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十一個目 能ある鷹は爪を隠す、ですよ


大暴れする三人の中に突っ込んでいけ、と言われましても・・・

それ、遠まわしに死ねって言ってますよね?

ルシアさんはまともな人だと思っていましたが・・・やはり双剣士さん達と同類なのでしょうか。

えー、もう外では銃撃戦が始まってます・・・でれるわけないですけど。


正直なところ既に店の中を探索し終わったのか少年と双剣士さんも入り口のカウンターまで戻ってきていますし・・・押し付けちゃダメですか?

ほら、少年もそんな怪しげなブレスレット触ってないで助けてください。



「外がなんだか騒がしいが何の騒ぎだ?」

「えぇ、どうやらギルドの方でお使い兎とメイズが鉢合わせたようで、

 イチコが自ら止めに行ってくれるそうですよ」

「あぁ、盗んだバイクで走り出せるくらいの若者がサバゲーでも始めたのかと思えば、あいつ等か・・・勇気あるな、お嬢」

「どう考えても双剣士さんたちのほうが向いてますですよ!?」

「あー、向き不向きで言えば俺なら楽勝だし確かに三人まとめてでも負けはせんがメンドイ」

「本当に危ないと思ったら流石に助けます、この私が責任を持ってね」

「それでも無理です!私一人ではガンマンさんとすら渡り合えるような力なんて出せませんよ!

 ・・・しかも三人だなんて」

「んー、そうは思うが・・・まぁルシアの決定だしな。レベル5の三人相手だがファイト」

「しかもこの銃撃戦、どう考えても滅茶苦茶攻撃型スキルじゃないですか!!」

「後方支援とか間接的な攻撃しか無さそうなお嬢にはきついだろうなぁ」

「ハイエルフであれば弓矢の超射撃もあるでしょうけど」

「私ハーフです・・・」

「「グッドラック!」」


「少年、少年は私の味方ですよね!?」

「ゴメン、僕ウサギさんたちとはちょっと会いたくないかな・・・」

「まさかの裏切りですかっ!」


少年の青ざめた顔を見て意気消沈していると後ろから肩を叩かれました。

振り返った先には双剣士さんが、真面目な表情で何処からか取り出したキセルを咥えて・・・

真面目な顔のほうが怖く感じるのは何ででしょうね?


「途中までは俺が手伝ってやる、無力化とかは自分で頑張れってことで」

「はい?」

「本当はルシアがお嬢を指名した理由も大体理解できるしな。さっきのキャッチの時に」

「理由・・・実力を見るってことなのでは」

「分かって言ってるならあの銃撃のど真ん中に叩き込んでやる」

「分かりません、分かってません!」

「・・ぼ、オレはさっぱりなんだけど?」

「イチコが此処を出たら教えてあげますよ」


「行くぞお嬢、はよ止めんとまた街のワールドが割れちまうかもしれん」

「待って、ナンデスカ、またってーー!?」


首根っこ掴まれて無理やり店の外に引きずられて・・・戦場に、戦場に立たせないで下さい!

というか割れたんですか、ワールド。さっきの半分になってたワールドマップのあれですか?

喧嘩で割れるって脆すぎませんか!


「いや、オレが制御ミスっちゃってさー。メンゴメンゴ」

「私に謝られても!?って言うか双剣士さんが割ったんですか!」

「初めてのLv0解放の時にズバッと」

「・・・ばーか!!」


改めて言います、この人馬鹿ですか。


「はいはい、さっさとどっちか止めるぞ」



  * * *



「我らに弾丸など」「かすりもせん」

「まだ曲芸撃ちもマジックショットも使ってないのに余裕ぶっこくとはいい度胸だよ」

「そのようなまやかしでは」「我らは捕らえきれない」

「いい気になってな、うさちゃん!!」


罵りあいが低レベルで続く中、三人のマテリアルによる流れ弾が徐々に町の風景を変え始めていた。

・メイズ【ガンズナイト レベル5】

・ウサ1【ラビットマスタリー レベル5】&【ブリザード レベル3】

・ウサ2【ラビットマスタリー レベル5】&【ボルケイノ レベル3】

街の迷惑を考えずに銃弾を撃ち込み続けるメイズはもとより、その街の壁を踏み台にして方向転換、また高高度への高速移動をしながら距離を詰めるウサたちの冷気と熱気が強度的に不安のある街を痛めつけていく。・・・あくまで本人達には一切躊躇の様子は見られないが・・

