其の七 赤い少年
一時間後。
ジュウは芝草の中で目を覚ました。
むっくりと起き上がり、半開きの目でキョロキョロと辺りを見回す。
「……あり? ここどこだ?」
さっきまでいた所。つまり、ナニワとデコがさらわれた場所は彼の10メートル上の坂にある。
彼の視界は全て草で覆われ、自分の足元を見ることさえ難しかった。周囲の状況は把握し難く、寝ている間に崖から転げ落ちたなど気づかないようだった。
「う~ん……なんだかわかんねぇけど、とりあえず歩くか」
しかし、ジュウは大して悩みもせず、適当な方向へ歩くことにした。
※
歩き始めて二十分ほど経った頃。
邪魔くさい芝草は無くなり、ジャングルの外の広い草原が彼の目の前に広がった。
「ありゃ。ジャングル出ちまった」
見慣れた光景に、がっくりと肩を落とす。
しかし、顔を上げると、遠くに小さな建物らしきものが見えた。
ゴマ粒ほどに小さいが、確かに屋根のようなものがあった。
「お。なんじゃありゃ? いってみよ!」
危機感ゼロ。好奇心マックス。全身を躍動させてジュウが走りだす。
*
その頃、ラマッカ族の村の隅。
ナニワとデコは、分厚い石でできた立方体の牢屋に閉じ込められていた。
その牢屋は、鉄格子の代わりに有刺鉄線のような鋭いトゲのついた蔓が上下に固定されていて、少しでも触ると、トゲが拒むように伸び、接触者を襲う仕組みになっている。
その蔓格子の隙間からは、事件の張本人である、大岩の『弾』が地面にヒビを作って陥没している様子が見えた。
上空から降ってきた重さ300キロはあろう大岩。怪我人がいても不思議じゃない。
(……こりゃ怒るわなぁ……)
ナニワは己の不幸加減に、思わずため息をついた。
鉄格子の隙間からは、ラマッカ族の生活様式をありありと見ることができた。
大きな草で編んで作った三角錐の家。カラバという巨大動物にまたがり闊歩する戦士。長い芝草をかついで歩くガタイのよい女。六メートル超の木製の竹馬に乗って歩く男。ワニのような鋭い歯と、胴体の三倍ほどの長さの尾をもつ緑色のトカゲに首輪をつけて、ペットのように連れて散歩する男など。
彼らは皆、原始人のように葉で作られた腰巻や胸当てをしており、健康的な色黒の肌をしていた。
驚いたのは、その緑のトカゲを連れた一人の男が、いきなりトカゲを思い切り踏み潰したことである。その直後、トカゲは苦しそうに口から大量の土砂を吐き出し、さらに奇怪なことに、その男が土砂に両手を突っ込み、モゾモゾと何かを探しているのである。まるで不可解な行動だった。
また、ほとんどのラマッカ族が体中に痛々しい傷を負っていることも不思議だった。包帯の役割であろう植物の葉を体中に巻きつける者が何人も見えたのだ。
以上のようにナニワが村中を観察していると、横でデコが首を上下に振り、もがもがと言いながら暴れる。
暴れたかいあって、やっと猿ぐつわが解けると、間髪いれず、
「あんた! やってくれたわね !!」
ナニワを睨みつけて怒鳴った。
「なにゆうてんのや! おまえ、道連れなんて無意味なこと、ゆるさへんで!」
「違うわよ! あいつがいれば何とかなったってのに!」
その返答に、わずかにたじろくナニワ。
(何とかなった? それほどまでジュウを信頼してるっちゅうことか?)
