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神力甲冑ラゴウセン  作者: 椎名千都
2/5

第一話

 「ジジィ!! 来たぞォ、ジジィ!!」

 「やかましいッ!! 今何時だとおもっとるんじゃッ!!」

 突然聞こえてきた怒鳴りあいのせいで目が覚めてしまった。前時代的なアナログ式の時計の針はちょうど深夜12時をさしている。誰だこんな時間に騒ぐのは。

 「乗せてやるから明日来いっていったのはそっちじゃねーか!!」

 「だからと言って日付が変わると同時に来るやつがあるか、たわけ!!」

 ボクはため息をつくと、ベッドから身を起こし喧嘩を鎮めるべく2人のもとへむかった。

 「じーちゃん、大和、何でこんな時間に騒いでるの。近所迷惑でしょ」

 騒いでいたのはボクの予想していたとおりの2人だった。1人は白髪で小太りの老人。ふつうの人に比べてかなり鼻が大きく、たくさんの吹き出物があり、お世辞にも整った顔立ちとは言い難い。ボクの祖父、水前寺猿彦すいぜんじ さるひこだ。

 もう1人は身長190センチ近くはあろうかという大男。程よく引き締まった筋肉質な体、堀の深い顔に鋭い眼光、口元から覗く野性的な八重歯。とどめと言わんばかりに、短めに切られた髪は真っ赤に染められている。もはや裏社会の人にしか見えないが、彼はボクの友人、火威大和ひおどし やまと。決して借金の取立人とかではない。そっちのほうがしっくりくる風貌だけど。

 そんな彼はボクのほうを見ると、まるで小学生のように目を輝かせて言った。

 「おう、タケル! ロボットに乗りにきたぜ!」



 「そんなに焦らずともよかろうに……」

 ボク達はじいちゃんについて地下への階段を下りていた。じいちゃんはいわゆる発明家というやつで、現役時代は主に「神力じんりき」について研究していたらしい。

 神力とは人の精神力からエネルギーを取り出す、いわゆる超能力のことで、物を動かしたり、浮かしたり、燃やしたりできる。じいちゃんの専門は機械関係だったから、神力を取り出すための装置、神器じんきの開発に関わってたんだって。もしかしたら、じいちゃんかなりすごいのかも。

 そんなこんなで実用化に至った神力は、社会のありようを大きく変えた。神力そのものはその性質とか、個人の資質の差とかで直接的にエネルギーとして使うことはしにくかったから、もっぱら巨大なものを神力で支えたり、機械の細かい動きを複雑な操作でなく、思考することで行う、みたいに補助的な役割で使われている。そのおかげで以前では実現不可能と思われていたいろんなものが生まれた。空を飛び、水上を走る自動車とか、考えるだけで操作できるコンピューターとか。

 そんな神力の研究はこれから、という時にじいちゃんはなぜか引退。その理由が『戦闘用二足歩行ロボットを作りたかった』だって。いまだに平和憲法を維持してる国で巨大兵器なんか公に作れないもんね……。 そしてじいちゃんは地下でこっそりとロボットを作成。もちろんバレたら即逮捕。ボクも手伝ったから共犯なんだけど。そして完成したところで問題発生。パイロットがいない。最初に完成した機体は炎系の神力を使うんだけど、じいちゃんはほとんど神力を使えないし、ボクの神力は火を操るのに適していない。そこでボクの幼馴染の大和に白羽の矢が立った。彼は神力で炎を操ることができ、さらに恵まれた体格、身体能力とこの機体の特性にぴったりだった。

 「まだかァジジィィィィ!!」

 「大人しく待っとけ小童ァ!!」

 ......なんでこんな仲悪いんだこの2人。じいちゃんは大和をパイロットにすることを最後まで渋った。大和が小さいころから喧嘩してたもんね……。2人ともロボットバカで、短気で、口が悪くて、共通点なら腐るほどあるのに。同族嫌悪ってやつかな。

 

 

 「………」

 「こいつが第一号じゃ。素晴らしいできじゃろ?」

 「どうかな、大和。かっこいいでしょ」

 燃え盛る炎のような赤を基調としたカラーリングに、鎧武者を思わせる力強い意匠。装甲はかなり分厚く、多少の衝撃では傷一つつきそうにない。背面には巨大なバーニアがついていて、ものすごい加速ができそうだ。全体のサイズに比べて相当大きめの拳は、この機体の特性を象徴するものであり、最大の武器でもある。

 「……すげえ……けどよ」

 「なに?」

 「なんでこんなちっちぇんだ!? スーパーロボットじゃねぇのか!!」

 機体の全高はたったの3メートルほどしかなかった。

  

 

 

 

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