表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

九個目 合流及び勉強タイム、ですよ


Side ルシア


……流石にコレはダメですね。回復アイテムも無いですし、何より完全に死んでますから。


「もうほっとけよルシアー 多分それただのエロ親父だぞ?」

「あっさりと殺しておいて何を言いますか、このおバカさんは……どんな人でもコレはやり過ぎです」

「PLK領域内だったら自重するけどなぁ、どうせ一時間もしたら生き返るって」

「……死ななくても復活するまで痛いんですよ?激痛が一時間も続くんですから…やり過ぎです」

「はいはい。んで手、大丈夫か?」

「平気です。急に引かれて驚いただけですから」

「…本当にか?」

「NPCでも無い限り私に傷を与えられる人間なんてそうはいませんよ、分かってるでしょう?」

「万が一が合ったら嫌だと言ってるだろ」

「私より、イチコの方が危ないですよ?」

「……位置は大体掴んでるぜ」

「間に合うと保証できますか?」

「うむ……街ごと斬っていいなら必ず」

「却下、斬らせる位なら早くイチコを迎えに行きましょう…この店主が生き返るまでは暇ですし」

「…いや、わざわざ行かなくともこっちに向かって来てるようだ」

「エグゼスもちょうどこちら向きに進んで来てますね。覚えのあるマテリアルの反応がすぐそこまで」

「反応の識別、便利だな……その生命礼賛のスキル」

「あなたの鎖ほどではありませんよ、ただ相手が分かるだけですから」


さて、迎えに行くのが5分を超えてしまいましたけれど…イチコは許してくれるでしょうか?

植物アイテムの精製はHPを少し削ることを覗けば割と戦闘向きのマテリアルですから襲われてても平気だとは思いますが…つい議論に熱くなってしまうのは私の悪い癖ですね。次は気をつけましょう。


「次が起こらない事を気をつけようぜ?」

「…人の心を唐突に読まないで下さい」

「だって顔に書いてるし」


書いてません、出てません、そんな分かりやすい表情はしておりません。


「冗談だろ?」


だから読むんじゃありません!


Side End



み、皆さん…こん、こんにちはです…!ただいま全力疾走中のイチコですーーーーー!!


「だーかーらーーー!早すぎるってさっきから言ってますですよーー!!」

「お姉ちゃんが遅いんだってばーー!!」

「待ってくださーーーい!!」


全力疾走するダンボール…とてもシュールな光景になっていることでしょう、今の私は…

あんな速度で走られたら私じゃとても追いつけないのですよ……と、ととと!?


