二十六曲目 咲夜という存在
姫川 咲夜。
私の初めての眷属となった魔物、ソウルイーターである。
懸念していた森の開拓が行き詰まった。
領域を広げる為に消費するDPが足りなくなってしまったのだ。
よって、咲夜について調べる事が最近、行っている事だ。
見た目は小さく見える。
小学校に入るか入らないかぐらいの身長だ。
ボロのような皮膚も雨水で汚れを落としては見たがボロにしか見えない。
手触りも何かの布地としか思えない。
掴んだり伸ばしたりしてみると咲夜が身体をよじらせるので痛覚か触覚でもあるのだろう。
主食は魂という物らしい。
種族名が魂を喰らう者と表されている通り、生物から何らかのエネルギーを摂取するらしい。
衰弱していた時にその摂取する様子を見れた。
極楽浄土を歌い桃の木を生やしたが、果実をもぐ前に咲夜が木に触れて枯れてしまった。
しかし、グッタリとしていた咲夜が元気になったので無視していた。
この様子から生物の何らかのエネルギーを触れる事で摂取する事が後々、落ち着いて考えると推測できた。
いや、『死神』の効果で桃の木を即死させたのか?
しかし、即死したからと言って枯れる訳ではないハズだ。
木は切り倒してもすぐには枯れないのだから。
この世界ではどうか知らないが。
【真実の瞳】で見れたスキル及びアビリティは6つ。
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【暴食】
《アビリティ》
満腹にならない。
《スキル》
周囲のあらゆる物を喰らう。
【魂探し】
《アビリティ》
周囲にある魂の場所を知覚できる。
【疑似餌】
《アビリティ》
周囲の者から仲間として認識される。
【幽体】
《スキル》
一定の間、属性耐性が激減する代わりに物理無効になる。
一定の間、感知されなくなる。
【闇魔法】
《スキル》
闇魔法の使用ができる。
【御供】
《スキル》
体力を消費して対象のスキル、アビリティを封印する。
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いきなり、ダンジョンの中に入ったのは分からなかったが、私が出なかったのは【幽体】を使っていたのかもしれないな。
今は私の歌で出した人の顔よりも大きい蝶を追いかけている。
その場面だけを見れば幼い子供が好奇心に惹かれるまま蝶を追いかけてるように見える。
咲夜が小さいため、蝶に捕食されないか心配したのだが。
蝶の中には虫の体液を吸うものもいるらしいからな。
しかし、咲夜に触れれば蝶は即死する。
先ほどの推測が正しければ咲夜は蝶の魂を喰らっているのだろう。
咲夜にとっては逃げているオヤツを追いかけているようなものかもしれない。
口は見当たらず、言語は無さそうだ。
身振り手振りはあるが咲夜の言葉を聞いてはいない。
私の言葉も理解しているようだから知能は高い。
ただ、声を出すという機能がないのだと思われる。
アルケットから教えてもらった文字を少しづつだが、覚えている。
今は咲夜本人の名前を書けるように練習中だ。
正直、子供の世話をあまりした事がないため、手探りで育てているのが現状だ。
聴覚はあるらしく、子守唄や童謡を歌う時は動かずに聞いていたりする。
その後に出てくる何かを期待して待っているだけなのかも知れないが私には判断が付かない。
偶にゾンビが出るが私が出ては踏み倒している。
私が出た時は焦ったが咲夜を無視してゾンビに駆け寄った時は安心した。
咲夜は咲夜で私のマネなのか、何もないところで走ったり跳ねたりしている。
勢いよく転けた時は驚いて【回復魔法】を使った。
未だに私や私の制御はできていない。
何をどうすればよいか分からないから手のつけようがない。
いっその事、3つの身体に分裂できればこうも悩まなくとも済むのに。
ほんとに難問だ。
しかし、この世界に来た最初の頃よりも今の方が楽しいと感じている事も確かだ。
やはり、歌う時には聞いてくれる人が居なければつまらないのだと改めて思った。
早くより多くの観客の前で歌いたいものだ。