全力掃射でなんとか接近を防ぐメイズと縦横無尽に駆け回りつつ徐々に近寄るウサ達はどちらも無駄に体力だけを奪われて膠着状態に入り始めている。

メイズはメイズで銃弾の細かい制御にまで気が回らず、ウサ達はウサ達で命中精度の上がる至近距離までつめる事が出来ず・・・一進一退。


一向に埒が明かない状況下でしばらくにらみ合いを続けた後、大きく後ろに跳ねて距離を取り、必殺技にて渾身の一撃を決めようとウサ二人が仕掛けた。


「「ルシアたちが来る前に終わらせる」」

「近寄れもしないでよく言うよ、ホント」

「街を思い」「全力では無かった」

「ソレ典型的なヤラレ役じゃない?」

「それは漫画の」「読みすぎ」

「ま、否定はしないけどね。こっちももうすこし力入れて行くよ」

「どっちも手加減をしていたか」「最初から全力でよかったかもしれない」

「わざわざ全力を出すことも無いかなって思ったんだけどね」


「「レベル3→5シフト」」

「領域発動、【ブロークン・トリガー】」


スキルの宣言と共に、呼吸を合わせた二人から膨大な熱気と冷気が渦巻き始め、ガンマンを中心として街の姿が戦場へと書き換えられていく。


「どちらも全力で無かったのなら」「続けるのは無意味」

「じゃぁ大人しく撃たれてよ?」

「否、渾身の一撃を見せてやる」「そちらも全力で来るといい」

「はぁ、その自信もろとも撃ち抜いて上げるよ。うさちゃん」


  * * *


店の中・居残り組――


「イチコ姉ちゃんに任せるなんて無理じゃない?結局シドが全部片付けそうだけど」

「それなんですがね。

 私の推測が正しければ、ですが・・・きっとあの場の誰にも負けませんよ、イチコは」

「・・・攻撃手段がアイテム投げつけるだけなのに?」

「そうですね、その能力だけなら不意をうってもシドには敵いません」


自分で持ち上げながら躊躇いなく切り捨てる様子に呆気にとられた。

いきなり言っている事が違いすぎるんじゃないのかと…疑問の視線を向けてみる。

そんな視線を受けてルシアは指先を軽く振ってまだ続きがあると示す。


「まず先程の会話からですが、彼女は直接戦闘力が皆無といいました」

「んー、さっき後方支援型って自分でも言ってたし普通じゃない?」

「いえ、少し特殊な条件でもあるのでしょうけれど・・・直接と限定しましたから。

 つまり間接攻撃なら強力な何かがあるということでしょう」

「・・・勘違いだったらどうするのさ、ルシア姉」

「そもそも本当に戦闘力が無い事なんてまず無いんですよ。

 一つは戦闘用のスキルがあるはずですから」

「珍しいサポート特化とかじゃ・・・」

「自分の身も守れない酷なスキルしかない子ならば。

 エルフだとしてもGMが『街』の外に配置するわけがありません。

 生まれがNPCモンスターのいない『街』であるならともかく、

 凶悪な原住モンスターが生息する『森』のワールドではスキルの成長を望めるわけが無いのですから」

「やけに自信満々だね・・・」

「直接GMに聞いた事がありますから」

「・・・は?」


ふふふと天使のような、ソレで居て悪意を感じさせる笑顔を浮かべて紅茶に口をつける。


「気にしないで下さい。では二点目、私の防壁はともかくシドに勢いよく突撃して無事でした」

「受け止められただけで・・・何がおかしいのさ?」

「私もですが・・・本来シドもレベル1は常時発動ですからね。

 私は歩く防弾チョッキ、シドにいたっては全身刃物のはずですよ」

「ぁー・・・そうだっけ?」

「・・・まぁ貴方は普通に殴りあっていますからね」

「僕の『固定化』のマテリアルもパッシヴ(常時)だから正直効いた事無いし。だから知らなかったというか」

「うちの男達はどうしてこうも興味が無いことは覚えが悪いんでしょうね」

「ほっといてよ・・・」

「何にせよ、私のスキルまで無効化した可能性がありますから戻ってきたら色々試さないといけませんね?」

「なんでそんな楽しそうなのさ、実は悪人だったら如何すんの?」

「あら、貴方には悪人に見えますか?」

「……自分で言っといてなんだけど全然。

 アレが演技だったらここラウ・ハーツ叩き割っても良いね」

「優しいというか、抜けているというか、ですしね。イチコは大丈夫ですよ」


