三十曲目 観客にお風呂を
なぜか、3人の観客は歌が始まると同時にバタバタと倒れてしまった。
玩具の巨人兵による圧迫感で気を失ってしまったようだ。
流石の私も観客が気絶しているのに歌うほど非情ではない。
青い視界のまま倒れた3人に近寄るだけ近寄った私もそれ以降は何もする気がないらしく3人を見下ろしたままだ。
たかが15体の巨人兵に囲まれた気を失うとはキモの小さい者達だ。
彼らの前ではロックな歌は控えた方が良いかもしれないな。
心臓が止まってしまうかもしれないからな。
歌で人を殺すのはやはり、ためらう。
歌は殺人兵器ではないのだからな。
地球でも殺人までは犯した事はない。
強引に気を失ってもらった事は多々あるが。
必要な事だったのだ。
襲う者がいれば抵抗するのは必然の定理である。
もう一度、言わせてもらうが殺人は、やっていないぞ。
殺人は、な。
うむ、平和な日本生まれの私が残酷な拷問まがいの事を嬉々としてする訳がないだろう。
当然の話である。
さて、気を失っている観客3人の手当てをしよう。
確か、子守唄にベットを出せる歌があったハズだ。
咲夜に歌って出てきたから間違いない。
【ウィスパー】で早速歌おう。
変な体勢で倒れているから起きた時には身体の節々が痛むだろうからな。
荒地の上で寝るよりもベットの方が良いだろう。
うむ?
良く見れば…汚いな。
いや、森を抜けてきたのだ汚れて当然か。
綺麗なベットを3つ出せたのは良いがその上に汚い観客を乗せるのはどうかと思う。
うむ、汚いのであれば話は簡単だ。
洗えば良い。
『おい、私に一番近い玩具の巨人兵。
そうだ、お前だ』
私の左隣に居た巨人兵が私の方に振り向く。
物理的に見下されるとどちらが上か疑問に思うが私の眷属となったのだ。
私の命令に従ってくれるだろう。
『この3人の服を脱がせろ。
服はどうなっても良いが観客を傷付けるな。
いいな?』
巨人兵は私の命令を素直に聞き、3人に手を伸ばした。
まるで熟れた果物を持つかのように1人を持ち上げた。
そして、懐から巨人兵にしては小さな剣を取り出して慎重に鎧のような服のような物を切り始めた。
人にしてみれば大剣とも呼べそうな大きさだがな。
あの慎重な様子ならば観客の命は大丈夫だろう。
怪我をしても治せば良い。
私は風呂の準備をするか。
『咲夜、風呂の準備をするぞ。
手伝いなさい』
そう咲夜に伝えると、人が入れる巨大な桶の形をした黒い物体を作ってくれた。
咲夜の【闇魔法】で作られた風呂だ。
後は私がお風呂の歌を歌えば良い。
咲夜にも何度か入ってもらっているから湯加減の調整はコツを掴んでいる。
熱湯と石鹸で綺麗に巨人兵が洗ってくれるだろう。
咲夜に洗わせれば観客が即死してしまうからな。