「よし、前方にルシア見っけ!!」

「ぎにゃーーー!!」

「あぁっ!なに寝転んでるのさ、早く行かないとまた見失うよー!」

「む、無茶言わないで下さい~!!」


足を挫いて、りょ、両膝から地面に激突したのですよ……地味な痛みが足先から上がって来て…くああぁ…とてもじゃないですが立てるような状態では………あぅあぅあぅ。

あ、エグゼスさん戻ってきました…恥ずかしいですが肩を貸してもらうしか


「あーーーー、もう!ちょっと我慢してよね!」

「ハイ…?」

「背負うから」

「えっ、エグゼスさん?」

「不満は後で聞くから、全力疾走ーーー!!」

「ちょっと、まっ…人間ジェットコースターですかぁーーーーー!!!」



Side シド


なんかあっちの方……凄い土煙上がってるな。


「ルシア、エグゼスの反応は?」

「凄い速さで向かって来てますね……恐らくあの土煙の発生源かと」

「あの煙が出だした途端こっちの反応も格段に速度が上がったんだが」

「……何が言いたいんですか?」

「…言わずとも分かるだろ?」

「…えぇ、恐らく」


「何があったか分からんが一緒にいるよな、多分」

「どこかで合流していたようですね」

「この調子なら接触まで後30秒って所だな」

「…こっちに気がついているのでしょうか?」

「さぁ?前に出れば嫌でも気付くだろ」

「…私が止めますね」

「不本意だが頼む、多分俺だとアイツついでとばかりに蹴ってくるだろうし」

「……いい加減仲良くしたらどうです?」

「仲良く腕試ししててこうなってるんだがなぁ」

「難儀な性格ですね、二人とも」


大丈夫だとは思うが、一応俺もマテリアル使っておくか。不意に蹴られたらあぶねーし


「イーーーーヤぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

「お姉ちゃんうるさいってば!!」

「速い、怖い、痛い!助けてーーーー!!」

「一分ぐらい我慢してよね!」

「せめてロープか何かで固定してください~~ーーー!?」

「都合よく持って無かったからね、そんなもの!!」

「運び屋ですよね!!?」

「あぁ、ぶあっつい強化ゴムでハムみたいになりたいなら使うけど?」

「見た目より安全第一ですよーー!!」


「やっぱそうみたいだな、ルシア」

「……近所迷惑ですね、この喧騒にも負けないとは」

「止めれるか?」

「エグゼスは確実に、イチコは不確定ですがきっと大丈夫でしょう」

「まぁ、失敗したら俺が止めるわ」


Side End


流れる光景とぶつかってくる風圧が相まってどのくらいのスピードが出てるか良く分かりません!!ですが、ひ、膝が限界を訴えて来ているのですよ!!


「降ろしてーーーーですよ~~~!!」

「あ、ルシア受け止めてくれるんだ?」

「なんですってー!?」

「ほら、前に立ったから」

「危ない、危ないですよーー!!」


わ、ホントに目前に!?流石に撥ねられてしまうのでは…人間相手に撥ねるって言うのは言い過ぎかもしれないですが、相当な威力がありそうですよ!!?ぁーー、ぶつk


「イチコ、心配せずとも私の盾を破れる物はそうそうないですよ」


凛とした声が疾走する爆音の中で届く、そして


「んじゃ、いつも通りよろしくね!」

「任せなさい。我が手に止めきれぬものなし、です」


宣言に続きルシアの広げる両手に光の粒が集まり始め、同時に反比例するように急激に視界を闇が覆い始める。そして目も眩むほどとなった両手の光は迫り来る二人に向け、障壁として展開した。


「【柔崩障壁】」

「んっ…と」

「にゃーーーーっ!!?」


眩いばかりの障壁に触れた部分がクッションのような質感を持って受け止められたのが分かる。……エグゼス「だけ」。

一方のイチコは光の障壁をすり抜けてそのままルシアの真後ろまで弾丸のように飛んでいき、念のためにと待機していたシドに受け止められてようやく止まる事が出来た。


「……あら、すり抜けましたか」

「看板に偽りありだな。止め切れてねーじゃん」

「ルシア姉~、眩しいからコレ消してー?」

「失礼、すぐに」



  * * *


「意外だなぁ 弱い弱いとは言ってたがまさかモンスターすら倒したこと無いのか?」

「森の中で…あんなでっかいもの倒せる訳無いじゃないですか!!しかも群れでやってくるんですよ?」

「マテリアルのレベルが高かったので少しは狩りをしているものかと。イチコ、本当にすいませんでした」

「謝られるような事でも有りませんけど…むぅ」

「と言うか、この死体なんで片付けてないのさ…」

「文句があるなら自分で奥にけり転がしてろ」

「シド……?」

「喜ンデ奥ニ運バセテイタダキマス」

「双剣士さん弱いですねぇ」

「うっせぇ!」


はい…場所を移して先程の店長(?)が転がるお店の中で休んでます。

双剣士さんに受け止められて何とか止まりましたが、転んだ両足が未だに治りきってないので治療と休憩をかねて血の香る店内でティータイムです。正直……全く気は休まらないのですが。


