寒さと暑さ
「う~っ寒っ」
白い息を吐きながら、ベランダで洗濯物を干す俺。
「ん?どうした?」
奥さんが窓の隙間から覗いていたので声をかけた。
「ちょっと、窓の隙間が開いている!外の風が入ってきたら寒くて死んじゃうわ」
「私を殺す気?」
と、言いはなち、俺の返答を待たずに
ベランダの窓をピシャっと閉めた。
おまけに、カーテンまで閉めた。
「はぁ・・・・」
「ううっ、寒い。何かがとっても寒い」
「こんなはずじゃなかったのになぁ・・・」
奥さんの赤いパンツの両端を持ちながらため息をついた。
ため息をついた俺は、49歳の自衛官。
奥さんとは結婚して18年になる。
高校2年になる息子も一人いる。
「うう。。。寒中訓練。寒中訓練」
気分も切り替えるように言うが、寒さと虚しさは変わらない。
やっぱり、奥さんの赤いパンツの両端を握りしめている。
どこでこうなってしまったんだろう。。。
出会った頃の奥さんは、とても凛々しく笑う人立ったはずだ。
初めて奥さんに出会ったのは、海上自衛隊に入隊し数年が過ぎ
上官たちが立ち会う訓練だった。
暑い日で整列をしていたところ、他の上官達と奥さんが歩いてきた。
ん??
あれ?
暑い???
俺は、寒空のなか奥さんのパンツを握りしめていたはずなのに
なぜ暑いんだ!?