しかし、ジュウはただの冒険好きの小学五年生である。大人(?)である彼女が、ただの小学生の力を当てにするのは、いささか不可解に思えた。
「【金成る軌跡】も没収されちゃったし、どうすんのよもぉ! あれがなきゃ私、ただのか弱い女よ!」
半泣き状態で怒鳴り散らす。
あまりの迫力にナニワはウッと息をつまらせた。彼女は本気で取り乱しているらしく、黙ってそのガナリ声を聞くしかなかった。
すると、その声を聞きつけたのか。
「全く凶暴な現人だ。少しはおとなしくできんのか?」
二人を捕まえた傷の男。アデムが、牢の前に立っていた。
他の者とは異なり、顔の傷を除けば全くの無傷であることにナニワが気づいた。
デコが顔を男の方へ切り替え、鋭い目つきで睨む。
「あんた達。私達をどうするつもり !?」
「……本来なら殺すところだか、契約により現人は皆、管理人に引き渡すことになっている」
「?……ラカスってなによ? 契約って?」
デコが問う。しかし、男は眉をゆがめて、
「現人の小娘に、これ以上話すことはない」
と踵を返し、離れて行った。
「だ……誰が小娘だぁ! 私は大人だぁぁぁ !!」
デコが蔓格子の隙間に顔を挟んで、本日最大のどなり声をあげるが、その直後、蔓の棘に刺されて痛がった。
背中を向けて去るアデム。
その腰みのには、戦士が身に着けるにはあまりに不釣り合いな、不格好な草人形がぶらさがっていた。
*
一方。ジュウはというと。
走り始めて間もなく、目的の建物に到着した。
しかし、それは建物というほど立派なものではなかった。
葉と皮でできたテントのようなもの。モンゴル民族のゲルというものに近い。それが八つ。5メートル間隔で立地していた。
「うお。なんじゃこりゃ」
ジュウが興味深々といった感じでテントに近づく。
その時。テントから、ジュウよりずっと小さく、幼い少年が出てきた。
短髪を後ろでむりやりまとめていて、ひものついた小さな袋を肩にぶらさげている。
「あ」
少年がジュウを視界にとらえ、ふいをつかれたような一声をもらす。
「よっ」
ジュウは気さくに、右手をあげて挨拶した。
直後、長髪の女性が続けて出てきた。
葉製の布の胸当て。膝丈程の、緑色のスカートを身に着けている。
「どうしたのボナ?……あ!」
女はボナを見てから、その視線の先に首を曲げて、ジュウの存在に気づく。
そして、目を見開き驚愕。
女の素頓狂な声に反応したのか、他のテントからも何人かが顔を出し始めた。
そして
「お、おいみんなぁ! 現人だぁぁ !!」
と、ある男が両手を口にそろえて呼びかけた。
すると、あたりがとたんに騒がしくなり、テントから次々と人が現れると、たちまち2メートル程の距離を持ってジュウの回りを取り囲んだ。
彼らはラマッカ族と同じ容姿だった。異なるのは、彼ら以上に痛々しい生傷を負っていることである。
「? 一体なんなんだ? ……! うわ !?」
ジュウは首をかしげる間もなく、数人の男に蔓でもって、上半身と両足首を縛られた。
あっという間にジュウは身動きを封じられ、地べたに座らされる。
「お、おい! オレが何したってんだよ!……! 痛て !?」
ジュウが力ずくで解こうともがくが、蔓がそれに応えるようにさらにきつく締めつける。足首も締めつけられ、立ち上がることもできなかった。ナニワとデコが締め付けられたものと同じものである。
その時。
「抵抗しても無駄じゃて。ガジリツルで縛ったからのぉ。それには、力を加えると収縮する性質があるのじゃて」
人ごみの奥から、背の低い老人が歩いてきて言った。
