【2】悪魔の恋人役にスカウトされました!?しかも脚本つきで。 〜“お見合い阻止ミッション”が同時進行している地上です〜
そこは、“KAWAII”が詰まった原宿のカフェ。
おもちゃ箱みたいなポップでキュートな店内――
だが、そのテーブル席に座る組み合わせが問題だった。
黒髪をツインテールにした若い女性が、
ふわふわのココアラテを吹き出しそうになる。
「あんた……お父さんいたんだ……!
悪魔なのに……!」
その前に座るのは、
漆黒のスーツにギラギラの金色アクセサリーをじゃらつかせた、
濃いイタリアン顔の男。
項垂れたまま、静かに答える。
「そうであります……。
今はモナコに住んでいて、回顧録を書いています……」
「ふーん。優雅な暮らしじゃん♪
それで、何で急にまた
『恋人に会わせろ』なんて言ってきたの?」
「そ、それが……ッ!!」
ルチアーノが、
深紅のシルクのハンカチを噛む。
「俺様が地獄の王になって、百年もすると、
“見合いをしろ!”攻撃が始まって……。
俺様が拒否すること数百年……。
ですが去年、親戚の悪魔が婚姻して……。
その結婚式に出席したお父様が……
感動の余り、とうとう地獄に乗り込んで来て……!!
なんと……
ロクシー先生と俺様のツーショット画像を、
見てしまって!」
ロクシーが、
ごくんとイチゴタルトを飲み込む。
「別に、見られたからって良いじゃない。
あんたと私のツーショ見て、
勘違いする人間……悪魔なんて、いないでしょ?
それこそ、お父さんと娘じゃーん!」
アハハと笑い飛ばし、
続けてオープンサンドをオーダーするロクシーを、
ルチアーノがギロッと睨む。
「お父様は、千年以上生きている悪魔!
つまり!
ロクシー先生のような、
若くてかわいい女の子とのツーショット画像を見ると、
千年前の価値観が発動するのです!」
「つまり?」
ロクシーが、
面倒くさそうに訊く。
「うら若き美しい女性が、男性と並んで写真に写る!
肖像画でも良し!
イコール、
“恋人”なんですッ!
お父様の時代では!」
「ハイハイ」
ロクシーが、
オープンサンドにかじりつく。
「それで?
あんたは違うって答えたんでしょ?
私を一万ドルで呼び出した理由は、何よ?」
「そ、それで〜……
あのー……
何と言いますか〜……」
モゴモゴと、言葉を濁すルチアーノ。
ロクシーは、
面倒くさそうにスマホのタイマーを確認する。
「国会答弁みたいな喋りしてると、
1時間なんて、あっという間だよ?
私はそれでも良いけど」
そのロクシーの視線には、
“ドル”を計算する鋭さが光っていた。
すると――
ルチアーノが、椅子から飛び降りた。
そして床に正座し、
土下座寸前まで頭を下げて叫ぶ。
「ロクシー先生に、
俺様の恋人になって貰い――
お父様からのお見合いを断る脚本を、
書いて下さいッ!!」
セレニス州。
イレイナの荘厳な館。
そこは正に、“女王の城”の佇まい。
重圧と静寂が支配し、
空気そのものが、息を潜めている。
リビングでは、
リオの話を聞き終えたイレイナが、
優雅に紅茶のカップをソーサーへ戻した。
「良いわよ。やってあげる。
料金は100万ドル。
私のスイスの口座に振り込んで。
どんな令嬢が来ようと諦める、
“完璧な化身”を作ってあげるわ。
日取りが決まったら教えて。……そうね。
その前に、その令嬢や父親が、
リオのところに来る可能性もある。
そうしたら、すぐに連絡して。
その場しのぎなら、
私のまじないで簡単に解決できるわ」
アーチボルトが、
頬を紅潮させ、リオの肩を抱いた。
「良かったな、リオ!
これで万事解決じゃ!
もし、100万ドルが厳しかったら、わしが――」
すると突然、
リオが頭を抱えたまま叫んだ。
「“完璧な化身”って何!?
え、オバケ!?
怖い! 嫌だよ!! 無理!!」
次の瞬間、
リビング中のクッションが、
リオへ直撃した。
「……いたっ……
何すんだよ……イレイナ……」
イレイナが、
絶対零度の視線でリオを射抜く。
「あんたね……!
素直なのは良いけど、馬鹿なの!?
私が世界最強魔女でも、
人間を作れると思う!?
あんたが依頼するなら、
その令嬢にも負けない令嬢を、
操っても良いわよ!?
でもね――
政治家を舐めないことね!」
イレイナは、
ビシッとリオを指差す。
「政治家はね、
“負け”を許さない生き物なのよ。
あんたに恋人がいて、
自分の娘との見合いを断ろうとしたら――
その恋人の落ち度を、徹底的に探すわよ!?
過去をほじくり返し、
SNSの写真や呟きだって、
一言一句、見落とさない!
そんな“完璧な令嬢”なんて、存在しないの!
そして、操られた令嬢は、
人生が破綻するかもしれない……!
だったら、人間を生け贄にすることなく、
私が“完璧な化身”を作った方が、
早くて確実なのよ!」
リオは、
飛んできたクッションをギュッと抱きしめ、
ソファに寝転がると、
目を閉じて、小さく漏らす。
「……わ、分かった……
理屈は分かったよ……。
でも……
俺、その“完璧な化身”の横で……
恋人の振りができる自信が、無い……」
イレイナは、素っ気なく返した。
「じゃあ、帰って。
契約は不成立。
話は終わり」
そう言って立ち上がり、
ドレスを翻すイレイナに向かって、
今度はアーチボルトが叫んだ。
「イレイナ……!
待ってくれ!
あんたにしか、この件は解決できん!
あんたの話を聞いて、
わしは閃いた!」
イレイナが、
ピタリと立ち止まる。
「何を?」
アーチボルトは、
両手で握りこぶしを作る。
「完璧な令嬢など、存在しない!
だからこそ――
“イレイナがなればいい!”
あんたが……
イレイナが、魔術で
“完璧な令嬢”になってくれ!
料金は倍払う!
リオ!
中身がイレイナならば、
生理的に問題無いじゃろう!?」
リオが、
パチリと目を開けた。
「中身がイレイナ……
うん! 大丈夫!!」
イレイナは、
振り返り、二人を見据えて言い放った。
「………馬鹿なの?」
同じ頃、
ハリウッドにいるアンジュのスマホが鳴った。
画面を見て、
すぐに電話に出るアンジュ。
「ロクシー、久しぶり!」
アンジュの明るい声とは真逆の、
焦ったロクシーの声が響く。
「アンジュちゃん……!
お願いがあるの!
ルシアンと、連絡取れない!?」
「ルシアン……?
今、一緒におるぞ!」
アンジュの答えに、
ホッと息を吐いたロクシーは、
叫ぶように言った。
「クリスマスに、
一緒に行ったヴィラに来て!
ルシアンと一緒に!」
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【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜
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