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大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


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19/23

【19】舞踏会、開幕。主役は息子か、親友か。〜拍手の向いた先で選別は始まり、魔女は微笑む〜

それから――

舞踏会までの二日間。


ルチアーノの父親からは、

電話の一本も――

来なかった。


それが、逆に、不気味だった。


来るなら、来る。

来ないなら、何かを、仕込んでいる。

沈黙は、準備の合図だ。


ルチアーノは、ルシアンと並んで、黙々とピアノの練習を続けた。


指の位置。

呼吸。

間。


そして、誰に言われるでもなく、

ペントハウス内での移動は、すべてワルツのステップになっていた。


三拍子。

一、二、三。


時折、ほんの一瞬だけ、リズムが乱れる。


だが、すぐに、戻る。


――直せるうちは、

大丈夫だ。


ロクシーもまた、黙々と脚本を書き続けていた。


ルチアーノのための、いくつもの到達点。

何通りもの分岐。


削っては書き直し、

並べては、消す。


同じように、

ルシアンの初恋成就の脚本も、

静かに、更新され続けていた。





そんな中――

ただ一人、アンジュだけは、

モナコを、目一杯楽しんでいた。


もちろん、ルシアンは護衛として、常にアンジュに付き添っている。


グルメ。

街歩き。

歴史ある石畳。


地中海の光を受けながら、

二人で歩く、古い街並み。


それだけで、ルシアンにとっては、至上の喜びだった。


空気の温度。

アンジュの歩調。

そして、笑顔。


すべてが、今この瞬間にしか、存在しない。


その間――

ルチアーノのピアノレッスンは、

ルシアンの分身が担当していた。


正確で、無駄がなく、容赦もない。


正に、“ルシアン”以外の何者でもない。


ルチアーノは、それを当然のように受け入れ、

練習に励んでいた。





アンジュが、不意に立ち止まって、振り返る。


「ルシアンよ!」


その声に、即座に応える。


「はい」


呼ばれる。

応える。


ただ、それだけ。


だが、その一瞬の輝きは、

誰にも奪えない。


そして、その先に待つものを、

ルシアンは、まだ、知らない。


そうして――

舞踏会の日が、やって来た。





ルチアーノの父親――

ウルティモ伯爵の宮殿は、荘厳で、そして過剰だった。


ロココ調を基調としているはずだが、

壁という壁、柱という柱が、金色の主張をやめない。


美ではない。

力を誇示するための、装飾。


それが、この宮殿の本質だった。


アンジュとルシアンは、

各国の王侯貴族やセレブリティに混ざり、

舞踏会の始まりを、静かに待っていた。


ルシアンは、黒の燕尾服。

無駄のない仕立てが、立ち姿を一層引き締めている。


アンジュは、

婚約指輪のブルーダイヤモンドに合わせた、

淡いパステルブルーのイブニングドレス。


派手さは、ない。

だが、光を受けるたび、色合いが、微かに変わる。


一方――

ルチアーノとロクシーは、会場の袖に控えていた。


ルチアーノも、黒の燕尾服。

だが、その視線は、すでに、場全体を捉えている。


ロクシーは、

婚約指輪のピンクダイヤモンドに合わせた、

上品なピンクのイブニングドレス。


甘さは抑えられ、

線は、計算され尽くしていた。


やがて、会場奥の一段高い場所に、

ウルティモ伯爵が姿を現す。


鋭い眼光。

だが、口元には、作られた微笑。


威厳に満ちた声が、

ホール全体に響き渡る。


「これより、

我が息子ルチアーノと、その婚約者のお披露目の舞踏会の幕を、

開けさせていただきます。

心ゆくまで、お楽しみください。

さあ、音楽を!」


オーケストラが、華やかに鳴り響く。


その音に乗って、

ルチアーノとロクシーが、フロアへと現れた。


万雷の拍手。


――だが。


次の瞬間、

会場の照明が、意図的に切り替わった。


スポットライトが、

ルチアーノとロクシーから外れ、

別の一点を、照らし出す。


ルシアンとアンジュ。


二人の立つ場所に、

強い光が落ちた。


ざわめきが、

一気に広がる。


再び、ウルティモ伯爵の声。


「本日は、

ルチアーノの親友、ルシアン殿と、

その婚約者アンジュ殿も、お招きしております。

紳士、淑女の皆さま。

どうぞ、この二人にも、祝福を!」


拍手。


先ほどよりも、

明らかに大きく、長い拍手。


その音が、

誰が“主役として見られているか”を、雄弁に物語っていた。


視線が、一斉に移る。


ルチアーノとロクシーから、

ルシアンとアンジュへ。


ルチアーノは、即座に理解した。


祝いではない。

選別。

そして――

ルシアンとアンジュの動揺を、引き起こすための演出。


「ロクシー先生……」


小さく、だが、確かな声。


「この展開は……」


ロクシーは、可憐な微笑を崩さぬまま、答える。


「こう来たか、って感じね」


視線は、すでに、全体を捉えている。


「でも、筋は通ってる。

舞台が、そっちに振られただけ」


そして、一言。


「ルシアンなら、乗り切る」


それは、希望ではない。

確信だった。


「で、でも……!」


ルチアーノが、息を詰める。


「ルシアンは……

お父様に気づかれぬ範囲の、恩寵しか……!」


ロクシーは、ぴたりと、ルチアーノに視線を向けた。


「グダグダ言わない」


低く、鋭い声。


「今は、あんたが、地獄の王でしょ」


一歩、間を詰める。


「私の脚本通りに、動きなさい」


「……イエッサー」


好奇心。

羨望。

妬み。


無数の視線を浴びても、

ルシアンは、眉一つ動かさない。


アンジュも、変わらぬ微笑を保っている。


その二人を、

少し離れた位置から、

一人の若い令嬢が、見つめていた。


二十歳ほどの年齢。

美貌と、圧倒的な気品。


だが、その視線は、人物ではなく、

場全体の構図を捉えている。


光。

距離。

立ち位置。


舞踏会そのものを、

一枚の“画”として、観測していた。


そうして、視線は、アンジュに着地する。


鈴の音のような声で、

彼女は、静かに呟いた。


「……面白くなってきたわね」


その令嬢こそ――

リオの婚約者に化けた、

地球最強魔女イレイナだった。

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