻ればそのうち知るんだから、遅いか早いかの問題でしかない……か)
その無邪気に過ぎるしつこさに毒気を抜かれたブレイクは深く息を吐いた。
ただ、そんな無防備にも思えるリルーシュに冒険者としての心構えを説教したくなるのは年を重ねた人間の性である。
「お前さんねぇ……。少し聞くが、冒険者になったのはいつだ?」
「え? 昨日よ? 昨日王都に来たばかりなの。それと、お前さんじゃなくてリルーシュ!」
――やっぱりか。
ブレイクは手を頭に添えると肩を落とした。
「はいはい、リルーシュさんね。そんな事はどうでもいいんだが、何が自分を殺す凶器になるかわからないのが冒険者の世界だ。簡単に情報を教えるべきじゃない。これは先輩冒険者であるブレイクさんからのありがたい助言だ。胸に刻め」
「ブレイクって言うのね。ありがと、ブレイクさん。生きて帰れたらしっかりと覚えておくわね」
「是非、そうしてくれ。ところでちょいと聞くが、俺じゃあウッドファングの気配はないように思えるんだが、リルーシュさんにはわかってるんだよな?」
「えぇ、かなりの速さで追って来てるわ」
罠や魔物の知識はそれなりに自信を持っているが、能力自体は人並みでしかない。
ブレイクの耳にはウッドファングの遠吠えが止んだ事しかわからなかったが、リルーシュは確信めいた声で追ってきていると断言した。
「そうか……」
ブレイクはよろめきつつも木を支えにして動かしていた足を止めた。
大量の出血と人を背負っての移動で、体力は底を突き、目は霞み始めている。よくここまでもった方だとブレイクは自分を褒めたい衝動にすら駆られていた。
「悪いんだが、もう逃げるのは無理だ。わかるだろ? 最悪過ぎて、笑いが出るぜ」
「そうね……。本当に、笑っちゃう」
リルーシュも限界を感じていたのか、意を唱える事無く同意した。
地の利、小回り、走力、どれもがウッドファングに味方をしている状況は最悪の一言に尽きた。そして同時に、逃げ切れないのならばやることは一つしかない事は冒険者に成り立てのリルーシュも理解していた。
ブレイクとリルーシュは笑う。ウッドファングを威嚇した狂気的な笑いではない。冒険者としての性とも言うべき危機的状況に対する興奮が入り混じった、闘争の笑いだ。
「俺は黙って食われるつもりはない」
ブレイクは諦めが悪い男である。
出来ないならば出来ないなりの意地を見せ、生に噛み付く。
生きるとは、呼吸をしているだけではない。心が求めるままに、自分を生かした先にこそ、生の喜びを得るのである。
そも、才能が……力が無くとも三十歳を越えて冒険者にしがみ付いている男が、諦めが悪いはずはなかった。自分の矜持に反しない範囲でどんなモノでも使い、生き残る。そうやってブレイクは冒険者を続けてきたのだ。
「リルーシュさんよ」
「何?」
「死にたくないよな?」
「当然じゃない。私は……こんなところで死んでる場合じゃないの」
「上等。俺が死ぬ時はお前も一緒だな。ははは」
「あはは……笑えない冗談ね」
努めて明るく振舞ったつもりだったが、リルーシュはすっぱりと切って捨てた。
「冗談はさて置き、お前さんは魔術師なんだろう?」
「えっ?! なんでわかったの?」
ある種の隠れ蓑として裏をかく目的でこの装いをしているなら目論見は成功しているし、如何にもな格好を好む魔術師が居ないわけではない。だが、大抵は機動性を重視した格好の者が殆どと言っていい。
全身をスッポリと隠すローブを纏い、身の丈ほどの大きな杖を握っているリルーシュを一見で魔術師だと思わない者が居たならそちらの方が驚きだ。
「いや、なんでって……わからない方がおかしいだろ」
「うっ……」
「いや、そんな事はどうでもいいんだ。戦えるのか? それとも戦えないのか?」
選択とも言えないようなものであるが、脅しにも近い言葉で選択を迫る。
本当ならば自分の命を知らない人間に預けたくはない。しかし、そうしなければならない理由がブレイクにはあった。
物理的な攻撃方法として『選択の迷宮』は全くの無力である。
リルーシュの元に駆けつけたときも『選択の迷宮』が再発動したのは運が良かったとしか言えない。再び土壇場で発動するかもわからないスキルに頼るよりは、別の力に縋ったほうが余程可能性はある。