話は終わりだといわんばかりに椅子をガラスのあちら側、街道に向ける。

そしてもう一度カップに口を付けると、目を細めて最後に一言ポツリと。


「それに、シドが直接試すでしょうし」


  * * *


両者の間で火花が散る中、もう一度戦場に変化が現れた。

片や渦巻く熱気・冷気がそれぞれの前で球体状に集中し始め、

片や目前に大量の銃身を備えた兵器の塊が足元から浮上する。


スキルの影響下にある戦場をぴりぴりとした揃って睨みつけながら完全な球状へ変化したソレをシンクロした動きでガンマンに向け、勢いよく蹴りぬく。

「凍てつけ!」「燃え尽きろ!」「「【エレメントスフィア】!!」」


それに対しガンマンも浮上した射撃要塞に自分のマテリアルである拳銃を接続し、睨み合いの内にチャージした力を全て注ぎ込み、トリガーを力強く弾く。

「見せてあげるよ、L5の必殺・・・【チェイス・バースト】!!」


幾度も交差しながら迫る氷とマグマの塊を、追って放たれた大量の弾丸が包み込むように接触しようとしたその刹那。

両者の間に人影が走りこんだ。


「・・・【マジンズ・ハンド】!」


その人影―――――背中にイチコを背負い現れたシドが、剣気を溢れさせながら両腕から先を幾本もの魔刃と化して三人の必殺技をまとめて受け止め、無理やりに押し留める。


「よーし、其処までー。そろそろルシアがぶちきれるぞ」

「あーーーー!!相棒そこ邪魔!!!」

「シド、邪魔せずともその一撃で」「我らの勝利が決まる所だった!!」

「なにぃっ!まだ全然僕の必殺技はこんなものじゃないっての、シドが出たから止めただけだし!」

「小娘には見せていない」「我らもコレで終わりでは無い!」


いさかいあう両者の間で疲れきった顔を隠さない――隠そうにも両手で必殺技を押し留めたままだが

――シドが背中に声をかける。


「・・・バカどもは放っておいて。イチコ、試しにそこの止まってる弾丸、触ってみろ」

「・・・ちなみに先程の推論が外れていた場合はどうなるのでしょうか?」

「安心しろ、それだったらそもそも俺の|この手の間(スキルの攻性防壁)を抜けれねぇよ。その時は後ろに引っ込んでろ」

「・・・当たっていたら?」

「そのスキル無効化でここら一体完全に沈黙させろ」

「要約しますと~?」

「あの三人をぶっ飛ばせ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうか外れていますように、ですよ」


恐る恐ると言った体でギャリギャリとシドの防壁(気迫?)に押し留められている弾丸に手を伸ばすと、その弾丸が指先に触れるか否かの辺りで 消 失 した。


「あ・・・」

「おー、予想通り。でも範囲の狭さは予想以下、かね」

「ホントに・・・ですか」

「半信半疑だったが、見立ては正解だなぁ」

「ちょっと外れていて欲しかったかもですよ・・・」

「珍しいじゃん。スキル無効化スキルなら」

「触れないと消せないって危険すぎませんか?」

「うむ、かなり危険だな。それにスキルじゃなくてそこら辺の煉瓦拾って投げられたら危ないな~」

「暢気に言いますね・・・」


「このヘタレ犬!」「泣き虫犬!」

「ウルサイ!相棒其処退いて、こいつら一回死なせるから!!」


一発だけとは言え無効化をかけられたにも関わらず、

まだやかましく喚いている三人に向けてソレを上回る怒声を上げる。


「やかましいわバカどもがッ!!ルシアのストレス、バカみてーに溜めやがってストレス発散に付き合う俺の身にもなれ!正直死ぬぞ、リアル側で」

「「「・・・ストレス解消用サンドバック?」」」

「違うわッ!!何処からそんな発想が出た」

「苦労してるんだね、サンドバッ・・・相棒」

「ルシア、意外と」「危ない人なのか?」

「サンドバックじゃねぇッつの!」


シドは哀れむ視線を向ける相棒とスキルを拮抗させながらもぼそぼそと呟く二人を交互に睨みつけて牽制する。


「・・・え、恋人には暴力的なんですか?」

「お前まで言うか!」

「いえ、もうすこし大人しい人だと思ってましたから・・・恋人なら殴れるんですね~?」

「人殺してねぇだけで結構つえぇよ、アイツは・・・と言うか俺もそんなに殴られたりしねぇから」

「でも・・・ストレス発散って」

