序
ある夏の日。夕焼け空の下。
制服を着た一人の少年と幼女が、公園で遊んでいた。
二人は汗を流しながら、砂場で砂の城を作っていた。
1メートルほどの高さの巨大な砂の城。
背の高い少年がバケツ一杯の砂を上からかぶせて、幼女が腰を落とし、もう一つのバケツにスコップで砂を積める。
その時。幼女が泣き出した。
顔をしかめて目をゴシゴシとこすり始める。どうやら、少年がかぶせた砂が目に入ったらしい。
少年は手を止めて、幼女に目線を合わせてしゃがみこむと、
ニコリとほほえんで、言い放つ。
「---------------」
幼女の涙が、止まった。
少年は遠くの水飲み場の方を指差して、砂を洗い落とすよう指示する。
幼女は小さく頷くと立ち上がり、タタタッと小刻みなステップで走り始めた。
ほんの一分。
その間はほんの一分ほどだった。
幼女が水飲み場の蛇口をひねって、目を潤わせ、ようやく異物感がなくなったその間。
少年は忽然と姿を消した。
幼女は立ち尽くす。
不思議そうに辺りをキョロキョロと見回すが、影も形も見当たらなかった。
「……兄ちゃん?」
返事を期待して幼女はつぶやくが、その願いは叶うことはなかった。
ひぐらしの鳴き声だけが、いつまでも耳に残った。
これが、彼女の冒険の始まり。
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