プロローグ ケジメにつき
新年早々新作です。
スッキリやさしいオジさん物語に出来ればと思っております。
ディクセン王国、王都センドリエル。
夜でも活気に溢れる王都の冒険者ギルド本部に、一際大きな声が上がった。
「覚悟は出来てんだろうなああああ?!」
普段は商売敵をどう蹴落とそうかと瞳をギラつかせている荒くれ冒険者達もこのお祭り騒ぎには謎の連携を図り、ザッと波が引くようにテーブルを下げた。
喧嘩だ! と飛び交う野次。王都を囲む円形の防壁の如くテーブルに囲まれた中心には、いい歳をした一人の男と一人の少年、そして少年と同じくらいの女の子が向かい合って居た。
少年に庇われるように立つ少女は少年の肩越しから対峙している男に何かを言っているが周りから飛び交うオッズの声や双方を応援する声がそれをかき消している。
男は無精髭の生えた顎をジョリッと扱く。
「俺はお前達のオシメを替えた事すらある。俺に付き合って冒険者をしてくれた事は感謝している。だがな……だが! 流石に二股は許せねえええええええ!」
ダンッ! と男は大股を開き、怒りにわなわなと体を震わせ天井に向かって咆哮を上げた。
「ハァァ……ハァァ……うっぷ」
興奮ハッスルのしすぎか、男は苦しそうな息を吐いて嘔吐いた。それを見た冒険者達は「更年期かー!?」と更に男を野次る。
「やっかましい!」
男は息を整えると目の前に立つ少年にビッと指を指した。
「昔のよしみだ、一発で手打ちにしてやる……歯ああああ食いしばれえええええ!」
男は握り込んだ拳を中段に構え、少年に接近するとスイングの利いた腹パンをキメた。
――ボキッ
鈍い音がガヤガヤとざわめくギルド内を駆け抜けた。
その音は、殴った男の腕の骨が本来曲がらない方向へと曲がった音だった――