「・・・・・・・・・」

「どうしました~?」

「・・・・・・・・・・・・・・アイツのストレス発散は・・・三大欲求に向けられる、と言えば分かるか」

「はぁ、三大欲求。 食欲・睡眠欲・性欲ですか?」

「・・・かなり食って体力つけて、よく寝るために寝所に引きずり込まれて・・・・・・だぞ」

「えー、ご愁傷様です?」


顔を赤くしながら青くするシドに言葉だけの慰めをかけてマテリアルを眺める。

気を取り直してその話題は流す。精神衛生上のためにも。


「ぇーっと・・・コレ、必殺技も使えるんですよね?」

「あー、うむ。レベル4はあるの確認してるしなんかあるだろ、どういうのかは知らんが」

「このスキル無効化ってどっちの効果だと思います?」

「どっちって?って言うか何でもいいから早くしろ、腕が疲れてきた」

「ハーブクリエイトか、ソイルチャージか。むむむ・・・」

「土だろ土。ほら、スキルを養分として吸って土に還れ!!みたいな?」

「んぅぅ・・・じゃぁそっちの必殺技で!」

「保証はせんがな」

「怖いこといわないで下さいよ!?」


マテリアルについて書かれたウィンドウをポップさせながら詳細を流し読みしていきます。

一度名前を見てからじゃないと使えないって不便ですよね・・・

必殺技は発声しないと使えないからなんですけど。

こんな手間をかけるんですから必殺技がもっと強力なスキル無効化でありますように・・・と願います、切に・・・えぇ、切に!

スキル開放中の今、更にマテリアルに力と願掛けを込めて・・・・


「ソイルチャージ レベル3【ヘルズ・ガーデン】発動、ですよ!」


スキル名の発声が響き、マテリアルが光り輝―――――――――――――――かず、ぷすんと音を立てて終わる。

え、ちょっと!なんです、これ!不良品ですかー!?


「双剣士さん、何も起きません!!」

「ヘタレが・・・」

「あぅあぅぁぁぁ・・・」

「ったく、ちょっと手助けしてやるからしっかり意識持ってろよ?」

「手助け・・・って、はい!?」

「ち ょ っ と 失敗して街が瓦礫に変わるかも知れんが其処はソレだ!」

「全然良くないです!?」

「自力で使えない人間に文句は言わさん!」

「普通言いますよ!」

「【マテリアルクロス レベル3】 マテリアル解放バースト

「無視しないで下さい!?」

「じつは俺のマテリアルは人のマテリアルをも強制解放できるのだーかっこわらいー」

「何も笑えませんから!」

「名前からして大方特殊能力もちの植物園だろ、スキル無効化あったらいいなーっと」

「行き当たりばったり過ぎませんか!?」

「失敗したらその時はその時だろ?」

「せめて成功すると信じてください!」

「へい、【ヘルズ・ガーデン】強制発動ー」

「心の準備ぐらいさせてください!?」

「多分・・・HPを大量に消費するんだろうなぁ。ソレかスキルポイントって言うかなんかのエネルギー?」

「はい?」


喋りながらシドさんの体から何かがマテリアルに流れ込んでくる気配が・・・シドさんの邪気?


「邪気なんて燃料にならんぞ」

「(びくっ)」

「俺のSPとHP流し込んでるだけだ。まぁ・・・そう言うことなんでもし倒れたら後しっかりなー」

「へ?」

「ほら、HP全部流し込んだら倒れるだろ?」

「倒れるまで注がないで下さい!?」

「もし必要量が多かったら困るだろう」

「む、むむむ・・・!」

「ほれ、ちゃんと技名は自分で叫べ。吸い取る所から発動し始めてはいるがまだ出力が弱い」

「ぅー・・・双剣士さんが倒れたら、私が的になるのでは」

「スキル無効化掛かったらどっちにしろ俺も吹っ飛ぶっての」

「・・・・・・外れてたら後で一発殴りますですよー」

「当てられるなら好きにすればいいが」

「分かりました~、ならどさくさに紛れて襲われたとルシアさんに伝えておきますね~」

「てめっ!?」


顔を真っ青にして受け止めている攻撃を軋ませるシド。

その姿を見ながら自分のマテリアルにイメージを集中する・・・

ソイル・チャージ、私の力、土にエネルギーを溜め込む様を、其処から生え出でる生命力を。


「【ヘルズ・ガーデン】発動!」



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