やや白みがかかったボサボサの髪。赤みがかかった丸く大きな鼻。頭にゴムバンドのようなものを巻いている。チリチリになった口ひげとあごひげを携えていて、明るい金属をちりばめた首飾りをつけていた。人々が道を開ける様から、権力者であることが窺えた。
「その奇怪な服を見ればわかるじゃて。現人。さて………どうしたもんじゃて?」
と、老人が周りの皆の顔色を伺う。
「イジム長老。もはやあの妙な少年ともかかわりがありません。殺してしまってもよろしいかと」
と、ある男が進言する。
長老、イジムがうなずく。
「確かに。かつての仲間に引き渡すわけにもいくまい。……殺れ」
イジムが冷酷な瞳でジュウを見下して言い放つ。
直後。男たちは、石製の槍や、蔓を弦代わりにして作った弓を構えて、痛々しい体を引きずりながらもジュウに近づいた。
「え !? ウソだろ!? オレまだ死にたくねぇ !!」
さすがのジュウも命の危険を感じ、暴れ出した。しかし蔓は体に食い込むばかりで身動きがとれない。
その時
「待ってください! 長老様!」
ジュウの第二発見者である長髪の女が、ジュウの前に進み出て叫んだ。
「現人とはいえ、まだ子供! 殺すのはあまりにも無慈悲です!」
と、訴える。ジュウの顔に笑顔が戻った。
しかし
「忘れたかニミナ。現人は我らの憎むべき敵。歳など関係ないのじゃて」
長老。イジムが有無を言わさぬ形相ですごむ。
言われた女。ニミナが、顔をゆがませて一歩後退した。
「分かったらそこをどくのじゃ。ニミナ。身内を殺したくはない」
再び周りの男たちがじりじりと距離をつめる。
ニミナが体を震わせて後ずさりする。ジュウの額に冷や汗が流れた。
その時だった。
平原の遥か遠くから、キーンという甲高い音が聞こえてきた。
「? なんだあれ?」
ジュウがその音のする方を向く。
それは地平線彼方から、土煙をあげて近づいてくるのが分かった。
ものの数秒のうちに、それは集落手前に到着。急停止した。同時に耳をつんざく高音が鳴り響き、纏っていた土煙と音の衝撃波が彼らを襲った。
全員がごほごほとせき込み、土煙に涙目を浮かべる中、少年の声が聞こえた。
「なんだぁ? こんなとこに集落なんてあったかぁ?」
煙が晴れ、それが姿を現した。
水上バイクに似た奇妙な乗り物。その上に、ある少年がまたがっていた。
そのバイクは、水晶のような、透明感のある滑らかな形のボディで、内部で炎のようなものがちらちらと燃えている。前方には流線形の赤い金属ボディ。その横から側面二本ずつ、ピストンが出たり入ったりして、絶えず可動していた。本体後部にはドーム型の黒い箱が固定されて、水晶体には、エンジンらしき赤い立方体の箱が透けて見えていた。
さらに不思議なことに、赤く熱を帯びた金属のタイヤが本体から独立し宙に浮かんでいた。ハンドルはボクシンググローブのように2つ拳を覆うのみであり、本体と独立しているようだった。
また、バイクに負けじと、少年も奇妙な容姿をしていた。
背中にかかるほどの、ところどころ跳ね返った赤い長髪。髪の色に合わせたような真っ赤なノースリーブ皮ジャンパーと長ズボン。右手指に赤い宝石が付いた五つの指輪。液晶パネルのようなゴーグルを掛けている。いわゆるパンク系の、ファッショナブルな格好だった。
背はジュウより頭ひとつ上。まだ顔に幼さを残した、年齢でいう中学生あたりと思われる子供だったが、それを裏切るような、ひどく鋭い目つきを見せていた。
少年が右足で水晶体を叩くと、キーンという音が徐々に小さくなる。同時に、タイヤの色が赤から白へと変わり、ガコッと音を立てて本体にはまり、地面に接地した。同時に、水晶体の内部で燃えていた炎も消えてなくなる。
少年は、浮遊力の無くなったハンドルをボディ前方に付属されているホルダーにかけてバイクから降りた。ストッパがないにもかかわらず、そのバイクはバランスを崩さず、直立していた。
