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第六話

忙しすぎる...

純血な吸血鬼族には「姫」と呼ばれる特殊な存在の吸血鬼がいる。


「氷の蒼姫」、「雷鳴の金姫」、「紅蓮の紅姫」、「漆黒の闇姫」、「鋼鉄の戦姫」の5体で構成されている。


そして、この5体の姫が今の吸血鬼の実権を握っていて、それぞれ20匹程度の純血吸血鬼が住んでいる領土を持っている。


その5体の姫は圧倒的な戦闘力を保有していて、100匹の吸血鬼を束ねる全ての吸血鬼の憧れの的だ。


姫たちは、それぞれの領土の人たちにも優しく、皆で協力して半吸血鬼人を討伐しようと力を合わせている。


ちなみに、私の主人は氷の蒼姫様で、氷の蒼姫様は眷属が4匹しかいないが、それぞれ全員がV遺伝子使いで有名だ。


先ほども言ったように、姫たちは眷属や吸血鬼たちの憧れの的であり、氷の蒼姫様の眷属である私は、雷鳴の金姫様が嫌いだ、ということではない。


どの姫も均等に尊敬し、敬愛している。


なぜこんな説明をしているか? というと...


今、目の前で八条くんを殺そうとしているのが、雷鳴の金姫様だったからだ。





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「おや、またクズが一匹増えましたねぇ...」


雷鳴の金姫様とは、一回会った事がある。


そのときは、こんなやつれておらず、不気味なまでに整った顔立ちと、鮮やかな金髪が印象だった。


人も良く、私のことを褒めたりもしてくれた。


しかし、今目の前にいる雷鳴の金姫様は、そのときの印象とまるで違っていた。


「なんで...雷鳴の金姫様がこんなこと...他の姫様の眷属を殺そうとするなんて...」


「自身がAクラスの能力使いに加えて、このイレギュラーな存在が増えたんですよぉ? 始末しなければ勢力が拡大されて蒼姫の独裁政治になるじゃないですかぁ~?」


「主人はそんな愚かなことは考えていません! 私たちの住処を脅かす半吸血鬼人を討伐しようと日々努力しています!」


「そこに転がっているのだって元人間じゃないですかぁ? 私がしていることは間違っているんですかねぇ?」


それは間違っている。


純血吸血鬼の法に、他の姫の勢力を殺してはならないという法がある。


「他の勢力の眷属を殺したら、金姫様に罰がいくんですよ!? まだ今なら間に合いますから...」


「くふふ...せっかくこのままコイツだけを殺せば良かったものを...口封じにもう一人殺さなければならなくなりましたよぉ...」


ぞくり、と寒気がした。


私なんかBクラスの能力使いがひとつの領土を治める姫に勝てるわけがない。


でも...


「私はどうなっても...八条くんは殺させません」


「そうかぃ...じゃあ死ねやぁ!」


私に向けて、金姫様が放った雷が一直線に迫ってきた。






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俺は、あのやつれた金髪不健康ねーちゃんから睨まれてから、一歩も動くことができなかった。


どうやら、俺を殺そうとしているらしい。


しかし、それは姫野さんの割り込みでいったん中断された。


男が女に助けられるとはなんともみっともない話だ。


話を聞いてるうちに、どうやらアイツは半吸血鬼人ではなく、こっち側の存在なのに俺を殺そうとしているようだ。


しかも、助太刀に入ってくれた姫野さんまで殺そうとしているらしい。


俺が捕まってしまった所為で、姫野さんまでピンチになっている。


と、考えていた瞬間、姫野さんに向けて一閃の雷が発射された。


助けに来てくれた姫野さんを殺させるような真似をさせるか!


と、俺の中で考えが浮かんでからは、俺の体は自然に動いていた。






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私は反射的に目を瞑った。


そして、金姫様の攻撃が私に直撃していないことに気付いた。


はずしたのかと、そろ~りと目を開けてみると、八条くんが私をかばってくれていた。


「くっ...姫野さん、怪我ないですか...?」


八条くんは、特大の雷を一人で全て受けてなお、私を心配してくれていた。


「は、八条くん大丈夫!?」


「はは、これくらいどってことねえっすよ...うっ!」


八条くんは痛さにのたうちまわっている。


どうやら、体中が痺れているようだ。


「くふふ...たかがこれくらいの電圧でこれほどダメージを受けるとは! もろいですねぇ。殺す必要すらあったかどうか...」


私の能力は戦闘向きではない。


蝙蝠を召喚し、周りの地形などを偵察させたりする能力なので、ぶっちゃけこんな霧に覆われたせまい空間では無力に等しい。


「八条くん...私が時間を稼ぐので、サラに今すぐこの状況を伝えに言ってもらえませんか?」


「いや、大丈夫です。俺が姫野さんを守って、この野郎をぶっ殺します」


「そんなことできないですよ...相手はあの姫ですよ...?」


「いや、俺とアイツの能力は相性がいいんですよ。後は、練習してたアレができるかどうか...」


「...アレ?」


私は八条くんの不気味な笑みに賭けてみることにした。






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あのときにサラ先輩が言っていたこと。


「まあ、電気を通さなかったり、耐熱性があったり、強度はダイアモンド以上であったりと、と鉄ではないみたいだけれどもね」


俺がの能力は、物質を硬化させることだ。


しかし、物質の性質がそのまま反映されて硬化されるのではなく、凄い硬度を持った、まったく別の物質がその物質を隙間なく埋め尽くす、というような感覚らしい。


ということは、その能力で鎧のようにして、肌に別の物質を「貼る」ことができれば、電気を通さないから電撃攻撃は効かないのではないか。


息子を硬くするようなイメージで。姫野さんのセミヌードを考えながら、体の表面に鎧を貼り付けるようなイメージ。


イメージは大事だと代永ウイングも言っていた。


よし。いける。俺は、硬化のイメージを集中しながら鎧を創り上げた。







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「凄い...」


私は、八条くんの才能に息を飲んだ。


遺伝子の力が使えるようになった初日であそこまで能力を使いこなすことができるなんて。


私は才能がなかったので、3ヶ月訓練して、ようやく蝙蝠1匹を自在に操れるようになったのだ。


「少し、嫉妬しちゃいますわね...でもそれ以上に...」


私を守る、と言ってくれ、電撃から身を庇ってくれた八条くんを少しだけ異性として好きになってしまったかもしれないな。


「んじゃあ、今度は俺の反撃開始だな」


ニヒルな笑みを浮かべた八条くんが、金姫様に向き直した。





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