これが近接戦闘を主体とする者であればまた話は違ったのだろうが、遠距離から攻撃できる魔術であればブレイクが逃げに徹し、リルーシュに攻撃を担ってもらうことが出来れば可能性はあると踏んだのであった。
なのに、要となる当のリルーシュはブレイクの背で何かを悩むように唸っていた。
このような調子では魔術はおろか、戦力としても頼りに出来るものではない。
自分の事を話さないのに、相手の事を聞くのはあまり気の進む事ではなかったが、このままでは共倒れになるとブレイクは口を開いた。
「見たところ、精神疲労で魔術が使えない状態なわけでもないようだが、何を迷う? 戦えないなら死ぬだけだぞ」
「うぅぅー! わかったわよ、戦う、戦えばいいんでしょ?! やってやるわよ!」
多少破れかぶれ感の強い返答ではあったが、少しだけ見えた希望の光にブレイクは薄く唇を歪めた。
残る問題は振れ幅の大きい魔術系のスキルについてである。
熟達した魔術師の使う魔術はスキルを得たばかりの者が使える下級魔術であっても高い威力を持つ。その理由は、使うことで自身の精神が育つだとか、魔力の運用が効率化される為だとか色々言われているのだが、これもまたスキルの謎の一つである。
一般論では、余程の理由がない限り若さとはスキルの未熟さと同一であるため、リルーシュの魔術も期待するのは厳しい。
だが、不思議と心配はしていなかった。
ブレイクが駆けつけたときに見たものが確かなら、あれほどの奔流を放つことの出来るリルーシュが未熟だとは到底思えなかったからである。
ブレイクはリルーシュがおのぼりさんなのも見越して、スキルを聞くことが暗黙の了解でマナー違反となっていることを言わずに問いかけた。
「で、お前さんのスキルは?」
「水魔術B……」
「そりゃ凄い」
水魔術は飲み水からちょっとした回復魔術を兼ねる汎用性の高い魔術だ。攻撃力に関しては四つの属性魔術の中で最も低いが、出来ることの多さで補える。
そして何より、熟練度がBと言うのは王に仕える宮廷魔術師並の能力である。
ブレイクは直に高位の魔術を見たことがないため、どこまでの事が出来るのかはわからなかったが冒険者稼業の中で聞いてきた話から察するに、相当な力を持っていることだけは想像に難くなかった。
▽
ブレイクは依頼品を入れた箱を運ぶために持ってきていたロープで二人の体を縛り付けるようリルーシュに指示を出していた。
「違う、そうじゃない! ここを、こうして……」
「え? こ、こう?」
「違う違う! もっと芸術性を追求しろ。動けば動くほど俺達を締め上げるように計算するんだ。ただ結めばいいわけじゃない!」
「えぇ……?」
かくして、ブレイクの厳しい指導によって編み上げられたロープは綺麗な六角形を作り、まるで亀の甲羅の模様を呈した一種の芸術となった。
ブレイクはゆさゆさと体を揺さぶり動きを見る。
すると、リルーシュが上擦った声を出した。
「んんっ! ちょっと! く、食い込んでるっ!」
「安心しろ。食い込んでるのはお前さんだけじゃない」
「一緒にしないでよ、馬鹿!」
「なんなんだ……一体?」
背負っているブレイクからは見えないが、動くほど強く縛られていくように編まれたロープは二人の股下に通された部分を更に強く締め上げていた。股下や尻に回されたロープがガッチリと食い込み薄い肉を食み出させる。
それはブレイクも同様であるのだが、長い節約生活の果てに作られた体はガッチリとした筋肉質であるためリルーシュのように余った肉が食み出たりはしない。そのため、何を言っているのか理解に困ると首を傾げていた。
「ったく、忙しいんだからよ」
勘弁してくれ、とぼやいたブレイクはロープの調子を確かめ終わると頷いた。
ロープがギチリと二人を繋いだ姿はさながら、母親が子を背負っているようである。
遠目に見れば微笑ましい姿に見えても実際、喋っている内容はそれとは程遠いのだが。
「いいか。もう一度言うが、俺が死ぬときはお前が死ぬとき、お前が死ぬときは俺が死ぬときだ。このロープは俺とお前の命の絆。わかってるな?」
「うるさい! わかってるわよっ」
「わかってるならいい」
「それで、本当は? なんでロープで縛らないといけないの?」
「一人だけ逃がさないためだ」
「嘘……よね?」
「嘘に決まってるだろ」
「馬鹿!」
後頭部に鈍い衝撃を受けて一瞬だけ意識を飛ばしたブレイクは、ズキンと痛む頭をさすった。
