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KIDS! ~小学生達の道草異世界冒険譚~  作者: あぎょう
クエスト3 ビンチの冒険
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其の十八 地獄絵図


 ドシイイインン!!


 早朝。彼らを起こしたのは、清々しい小鳥のさえずりなどではなく、ひどく暴力的な揺れと音だった。


「!? な、なんだ!?」


 デカチョーは反射的にベッドから飛び上がる。

 ドシイイン!!という音は、続けて何回も鳴り響く。それに、なにやら外が騒がしい。


「び、びっくりしたあ!」

「!? 一体なんやねん!?」


 たまらず目を覚ます陽菜とナニワ。

 デカチョーは跳びあがり、急いで玄関に向かって走り出した。ナニワ達もそれに続く。

 そして、玄関の前。彼らは思わず立ち尽くした。

 目の前の光景を、受け入れられずにいた。


「な……なんやこれ………?」


 そこはまさに、地獄絵図だった。



 破壊されたエルフの里が、目の前に広がっていた。



 家という家が焼かれ、黒煙が立ち上がる。外には逃げ惑うエルフの人々。血を流し、倒れる者もいた。

 それは、昨日ランドから聞いた話の様子と似ていた。


「な、なにこれ……まさか……!?」


 陽菜は動揺を隠せない。

 かつて二度も、エルフの里を襲ったという、女子高生の存在を嫌が応でも、想像してしまう。

 つまり、三回目の強襲。

 しかし、昨日の話と異なるのは、先ほどから何度も鳴り響く、ドシイン!という音があるということである。

 人のものではない。明らかに別の存在を感じる。

 その音は遠くから響いているように聞こえた。


「……っ!!」


 デカチョーは顔をしかめる、たまらず、その音の方向へ走り出した。


「お、おい! デカチョー!!」


 ナニワは引き留めようとするも、彼女は構わない。思わず、ナニワ達も彼女を追う。

 炎が燃え盛る家並み。倒れるエルフ達。デカチョーはその中を駆け抜ける。

 胸が張り裂けそうな想いだった。


「許さない………絶対に………!!」


 彼女の正義感が、沸々と湧き上がる。

 その怒りをまっすぐに、風を切り、走る。

 そして、見た。

 たどり着いたのは、ハカセ―――ランド=ラフィンの家。

 その家よりも高く、巨大な人影がそこにあった。

 それは、生物ではなかった。

 木でも鉄でもない、灰色の物質で構成された、人型のカラクリマシンだった。

 さらに、同様の物質で装甲された小型戦車が、ハカセの家を取り囲んでいた。


「な、なんだおまえら!!」


 いち早く辿りついたデカチョーが叫ぶ。

 その言葉に、その人型マシンはドシイン!!という大きな足音を響かせて旋回して振り向いた。先刻から里中に響いていたのは、このマシンの足音だった。

 そのマシンの胴体部分には操縦者が見える。その四肢の肘や膝、足首や手首にあるサポーターからワイヤが何本も伸びていて、操作者の動きに追従して、そのマシンも大きく動いていた。

 しかし、そんなメカニズム云々よりも、デカチョーはその操縦者が異様に小さいことに驚いていた。

 背丈1メートルに満たず、子供のような体をしながら、屈強な肉体を持つ。土色の肌。体を覆うほどの口髭。

 ドワーフ族国王側近。ダーヘンがそのマシンの中にいた。


「!? おまえこそ、何者だ!?」


 ダーヘンは声をあらげて問う。周囲の小型戦車に乗っていたドワーフ達も身を乗り出し、火炎瓶や、ライフル銃のような武器を彼女に向けて構えた。


「はぁ……はぁ……!? な、なんやコレ!?」


 後から追いついたナニワ達が、息を切らしながらも驚く。何人ものドワーフ達が敵意むき出しにこちらを睨み付けている。

 彼らは戦慄し、思わず後ずさる。

 そして、その巨大マシンの大きな手の中にある人物に気が付いた。

 ランドが額から血を流した状態で、握られて捕まっていた。


「!! ハ、ハカセ!!」


 陽菜が呼びかける。しかし、ランドはぐったりとしていて、気絶しているようだった。


「おまえら!! なんのつもりだ!? 町を破壊したのも、おまえらか!! ランドさんをどうするつもりだ!?」


 デカチョーは怒りのままに吼え叫ぶ。

 その時。


「この男は、エルフ族一番の知識人と聞いた。だから、捕まえた」


 ハカセの家。とんがり屋根の二階から、声が聞こえた。

 聞き覚えのある声だった。


「僕達はこの男の知識をもとに、さらなる兵器を作る。そして……トロール達を征服する」


 その声の主は、二階の窓から身を乗り出す。マシンが手のひらを上に窓の脇へ寄せると、そいつはその上に着地した。


「「…………!!」」


 ナニワとデカチョーは思わず、声を失った。

 銀縁のインテリ眼鏡とベスト。エリートを思わせる容姿と風貌。眼鏡の奥で冷たい視線を向ける。



 飛羽場識人。三変人の一人が、そこにいた。



「ひ、飛羽場……!?」


 信じられないように、目を剥くナニワ。

 彼らはその少年を見上げ、少年は彼らを見下す。


「やあ。ド低能共」


 彼は嗤った。

 悪魔のような微笑みで、嗤った。


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