表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの歌姫  作者: アン
28/32

二十七曲目 観客とゾンビ

咲夜に紙に文字を書いて教えている。

名前は書けるようになったので次は文字を全て覚えてもらう事にした。

ようは書き取りだ。

紙は歌えばいくらでも出せる。

この世界では貴重かもしれないが私には関係無い。


懐かしいな。


私もこうやって文字を覚えたものだ。

書いて、歌って、書いて、歌って歌って歌って…

うむ、なぜか歌って文字を覚えていったような気がするぞ。

ちゃんと書き取りはしたハズなのだが。


確かに、原作の歌をそのまま歌いたいと思って外国語の歌詞を歌って覚えた事はあるが。


そうして分かった事だが、やはり日本語は覚えるのに難しい部類の言語だと思うな。

三種類の文字を覚えなければならないし、漢字にいたっては全てを網羅している人は少ない。


比べてこの世界の文字は英語に似ている。

一種類の文字を組み合わせた単語を文法にならって並べる。


文章は縦書きで左から書く所は珍しいような気もするがな。


うん?

久しぶりに視界が青く染まった。

私の身体は勝手に動き出したな。


(ルシフェル)が出たという事はつまり、人がダンジョンに入った。

どうやら、観客が来たようだ。


咲夜も私の後ろに付いて来ていた。

魔物である彼女、いや、性別は分からないのだが女性の名前を付けたので同性扱いだ。

私は女性じゃないかもしれないが。


話を戻すが、魔物である彼女が人の前に出たら相手はどんな反応をするだろうか?

それも少し前まではあの鬱蒼とした森の主だった魔物だ。


敵対しそうであるな。

死神(しのかみ)というあだ名のようなものも持っているのだ。

さぞ、恐れられているに違いない。

いや、咲夜を率いている私にはより一層の恐れをなすかもしれない。


ふむ、この場合だと、心友の好んでいたゲームのラスボスのBGMが似合いそうだな。

【ウィスパー】でハミングしながら迎えようか。


雰囲気作りというものは大事だからな。


『咲夜、人に手を出すな。

観客が死なれては私が困るからな』


咲夜の方を振り返りながら私の意思を【ウィスパー】で伝える。

反応は無く、ただただ私を見つめて私の後を追う咲夜。


本当に分かっているのだろうか。

咲夜が触れれば相手は即死してしまうだろうから注意しているのだがな。

反応の仕方が分からないのだろうか。


人らしさというのも教えなければな。

今まで歌か文字しか教えていなかった。

道徳の授業も加えた方がいいのか?

しかし、魔物に道徳心は必要なのか。

いや、私の手となり足となり手伝ってもらう時に周囲の人にちょっかいを出してもらっては私が困る。


この事は早急に対応しよう。


いや、相手にも注意をしなければならないな。

ふとした事故もあり得る。

そう、子供だと思って頭を撫でたら死んでしまいました、では笑い事にならない。


神の子が復活した事を歌ったものを歌えば蘇生はできるかもしれないが、まだ試してはいないからな。


上手くいくかは神のみぞ知るのだから。

神のような能力はあるが私は全知全能の神ではないしな。


うん?

視界が赤く染まった?

なぜ(サタン)が出てくる。

相手は人だろうに。


………そうか、ゾンビにでも追いかけられてこのダンジョンに入ったのだろう。

しかし、《ルシフェル》よりも(サタン)が優先されるのか。


できれば私が二人を制御できればいいのだが、今回はその練習は止めておこう。


下手な手出しをして観客を待たせてはいけない。


うむ、早く観客に歌を聴かせたい。

この世界に歌という概念はないとアルケットに聴いたがこういう文化の情報というものは多くの人に聴いてようやく確かなものとなるのだ。


有ればこの世界の歌を教えてもらおう。

無ければ歌という素晴らしい文化を広めよう。


(サタン)は先ほど(ルシフェル)が歩いていた方向とは別の方に駆け寄った。


………違ったか。

ただ単に人とゾンビがほぼ同時に入って来ただけのようだ。

ならば、早々にゾンビを打ち倒そう。

私は早く、観客の前で歌いたいからな。


『咲夜、お前はさっきまで(ルシフェル)が向かっていた方に歩け!

観客の足止めを頼んだぞ!

決して相手に触れるなよ!

決して、だぞ!』


触れたら相手が即死だからな。

咲夜は【闇魔法(やみまほう)】で相手の動きを止められる事は確認済みだ。


他にも視覚を一時的に奪ったり眠らせたりもできるらしいから足止めも容易くできるだろう。


………複数人であれば咲夜が危険か。

殺されても魔物であればこの世界は文句は言えないのだろうか。

DPを消費すれば生き返る事は分かっている。

しかし、むざむざ殺されるのも癪だ。

玩具の兵隊でも歌って咲夜の元に送らせよう。


玩具と侮るなかれ。

その小さな身体の数体で日本の巨悪、とある暴力団を壊滅させた兵隊である。

この世界では歌の効果や影響が高まるからな。

どんな性能の兵隊になるかはまだ確かめてもいない。

噂のドラゴンとやらも狩れるのではなかろうか。


む、ゾンビが見えてきたな。

蛇と人の上半身を混ぜたような奴だな。

常々思うのだがゾンビはどうやって動いているのだろうな。

肉が欠け骨が欠け理性も本能も無さそうな奴ら。

きっと魔法と同じような原理なのだろう。

分からない事を考えても仕方ないか。


あの時のゴリラよりは小さいが小型とも言えないな。

倒しきるのに数分はかかるだろうから歌いながら(サタン)に身を任せるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