「そんなに怒るなよ」
「普通、怒るわよ!」
考えも無くロープで縛ったわけではないのだが、それはあくまで保険でありその時にならなければ出来るか出来ないかもわかったものではないためブレイクは茶化す事にした。変に緊張させるような事を言って動きが鈍るのを避けたのだ。
怒り心頭のリルーシュに謝罪し、いい感じに肩の力が抜けたのを見届けたブレイクは「さて」と言って最後の太陽草を齧る。
「お出ましだ」
そう言うと、茂みを揺らして一匹のウッドファングが姿を現した。
そろり、そろりと様子を窺うようにブレイク達の前を往復するウッドファングは低い唸り声を上げて牙を剥いている。
「グルルゥゥ!」
――群れで行動するウッドファングが一匹で現れるはずがない。
手負いのブレイク達に、油断はなかった。
「避けて!」
鋭い指示がリルーシュから叫ばれた。
簡潔にして明解。
どのように避ければいいのか、なんて事を聞くのは成り立て冒険者だけで十分である。
例え能力が無くとも人間は慣れる生き物で、そしてブレイクは持ち合わせていない故に必死で得られるものは吸収してきた。
視界の端で僅かに動いた茂みと影に、体は自然と動いていた。
「うおっと!」
「まだ来る!」
「あぁ!」
ブレイクは一人ではない。フードに隠されていて顔はわからなくとも、そこにもう一対の目があり耳がある。
生死を共にしたパートナーは何者にも代え難く、尊い。セリオスとリシュアが離れた今、一時的とは言え、知らない相手だからこそ、そして命運を共にしているからこそブレイクはリルーシュを心から信頼していた。
リルーシュがウッドファングに反応すれば肩に置いた手に力が篭る。そして声を聞けば体は勝手に反応する。
ブレイクはこの時、ウッドファングではなくリルーシュの気配を察して動いていたのである。
正面から出てきた一匹を囮に、左右から抜群の連携を見せて飛び出すウッドファングをステップを踏んで避ける。
ひらりと木の葉が舞うような動きに、リルーシュが称賛の声を上げた。
「す、凄い! なんだか、熟練の戦士みたい!」
「みたい、じゃなくて熟練なの!」
すっ呆けたことを言うリルーシュに、息も絶え絶えなブレイクは異を唱えた。
ウッドファングの攻撃を避けれたのも最後の力を振り絞ったもので、風前の灯となった命を更に削った極限の集中力の成せる技で、二度目はない。
ロープを結びながら伝えた作戦は、ブレイクの全霊を賭した回避からの一撃必殺。
既にウッドファングが動物の習性を持つ魔物である事は実証済みである。
こうして狩りに興じるのも、ブレイク達が弱っているからと言う部分が大きい。ならば手痛い反撃を食らわせて一筋縄ではいかないと知らしめてやれば、本能的に引くはずだと考えたのである。
「いいか、一撃で決めろ。もう足が動かん。魔術が完成したら保持しろ。俺が死に体だとわかれば間違いなく、正面から喉元に食らいついてくる。その時が狙い目だ」
「わ、わかったわっ!」
リルーシュが緊張して上擦った声を上げ「ふぅ」と息を吐くとブレイクの顔の前で杖を構えた。
「やれる……やれる……もう、失望されるのは嫌なの……お願い」
リルーシュが何かをぶつぶつと呟いた。
疲労と出血、そして初撃を回避して役目は終えて後はリルーシュ頼みだと緊張の糸がぷつりぷつりと千切れ始めたブレイクの耳に、そんな祈りの声が霞んで聞こえた。
そして、丁度目線の位置にゆっくりと水の弾が作られたのと同時に魔術の気配を察したウッドファングが完成を阻止すべくブレイクの喉元へと殺到した。
「グラァアァア!」
「ウォォン!」
「くっ!」
ブレイクは顔を歪めた。
魔術はある程度の型が存在している。しかし、使用者によって完成形は様々であるため、魔術が完成しているか否かを判断するのは難しい。適性の持っていない人間なら尚更である。
故に、リルーシュの作り出そうとしている魔術の完成と、迫り来るウッドファングを天秤にかければ魔術の完成が間に合わなかったのだと判断できる。
――普通であれば。
しかし、先程からブレイクの霞んだ視界の端では白い閃光が走り、背筋を震わせる大きな気配が辺りを包み込んでいる。
不思議と、今は背中の人物を信じればいい。そんな気がしていた。
「任せたぞ、相棒。痛いの一発、喰らわせてやれ!」
「任されたわっ!喰らいなさい! 水弾!」