序
少年はいつもどおり、その椅子に座った。
古めかしい洋風の部屋。赤い絨毯。天井まで伸びた本棚が少年を中心に取り囲んでいるようだった。
その中に飾られた書物の内容は様々なものだった。
医学。生物学。考古学。機械工学。
まるでこの世のすべての知識が集結しているかのような、ランダムなジャンルの書物。見渡す限りの分厚い本。
そして、少年の目の前には、やはりいつも通り、ある男が正面に向かい合って座っていた。
少年と同じく、眼鏡を掛けていて、控えめな口髭を生やしている。知的な印象を受ける男だった。
やがて男は、少年に対してある問いかけをした。
問いかけ。それは授業で行うような、ある学問についての基礎的な問題だった。
基礎的といっても、それは高校生や大学生レベルのものであり、少年の年齢にそぐわぬ難易度のものだった。
しかし、少年は何食わぬ顔で、分かるのが当たり前かというように、スラスラと答えて見せた。
その結果に、男はさほど驚いた様子を見せない。
続いて数問。様々な学問からの問題を出し、少年はその全てに答えた。
やがて、問いかけが終わる。
後はまた、いつも通り。
その男の持論話が始まった。
それは少年が、幼少期から何度も聞かされた話であり、一字一句覚えている話でもあるが、少年は真剣な眼差しでそれに聞き入っていた。
そして最後に、彼はこう締めくくる。
「いいか。識人。『知力』こそ『全て』だ!」
いつも通り力強く。男は言った。
そして、少年は―――
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