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KIDS! ~小学生達の道草異世界冒険譚~  作者: あぎょう
クエスト2 デカチョーの冒険
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其の十一 魔神現る


「死……しぬぅぅぅ……」


 ナニワは弱音を吐いていた。

 高さ50メートル。最大で100メートルほどもある砂山を幾つも越えながら一時間近く歩いて、疲労が蓄積されつつあった。

 しかし、それよりもっと厄介な障害があった。


「なんやねんここは……ぜんぜん暑くも無いし、汗もかかへんのに、口を開けるたび舌が乾きよる……」


 くたくたの状態でぼやくナニワ。ジュウも同じく、背中をまるめて気だるそうに歩いていた。

 いわゆるこの砂漠は、超乾燥地帯だった。

 太陽は無く、暑さも無く、汗は出ない。しかし、乾いた空気が容赦なく彼らの肌から水分を奪っていた。たまらず水を摂取し続けた結果、すでに水筒の水は底をつき始めていた。


「このままじゃやばいで……いったん戻らへんか?」


 それとなく提案するが


「………イヤだ」


 ジュウは口を尖がらせて、へばった顔をしながらも、つぶやくように言った。


「何か見つけるまでは、帰りたくない……」


 予想通りの返答だった。

 例えば、大半の人がRPGをする時は、必ず何かをやり遂げたり、イベントを起こしたりなどしてからゲームを止める場合が多い。だから、ゲーム好きのナニワも、ジュウの気持ちはよく理解できた。

 だが、現実問題、どうしようもない。あたり一面見渡しても、町ひとつ、泉ひとつ見当たらないのだ。

 しかしそこで、


「あ! そうや!」


 思い出したように言うと、ウエストポーチからあるものを取り出した。

 小型ゲーム機。GBN(ゲームボーイネクスト)と、そのカセットである。カセットには『ゼノ×ストライク』と表記されていた。


「こんなこともあろうかと、いろいろ便利なゲーム持ってきたんやで」


 そう言うと、カセットをゲーム機にはめて、電源ボタンを押す。数秒後、ゲーム画面が展開された。

 それは、いわゆるシューティングゲームのひとつだった。

 戦闘機のようなものが上空視点から映されていて、空母から飛び立つ場面だった。

 ナニワが手のひらに画面を押し付けると、上空にかざす。

 すると、手のひらにあった半透明の画面が瞬時に巨大化。長方形型で、ナニワ達の前方彼方まで、果てしなく展開されていく。それと同時に、全長10メートル程の戦闘機が、彼らの目の前に現れた。

 つまり、ゲームを顕在化したのである。

 それがナニワのもつ、GBNの想具(アテラ)【臆病な英雄】(ヒーローボーイ)の特殊能力だった。


「これに乗って空から探せばええんやないか?」


 ナニワが戦闘機を指差して言う。

 中には子供二人分入るスペースがある。このまま当てもなく散策するよりは、空から街や泉など探した方が効率的であると言える。

 だが、


「んむぅ……………………」


 相変わらずジュウは仏頂顔のままだった。


「文句は言わせへんぞ? こんなとこで死ぬのはゴメンやからな」


 冒険好きの彼としては、自分の足で、自分の力で道を切り開きたいのだろう。そんな不満を察しての言葉だった。

 その時


「? なんだアレ?」


 ジュウは眉をひそめ、ナニワの後ろ上空を見上げた。

 ナニワが振り返り、そして仰天する。

 上空に、何十もの戦闘機が空中で停止していた。

 それは、『ゼノ×ストライク』の敵軍の戦闘機だった。それだけでなく、地面にいくつもの大砲が砂山から顔を出していて、上空めがけて構えられていた。

 つまり、操作する戦闘機だけでなく、狙撃対象である敵機まで、リアルとリンクしてしまったのだ。

 ナニワは直感する。

 戦闘機に乗って空を飛ぶということは、それら対象を全て破壊しながらでなくてはならない。

 つまり、ゲームをクリアしなくてはならないことを。


「無理無理無理無理 !! 作戦中止! 」


 顔を青ざめながら叫ぶと、電源OFF。目の前と遠くの爆撃機が消えた。

 ジュウが首を傾げる。


「なに怖がってんだよナニワ。ゲームは得意じゃなかったのか?」

「ああ大得意や! 俺にかかればクリアできへんゲームはあらへん! 特にこのゲームは大好きで、何百回とクリアしとるで! 全エリアをノーダメージでクリアできるわ!」

「じゃぁなんで……?」

「万が一っちゅうのがあるやろが!!」


 半分涙眼で、恐怖そのもののような叫びをあげた。



 結局、これ以上の冒険は断念して、一度引き返すことにした。

 数々の街探検を経て、精神的に成長したとはいえ、ナニワは大が付くほどの臆病者であることに変わりは無かった。実際に戦闘機にのって命をかけたゲームをするほど、肝がすわってなかった。