全員が呆気にとられている中、少年はイジムのもとへ歩きだす。
「…………管理人か」
先に口を開いたのはイジムだった。
「んあ? よく見るとおめーら、ラマッカ族じゃねぇか。ひどい怪我だな。そんでもって、こんな離れたとこで暮らしてるってことは………さては喧嘩でもしたのか?」
悪戯っぽく、にやりと笑った。
「……価値観の相違というやつじゃ。」
「カッカッカ! おいおいマジかよ !?」
少年。管理人は、声を高らかに笑った。
そして、彼の視線がイジムからジュウへ変わった。
「お。現人じゃねえか」
取り囲む大人を押しのけ、ジュウへと近づく。
「連絡を受けたのとは別にいたってことか? まぁちょうど良く捕まってるとこだし、貰ってくぜ?」
「連絡? やつらも現人を捕まえたのか?」
そこで、それまで嫌悪感をむき出しに視線を逸らしていたイジムが、初めて管理人を直視した。
「ああ。二人の子供だ。ガキの現人たぁ珍しいぜ」
「……二人の子供?」
ジュウが反応する。
嫌な予感がした。
「おい! 捕まった二人って、どんなやつだ !?」
ジュウが慌てて顔を上げて、管理人ラカスと顔を合わせた。
「あぁん? そうだな……へんな喋りの男と、でっけぇ額の女のガキだと聞いたなぁ」
「………!!」
それを聞いて、ジュウの表情が一変した。
驚愕と焦燥。
「ちくしょう! 助けなきゃ……! 痛ててて !!」
再びジュウが蔓を解こうともがくが、結果は二の舞。痛い思いをするだけだった。
「お、おいおまえら、これ外してくれよ! 友達が危ねぇんだ! 頼む!」
ジュウが懇願するが、その場の誰ひとりピクリとも動かない。ニミナも少しうろたえた様子で見張るだけだった。
「頼むよ…… !!」
締め付けられながらも、むりやり背中を曲げて頭を下げるジュウ。
それにより襲ってくる蔓の痛みにも耐えて。
しばらくの沈黙があった。
やがて、、管理人が問う。
「……相手は総勢百人。そのうち豪傑の大人三十人。弓矢、槍、斧、あらゆる武器でおまえを襲ってくるぞ。それでも助けに行くってのか?」
脅すように、確かめるように、ジュウの頭上から言葉をぶつけた。
しかし、彼は間髪入れず。
「そんなの関係あるか! 絶対守るんだ !!」
必死の形相で、叫んだ。
ジュウの両腕と体から、ミチミチと痛々しい音が聞こえる。締め付けられてもなお、その痛みに屈することなく抵抗し続けていた。
さらにしばらくの沈黙。
その様子を見守るイジム一同。
やがて
「面白ぇガキだ」
管理人がニヤリと笑うと
イジムに対して言い放つ。
「おい。こいつを解放しろ。俺が奴らの所まで連れていく」
「なっ…… !?」
イジリを含めた全員が仰天。あたりがどよめいた。
「早くしろ。俺の言うことが聞けねえのか?」
すごむと、しんと静まり返った。
奇妙な光景だった。数十人の大人が少年一人に屈服していた。
やがて、
「ニミナ」
イジムが無言の命令を下す。呼ばれたニミナは早足でテントに戻ると、青い液体の入った小瓶を持ってきて、管理人ラカスに渡した。
「それを蔓にかけろ」
イジムがぶっきらぼうに言う。
「なるほど。蔓の嫌がる液体ってとこか?」
少年が小瓶のふたを開け、ジュウを締めつける蔓へ垂れ流した。
すると、蔓はシオシオとやせ細り、ジュウの体を離れてポトリと落ちた。
その直後。
「よっしゃぁぁ! 今行くぞぉぉぉ !!」
ジュウは勢いよく立ちあがると、来た道を戻るように走りだした。
「いや待て。俺の言ったこと聞いてなかったのか?」
少年がその後ろ襟をムンズと掴んで引きとめた。
「なにすんだよ! 早く助けにいかなきゃ……!」