「何故、こんなところで…お茶会をしてるのでしょうか」

「シドがやりすぎましたから、復活後にその旨の謝罪と…ボスと呼ばれる存在が居るようですから、この際そちらから融通して頂こうかと。そのための暇潰しですよ」

「……アレ、生き返るのですか。ズッタズタですけど」

「ベタベタくっついて復活しますよ?当たり前じゃないですか、普通の・・・オンラインゲームなんですから」

「…想像するだけでグロイのですよ」


「エグゼスー?」

「なにさ?」

「街のワールドの半分…と言うかこっち側ラウ・ハーツに今ボスなんて呼べる人間居たか?」

「さぁ…僕もルシアの所に来てからは此処の裏には潜れなくなったし」

「…ちっ、役立たずめ」

「ひどい!?自分も知らないくせに」

「少なくとも此処はただの悪童の溜まり場でまとめきれるような頭は居なかった、ぐらいは知ってるぞ」

「じゃぁ、前にボスが居たけどその人は?」

「そうだなぁ、ルシアにのされて他のワールドに入り浸ってると思うが」

「……アレ勝てないって」

「取得条件が難しいからツエェの何のって…俺も結構レベル上げないと斬れなかったし」

「僕ら割とゲーム内屈指の猛者のはずなのにね…」

「相性だよ、相性…」


「黄昏てますね、男性陣」

「放っておきなさい。ボスとやらが来るまでは問題ありません」

「了解なのですよ~」

「ついでですから、この間に少しだけお勉強しましょうか?」

「い、今此処でですか!?」

「基本事項を何点か、押さえておくだけですよ」

「あぅあぅあぅ」

「脱出用の移動法も教えておかないとまた逸れたら危ないですし」

「はいですよ~…」


お勉強は嫌いなのですよ…わざわざゲーム内で細かい事を覚えなくても良いのでは無いでしょうか?だって、だってゲームですよ?取り説も見ずに楽しむのがゲームじゃないですか!