「仕方ねぇなぁ。帰ったらたくさん水もって、すぐ集合だからな」


 ナニワが申し訳なさそうにそれを承諾。ジュウが不満げに、来た道を振り返る。砂の上にしかれた縄跳びを辿ろうとした。

 その時だった。


 ズオオオオオオオ    


 どこか遠くから、空気を裂くような音が聞こえた。


「? なんや?」


 彼らは、音の方向に視線を向ける。

 遥か上空。小さな点が見える。

 【臆病な英雄】(ヒーローボーイ)は解除した。戦闘機はもういないはずである。

 やがて、その点がみるみるうちに大きくなり、その全貌を露わにし始めた。

 それは人の形をしていた。

 遥か彼方から、音速並の速度で飛来してくるそれは、墜落するようにジュウ達の手前に着地。大量の砂埃を巻き上げた。


「! ゲホッ! ゲホッ!」


 思わずむせ返る二人。

 そして、目を見開いた。


 目の前に、身の丈8メートルを越える、大男が現れた。


「……………!!」


 ナニワは思わず、息を飲む。

 それは人間のようで、人間でなかった。

 紫色の肌と瞳のない眼光。子供の胴体を鷲掴みできるだろう巨大な手と筋骨隆々の身体。頭に巻かれたターバンと、アラビア風の民族衣装。

 まるで、童話『アラビアンナイト』に出てくる『ランプの魔神』そのものだった。

 砂埃が風に巻かれて吹き去り、お互いを視認できる状態になる。驚きに開いた口が塞がらない二人を前にして、その魔人は表情を一切変えずに言い放った。


「……先ほどの、『セントウキ』を出した者は、どちらだ?」


 あらゆる諸事情も挨拶も抜きに、質問を投げかける。

 いきなりの衝撃に、返答もままならないナニワ。

 数秒の沈黙の後。


「うわぁぁ……でっけぇなぁ。おっちゃん」


 先に口を開いたのは、ジュウだった。


「『セントウキ』を出した者は、どちらの方かと訊いている。金属でできた鳥のことだ。我が主が住まわれる王国に招待するよう、承っている」


 ここまできて、ナニワの頭もようやく回転を始めた。

 相変わらず詳細を省いた説明ではあったが、意思は伝わった。そして、その魔神の迫力に気圧されて


「お……俺やけど………」


 恐る恐るナニワが手を挙げて言う。

 魔神の視線がナニワに向けられる。見下ろすように、今にも射抜かれそうな、鋭い目つきだった。

 そして無表情のまま、ナニワの目の前に膝まずくと、その大きな左手を広げた。


「貴方を歓迎する。乗り給え」


 丁寧な口調で言い放つ魔神。

 それでも、警戒心は拭えなかった。ナニワは一歩、後ずさりする。

 しかし


「おぉ? なんか知らねぇけど、どっか連れてってくれんのか? 助かったなぁナニワ!」


 ジュウは全く危険を感じないようで、能天気な声を上げる。真っ先に魔神の掌に乗ろうとした。

 それに対し、


「貴方は許可しない」


 魔神は右手を立てて、ジュウの進行を遮った。

 ジュウはわずかに驚いた様子を見せると、激昂する。


「なんでだよ !? 俺とナニワは仲間だぞ!」

「……主から招待を許可されているのは、『セントウキ』なるものを召喚した者のみだ。貴方は認められない」

「なんだよそれ! いーじゃねぇかよケチ !!」


 駄々っ子のようにわめきたてると、右手の壁を避け、無理やり左手に乗ろうとする。

 しかし、魔神はそれを許さなかった。

 ジュウが左手に乗るや否や、右手でジュウの胴体を鷲掴みにして起立。目線の高さまで運んだ。


「うわっ! 何すんだコノヤロ !!」


 ジュウが右手の中でもがくように暴れるが、いっこうに解ける様子はない。


「ジュ、ジュウ!」


 思わず叫ぶナニワ。魔神はその叫びも耳に入らない様子で、冷徹に言い放った。

 そして


「許可しない」


 次の瞬間。

 魔神は右手を大きく振りかぶると、



 ジュウを斜め前方上空へ、大きく投げ飛ばした。



「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「 !!……ジュウゥゥゥ !!」


 その距離は、ソフトボールの遠投どころではない。飛ばされたジュウはあっという間に小さくなり、その姿を消した。

 時速300キロは軽く越していただろう速度で、まるで人間をモノのように、魔神は投げ飛ばしたのだ。


「お……おまえ! 何しとんね……!! うわっ!!」


 激昂するナニワも気にせず、魔神は彼の胴体を、ジュウと同様に鷲掴みにする。

 そして、宙に浮かび、地面に対して身体を水平に傾けると、飛行し始めた。どうやら、主がいる王国の場所へ向かうらしい。

 その時、ナニワは本能的に察知していた。

 これはやばい、と。

 魔神は特に感慨もなく、何の感情もなく、ゴミを片付けたごとくジュウを投げ飛ばしたのだ。

 ナニワの心中にあるのは、友達を投げとばされた怒りや悲しみなどではなく、ただ恐怖だけだった。

 一刻も早く逃げ出さなければならない。ジュウを探さなければならない。

 しかし、掌の中でなす術もなく、ただ今は、友の身を案じることしかできなかった。


(ジュウ……どうか無事でいてくれ……)


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