「だから、俺が連れてってやるって言ってんだよ。てめぇの足よりはずっと速ぇぞ」
少年が後ろの奇妙なバイクを親指で指差す。
「マジか !? おまえイイヤツだなぁ! ありがとう!」
ジュウの腕には蔓によりできた青あざが痛々しく残っていたが、その顔は笑顔で満ち溢れていた。
「おまえのためじゃねぇ。おまえがやつらにどう叩き潰されるか、見てぇだけだ」
そう言うと、少年はバイクのもとへ歩き、ハンドルをホルダーから外し手に握る。
ジュウが後に続いて追うが、
「あぁ。そこで止まってろ。ニケツは嫌ぇなんだ。他の奴らも離れてな」
面倒くさそうに制された。
訳がわからなかったが、ジュウはとりあえず立ち止まった。イジム達はその様子を、ただ呆然と立ち尽くして見ていた。
少年はバイクに飛び乗ると、ハンドルを前に持って構える。足をペダルにかけた時、不思議なことに、管理人の足が赤く燃え始めた。
「うわ! 大丈夫かおまえ!」
ジュウが目をむき出して驚く。
しかし、その炎はペダルに吸い込まれると、水晶体の中に炎が灯り、キーンという音が再び響き渡る。タイヤとハンドルが本体から独立し、宙に浮かび始めた。管理人ラカスの出す炎が、動力源のようである。
「うおぉ! なんかわかんねぇけど、カックイイなそれ!」
ジュウが目を光らせて、興味深々に見入る。
その時だった。
ジュウの背後から小さな影が、おたけびを上げながら飛びかかってきた
「うああああああああああ !!」
ジュウの第一発見者。ボナと呼ばれた少年が、大きな棍棒を振りあげて襲いかかっていた。
「 !? うおぉ !?」
とっさにふりむくジュウ。
しかし、よける間もなく、頭にその一撃を受けた。
それと同時。
図らずして、少年がバイク前方にあるボタンを押した。すると、後部に備えられていた黒い箱の頂点に空いた穴から青い光線が飛び出て、二人を襲った。
二人は青い光に包みこまれると、体をゆがませながら、黒い箱に吸い込まれていった。
「ボ……ボナ!」
驚愕と脅威。ボナの母親。ニミナがおもわず叫ぶ。
しかし、
「あ。余計なのも入っちまったな。………まぁいいや」
少年は少しも気にしない様子で、左足でバイク側面を叩いた。
再びタイヤが赤い光を帯び始め、高速回転。猛烈な初速度で走りだし、あっという間にその姿を森の向こうへと消した。
「ま……孫が………」
ボナの祖父。
つまり、ニミナの義父である長老イジムが目を丸くさせて呆然と立ち尽くす。
しかしそれもほんの数秒。
顔をみるみる赤くさせて、
「あ……あのくそガキがぁぁぁぁ !!」
体をわなわなと震わせて、怒る。
「わしのかわいい孫を! もう許さんじゃて! ヤツを追えぇ !! 八つ裂きにしてやるじゃて !!」
イジムが杖を振りあげて、周囲の男達に向かってがむしゃらに怒鳴り散らした。
「し、しかし長老。やつら村に向かうつもりでしたよ。このまま追うと、やつらと戦うことに……」
一人の男が進言する。
村に到着する前に彼らに追いつくことは、バイクの圧倒的なスピードを見れば不可能であることが理解できた。
彼らを追うということは、必然的に、ラマッカ族の村に攻めいる形になる。
こちらは傷だらけの戦士達。敗北は明らか。
しかし、
「かまうものかぁ! ごちゃごちゃ言わずにさっさと追うじゃてぇ !!」
イジムは頭に無数の怒りマークを作り、男連中の尻を蹴飛ばした。
「は……はいぃぃぃ!!」
男達は恐れおののきながら、急いで武器の準備を整え始めた。
「少し早いが、リベンジじゃて !! 女も手伝え !!」
今にも血管がちぎれそうな形相でなお叫ぶ。
その後ろで、ニミナが遠く森を見つめていた。
憂いを帯びた瞳で、見つめていた。
(………ボナ…………)