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大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ろうとしたら、大天使に婚約者が爆誕!〜  作者: 久茉莉himari


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17/21

【17】舞踏会、三日前のモナコなのに前哨戦は始まっている。 〜王が名を偽り、勝手にやって来た夜〜

そして――

舞踏会、三日前。


ルチアーノ、ロクシー、ルシアン、アンジュの四人は、

モナコに到着していた。


宿泊先は、モナコでも屈指の格式を誇るホテル。

最上階のペントハウス。


もちろん、偶然ではない。

――ルチアーノの父親が、いつ探りを入れて来ても構わないように。


到着後、アンジュとロクシーは、

ドレスの最終確認を兼ねて試着を繰り返し、

時に歓声を上げ、時に真剣な顔で意見を交わした。


それは、どこから見ても、

「舞踏会前の、仲の良い女性たちの時間」だった。


やがて、おやつを済ませると、

アンジュは、何事もなかったかのようにソファに腰を下ろし、

あっけなく、昼寝に入った。


その寝顔は、無防備で、穏やかで――

まるで、これから戦場に立つとは、思えない。


ルシアンが、寝室にアンジュを運び、

ベッドに寝かせ、戻って来る。


そして。


その瞬間を待っていたかのように、

ロクシーの空気が、切り替わる。


つい数分前まで、女子友と笑っていた面影は消え、

そこにいるのは――

冷静に盤面を見下ろす、“軍師”だった。


条件反射のように、

ルチアーノの背筋が、ぴんと伸びる。


ロクシーは、何も言わずリモコンを手に取り、

壁一面の特大モニターを起動させた。


映し出されたのは、

緑色に発光する、巨大な建造物の立体図。


「いい?」


ロクシーの声は、低く、淡々としている。


「これが、ルチアーノの父親の宮殿。

正式な見取り図。

隠し部屋、抜け道、使用人の休憩室――

全部、現行仕様よ」


赤いポインターが、迷いなく図面の上を滑る。


「そして、ここが舞踏会の会場」


ルチアーノの顔から、一気に血の気が引いた。


「ロ、ロクシー先生……!

ど、どうやって……

お父様の宮殿の見取り図を……!?」


その問いに、ロクシーは、

ほんの少しだけ、口角を上げる。


「あんたの親父ね。

どうやら、セキュリティ意識が、千年前で止まってるみたい」


指先が、軽く、モニターを叩く。


「管理がガバガバ。

正面突破じゃないわ。

“正規アクセス”で、15秒」


「……ヒィ……!!」


ルチアーノが、声にならない悲鳴を漏らす。


だが、それを咎める者は、いなかった。


その代わり――

ルシアンが、至極真面目な声音で口を開く。


「だが、

我々は、舞踏会に出席するだけだろう?

なぜ、ここまでの見取り図が、必要なのだ?」


その問いに、ロクシーは、

視線を画面から外さないまま、小さく笑った。


「決まってるでしょ」


一瞬の間。


「あの親父――

予定通り、必ずキレる」


ルチアーノの喉が、鳴る。


「アンジュちゃんと、ルシアンのダンスを、見た瞬間にね」


画面上で、赤いポインターが、

舞踏会場から、別の区画へと移動する。


「元・地獄の王よ?

面子を潰されたら、何を仕掛けてくるか、分からない」


淡々と、しかし、断定的に。


「例えば……

アンジュちゃんを“試す”ために、隔離するとか。

あるいは、ルシアンの欠点を炙り出すために、舞台裏で、何かを起こすとか」


その言葉に、

ルシアンの瞳が、戦士の色を帯びた。


「……なるほど」


短く、しかし、即断。


「理にかなっているな」


ロクシーは、その反応を待っていたかのように頷く。


「でしょ?

だから、用心じゃない。

“前提”なの」


リモコンを置き、二人を振り返る。


「いい?

10分、時間をあげる。

この見取り図、頭に叩き込んで」


そして、容赦なく続ける。


「その後――

ルチアーノは、ピアノの最終練習」


次の瞬間。


「記憶した」


ルシアンが、何の感慨もなく言った。


ルチアーノは、必死にモニターを睨みつける。


――舞踏会。

――父親。

――アンジュ。

――宮殿。


すべてが、一つの線で、繋がり始めていた。


そして、ロクシーは、確信している。


この舞踏会は、もう、“始まっている”のだと。





それから――

ルチアーノとルシアンは、普段と変わらず、

ピアノのレッスンに励んだ。


指の運び。

呼吸。

間。


ルシアンの隣で弾くことで、

ルチアーノの演奏は、否応なく、

「正確さ」だけでなく、「質」までも求められる。


そして、ディナーの後。


ルシアンが、アンジュのために、

食後のロイヤルミルクティーを用意していると――

すすっと、ルチアーノが寄って来た。


周囲を、一度だけ確認し、

声を落として言う。


「ルシアン……

そんなの、ホテルの従業員にやらせろよ。

今のうちに、話がある」


ルシアンは、ミルクの温度を確かめながら、

一切、手を止めずに答えた。


「駄目だ」


即答。


「アンジュさまのお好みの甘さは、

人間では再現出来ない」


それは、冗談でも、誇張でもない。


――本気で、

そう思っている。


ルチアーノは、一瞬だけ言葉を失い、

次の瞬間、子供のようにジタバタし始めた。


「んもー……!!

そういう話じゃねぇんだよ!!

お前の初恋成就の脚本も、

ちゃんと進行してるんだぞ!?」


ルシアンは、なおも手を止めずに、問い返す。


「……そうなのか?」


真剣そのものだった。


「そうなのッ!

だ・か・ら♪

ロクシー先生から、お前に伝言がある!」


「なんだ?」


ちょうど、その時、ロイヤルミルクティーが完成する。


ルシアンは、カップをトレイに乗せ、静かに歩き出した。


その後ろを、ルチアーノが慌てて付いて行く。


バルコニーに出ると――

アンジュは、モナコの夜景を眺めていた。


宝石を散りばめたような街の灯り。

だが、それすら、背景に過ぎない。


「アンジュさま。

ロイヤルミルクティーをお持ちしました」


ルシアンの静かな声に、アンジュが振り返る。


夜景よりも、なお鮮やかな微笑みを浮かべ、


「うむ! ご苦労!」


そう言って、バルコニーのソファに腰を下ろした。


――その時だった。


コツン。


控えめだが、はっきりとしたノックの音。


続いて、扉の向こうから、整えられた声が響く。


「ウルティモ伯爵のおなりです」


その名と同時に、ペントハウスの扉が開かれた。


――ウルティモ伯爵。


それは、ルチアーノの父親が、モナコで名乗る、“仮の名前”。


だが、それは、単なる偽名ではない。


それは――

“王”が、人間社会に降りる時だけ、使う名。


立場を隠すためではなく、

力を抑えるための、名だった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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