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KIDS! ~小学生達の道草異世界冒険譚~  作者: あぎょう
クエスト2 デカチョーの冒険
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 本当に悲しくてショックだったのだけど、体は思った以上に疲弊しきっていたらしい。家に着いて夕飯を掻き込み、風呂にも入らずそのまま部屋へ直行して布団の上にダイブした。

 そしてそのまま寝た。気付いたら寝てた、というヤツだ。合宿の時でさえ、こんなに疲れきったことはない。

 なんだかスッキリしない睡眠だった。目覚めが最悪だ。眠ったのかどうかさえ、本当の所、わからない、

 目がはれぼったい。アタシは布団から起き上がり、手鏡を除くと案の定、目がパンパンに腫れまくっている。

 自分でもいやになるほど、泣いた。一生分の涙を流したと、大げさでなく思う。

 ……それにしたって、男子の前で泣いてしまうなんて………しかもよりにもよって、あの佐久間浩介に……

 ……いや、たしか、『ナニワ』……だったっけ。

 とりあえず、アタシは完全に起き上がり、朝風呂をすることにした。体は汗まみれ。入らないというほうが嘘だ。  

 時計をみると、6時50分。少しギリギリではあるが、まあ学校には間に合うだろう。

 ……ああ。忘れようと思ったのに、思い出してしまった。

 アタシは昨日、学校をサボったことになったんだ。

 二人を追っての行動にしたって、委員長らしからぬ行動だ。常に生徒の模範となるべきなのに。熱くなると周りが見えなくなるのが、アタシの欠点だ。

 ……まあ、状況が状況だけに、|仕方ない(・・・・、か。

 アタシは風呂場に着くと、気持ちの悪い服を脱ぎ捨てて、浴槽の扉を開けた。

 10分後。きれいさっぱりになったアタシは、普段着に着替え、食卓へと向かう。今日の食事当番は父ちゃん。いつものように、朝食は白飯とあさげと目玉焼きだ。ちょっとは変えてくれてもいいのに、とは思うが、わがままは嫌いだから言わない。

 アタシは畳の上に腰をおろし、「おはよう」の後、「いただきます」と手をそろえて、ちゃぶ台の上の箸をとる。父ちゃんもアタシと向かい合い、続けて食べ始めた。

 しかし、昨日もそうだが、父ちゃんはアタシがぼろぼろの状態で帰ってきたというのに、何も言ってこない。

 だけど、それはそれで助かる。

 あの世界で起こったことは-----兄ちゃんが死んだことは、言わないことにした。

 どうせ言ったところで、信じないだろうし、信じたところで、父ちゃんを傷つけるだけだ。

 追及されたら困ることになるなと思っていたから、昨日起こったことはなるべく悟られないよう努めてはいるが、気丈にふるまってはいるが、それにしたって、異常なまでに父ちゃんは無干渉だった。それは好都合ではあるんだけど、ここまで無反応だと逆に不安だ。

 まあ、父ちゃんは昔から、兄ちゃんと違っていろいろと鈍かったからな。警察官のくせに。

 さすがに頭の怪我に関しては心配してくれたようで、少し安心したが。

 とりあえず今日は、学校の先生に顔出して、昨日無断で学校フケたことを謝りつつ事情を説明した後、兄ちゃんの言いつけどおり病院に行くつもりだ。


「ごちそうさま」


 手をそろえて言って、台所へ。自分の茶碗を洗う。

 時刻7時20分。うん。これならば、余裕だ。

 歯を磨いて、今日の授業の教科書を揃える。ランドセルは学校に置きっぱなしにしてしまったから、別のカバンに入れていく必要がありそうだ。

 規則正しく。規律厳しく。それがアタシのモットー。

 ……あ、そうだ。忘れるところだった。

 アタシは()()を手に取り、身に着ける。少しもたつくと思ったが、案外、すんなりとうまくいった。昔、父ちゃんや兄ちゃんの見様見真似で、練習したかいがあった。体は覚えてる、というやつだ。


「いってきまーす!」


 アタシは元気良く挨拶をして、新聞を読みふける父ちゃんの前を横切る。

 そこで、ふと父ちゃんは顔を上げ、アタシを見ると、少し驚いた表情をした。

 ……あちゃあ~。さすがにそこまで、鈍くなかったかな……?

 と、アタシが内心ハラハラしてると、驚くことに、父ちゃんは頬をつりあげて、ニヤリと笑った。


「おいおい。いき過ぎたお洒落ってのは、校則違反じゃあなかったっけ?」


 と、アタシの首元にぶら下がるものを見て、茶化すように言う。

 昔、兄ちゃんに貸した、自分のネクタイを指して。

 ……よかった。予想以上に、鈍くて。

 でも、なんだ、そんなことか。

 アタシは悪戯めいたような笑顔で、こう言い返した。


仕方ない(・・・・)だろ。だって、今日は着けていきたい気分なんだから」


 それを聞くと、父ちゃんは少し呆れたように、嬉しそうに、鼻で笑った。

 規則は大事だ。その気持ちは変わらない。

 だけど、それを守ることが、必ずしも正義であるとは限らない。

 現実から逃げたり、ズルをしたりせず、自分が正しいと思うことを貫くのが、正義だから。

 例え法に触れるようなことでも、自分の中に正義があれば、それはそれで、『仕方ない』正義だから。

 兄ちゃんが、それを教えてくれた。

 わかったんだよ。兄ちゃん。

 兄ちゃんの目指していなかった正義でも、それで救われた人は大勢いたんだよ。

 正義のために行うやり方って人それぞれで、問題は、それで結果がどうなったってこと。

 本当の正義って、きっと心の中にあって、そのための行動なんて些細な問題だったんだ。

 だからこれからは、少しは規則に対して、ゆるくなってもいいかなって。そう思った。

 ネクタイつけて、何が悪い?

 格好良いだろ? アタシは本当は、お洒落っ子なんだ。

 玄関にて。スニーカーを履き、本来、学校に持っていくものではないカバンを手に取る。

 ……そういえば、『ナニワ』と『ジュウ』のこと。

 昨日、あの女の子(目上に対して偉そうだった。今度会ったら注意しとこう)も言ってたけど、本当に無茶しすぎだ。

 いつか死んでしまうっていうのも、脅しでもなんでもないように思える。

 どうせあいつらのことだから、言っても聞かないだろうし。

 ……はあ。仕方ない。

 委員長たるアタシが着いていって、無茶しないよう、見張るしかないな。

 全く世話が焼ける。


「行ってきま~す !!」


 あれ?二回目だっけ?

 でも、「行ってらっしゃ~い」と、気の抜けた父ちゃんの声が返ってきた。

 うん。じゃあ一回目だ。

 金属の玄関扉を開ける。アパート通路の、手すりの向こう側から、朝日が差し込んで眩しかった。


 アタシは、歩き出した。



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