「さて、それでは説明を開始します」

「……」

「……返事は?」

「ハイッ!よろしくお願いいたします」

「よろしい、では基本としてワールドMAPからいきましょう。エグゼス、其処の壁の地図を」

「はいさー」

「ありがとうございます。イチコ、この地図を見てください」

「……なんです?ただ盤面にビーダマが転がっているようにしか…しかも一個真っ二つになってますし」

「このビーダマ一つ一つがワールドです」

「森のワールドの地形、丸くないですよね?それに、世界間移動する時にこんなビーダマは見えませんでしたが……」

「正規の移動手段はトンネル内を飛ばされますからね、夢が見れるような綺麗な風景だったでしょう?」

「…トンネル?」

「えぇ、先程の船も実はトンネル内を流されてこちらに着いただけですよ」

「つまり、トンネルを通らなければ」

「えぇ違う風景になりますよ。ビーダマでは分かりにくいでしょうから、惑星みたいなものだと考えてください」


さっそく良く分からないこと言われたのですよ?星とか宇宙空間のスペースがサーバーの無駄遣いにならないのでしょうか。


「今はいくつものワールドがあると認識していただければ結構です」

「はい~…」

「では次はマテリアルの簡略説明に」

「簡略です…?」

「まだ運営側からの調整が入ることが有りますから、私達にも厳密なルールが把握できていないんです」

「このゲーム、かなりグダグダですか?もしかして」

「…コレばかりは運営側の責任では無いといいますか、まとめて説明しますが一部では現実とゲームがシンクロします」

「ゲームのやりすぎでいつでもお花畑な人になるということです?」

「ソレはただのゲーム中毒者です。説明を始めます、強制的に」

「真顔で突っ込まれると哀しいのですよ…?」

「まずマテリアルのレベル、成長ではなく解放レベルですから最初から実は上限が決まっています」

「どんなに頑張っても誰が使っても、同じモノなら同じ最高出力ですか?」

「はい、誰が使おうとも同じマテリアルであれば最高威力は同じです」

「……同じ種類のスキルなら一緒です?」

「同じスキルであれば所持しているマテリアルの大きさ次第です。当然大きい方が秘めている力は強大ですよ」

「ほわー…暑いわ重いわ邪魔だなーぐらいにしか思っていませんでしたけど、このグローブもそこそこ大きいマテリアルですね。皆さん指輪とかイヤリングでしたし」

「ソレはソレは・・・」


「ルシアさんは何がマテリアルですか?」

「余り言いふらすものではありませんが……この服が一つですね」

「……シスター服ですか?」

「えぇ、他の二つは内緒ですけど」

「服・・・でっかいですねぇ・・・」

「続けますよ?」

「あ、はいです~」

「このレベルは1~5まであります。レベルが上がるにつれてスキルの威力と制御力が上がっていき、ついでに少しづつ特典が付きます」

「…特典ですか?」

「そう、特典です。此処に来る時に貴方はいずれかのマテリアルが2レベルあるか聞きましたね?」

「船の上ですね、2レベルの特典が何か関係するのですか?」

「関係、と言うより特典そのものが移動手段になるんです」

「はい…?」

「形状は定かではありませんがとにかく飛ぶものですね」

「よ、よく分からないのですよ?」

「帰るときに、何でもいいから移動手段を頭の中で浮かべなさい。ちゃんとマテリアルを使いながら、ね」

「むむぅ…」

「そして3レベルでスキル固有の必殺技、4レベルで自分の領域の作成、5レベルで領域内限定の範囲必殺技が使えるようになります」

「必ず殺すと書いて必殺!」

「レベル3がいいですか?それとも5?」

「失礼しましたっ!先にお勧め下さいルシア様」

「良い態度です。此処までは普通のゲーム枠のお話でした」

「まるで普通じゃないような言い方をしてますが…」


「本来ならギルド外の人に気軽にばらすコトではありませんが、面白そうなので貴女には教えてあげましょう」

「傍迷惑な認定を受けていませんか!?」


イイ笑顔を維持したままルシアさんが放つ一言を聞くまいと両手で耳を塞ぎます。


「実は5よりなお上の解放レベルもあります」

「…それは二次職みたいなものなのでは?」


構えた割には…たいしたこと無いコトでした!!


「いえいえ、二次は二次でちゃんとマテリアルが変化することでなれますよ?」

「はい…?今日はなんだかコレばっかりですよ~…」

「5レベルに達して更にマテリアルを所定の場所、ジョブ変更の場所に行けばまた新しいマテリアルに作り変えてもらえます」

「あ、俺も既に二つ作り変えてるぜ。二回変えたのは現サムライソウルだけだが」

「ぇー・・・と」

「スキルのオーバーリミット、大きさの制限を無視した力を発揮できるようになる反則技ですよ」

「と言うか強すぎて使いづらいだろうな、普通」

「普段から使っているのは…海の姫ぐらいでしたか」

「あそこはソレぐらいしないと追いつかないだろ、情勢的に」

「海の姫ですか…?」

「割と有名だと思いましたが、イチコはまだ知りませんか。では今は勉強を優先にしておきましょうか」

「このゲームを長く続けるのならいつか使うことになりますよ。レベル5を超えた二つの段階を」

「伏線っぽく張らなくていいですから説明してくださいよ~…なんですか、それ」

「うふふ、使ってみてのお楽しみです」

「とにかく強い、反則、無茶、チート、オレTUEEEE(笑)だぜ!」

「滅茶苦茶ダメそうな気がしますね、双剣士さんの説明だと」

「シドの場合…そんなもの使わなくとも既にプレイヤーの頂点に居ますからね。顔はあまり知られていないようですが」

「いえ、知られててもあんまり強いと思われないと思いますですよ…」

「ンだとゴルァ!!」

「恋人に頭の上がらない男の子ですし~?」

「ぐぬっ…!」


「ちょっと僕紅茶作ってくるね、このおじさん起きたら僕の名前出して黙らせておいていいよー?」

「インスタントでいいですから早く戻って来て下さいね」

「りょうかーい!」

「さて、次は何を説明しましょうか?余りこういうことはなれていないので順序がおかしいかもしれませんが」

「あ、シンクロって結局なんです?」

「レベル5以上またはPLK領域内においてPLプレイヤーPCキャラクターの精神と肉体が同調することをさします」

「つまり…」

「つまり、ゲーム内で怪我をすると現実でも程度は落ちますが怪我をします。死亡すれば…昏睡状態になりえます」

「強い代わりに代償も高いのがスキルのオーバーリミットの効果ってコトだな」

「絶対に使いません、使えませんよそんなの自殺行為じゃないですか!!?」

「そうもいえない状況が来る。そんなこともあるんですよ、イチコ」

「俺も一回ソレ使って戦ったしな」


ルシアさんから、目を伏せて何かを悼むように静かに告げられました。

たかだかゲームで…そんなコトをする必要があることって…なんですか?



Side エグゼス


「気付いてないだろうなぁ、お姉ちゃん」


一人インスタント紅茶を4人分用意しなが呟く。


「シンクロしてる時に能力が一番強くなるって事は」


シドの分だけ出涸らしで入れてやり、勝手に借りた厨房を後にして。


「現実の身体がそのスキルを使えるってコトだって」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