表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』  作者: 黒砂 無糖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/21

食べるのか?石だぞ?



 しかし、魔族の国か、考えたくないな……



 なんでまた、人間と魔族との争いの真っ只中の、よりによって、魔族の国に転移なんかして来たんだよ。



 この際、100歩譲って転移はいいよ。


 でも、せめて飛ばすなら人間の国だろ?



「チェンジで!!」



 俺は考えがぐるぐるした後、投げやりな気持ちになって、心の底から、転移先の変更を望んで叫んでしまった。


 隣でニコニコと話をしていたピコラは、ビクッとして、その場でぴょこんと飛び跳ねた。


「ああ、驚かせたか?すまんな」


 とりあえず、ピコラの頭を、ポンと撫でた。



 ——せめて、人間の国が良かったんだ。


 人生、踏んだり蹴ったりとは、正にこの事じゃないだろうか?


 

「おじさん、チェンジって、何を替えるつもりなの?とりあえず。この国の話だけど聞く?」


 ピコラは、自分の頭の上の俺の手を掴んで固定したまま、こちらをチラッと見た。


 ——まだ撫でて欲しいのか?


「ああ、教えてくれるか?」


 ピコラの要望に応えて、引き続き話をする間、頭を撫でてやった。


「ここは、魔王の統治する魔族の国 『ドゥンクラー』だよ」


 当然、聞いた事すらない国だ。


「侵略中って言ったけど、侵略したいのは魔王だけだ。皆、本当は戦いを望んでないんだよ」


 ピコラは、ただでさえ垂れた耳を、ペタンと伏せて、辛く悲しそうな顔をしている。


「当然だよな、争いなんか望まないよな」


 もしかしたら、ピコラは争いで、大切な人が傷付いたのかもしれない。

 

知り合ったばかりの子供だし、これ以上争いの事は、掘り下げて聞がない方がいいな。


 俺は、ピコラの頭をポンポンと弾ませて、


「……ピコラは、ウサギの獣人なのか?」


 俺は話を変えるために、見たままわかる事だけど、敢えてピコラの種族を尋ねてみた。


「そうだよ!ボクは、トビ族の諜報役なんだ。なんたって耳がいい。しかも、賢いって言われてるんだよ!」


 ピコラは話が変わると、元気よく、そして、勢いよく自分の種族と立場を教えてくれた。



 ピコラ……おバカさんかな?



「諜報役って、それ、言っていいのか?」


 マジか、普通、秘密だよな?


 あっさり喋っているけど、コイツ俺が敵だったら、どうするつもりなんだ。



「あ……しまった。今のナシ」


 だよな?やっぱりダメだよな。



 全く、危なっかしいな……



「これからは気をつけるんだぞ?」


 うっかり自分で秘密を話してしまい、ピコラは失敗に凹み落ち込んだ。


 仕方なく、ふわふわな頭を撫でてやった。


「そう言えばおじさん、なんでここに来たの?ここは僕たち、トビ族のキャンプ地だよ?」


 ピコラの素朴な質問に、俺はどう答えれば良いのか分からなくて、思わず天を仰いだ。



 ——むしろ、俺が知りたいよ



「何でだろうな?俺にも分からないんだ。気がついたらこっちにいて、とりあえず、ひたすら歩いていたら、ここを見つけたんだよ」



 よくわからないまま『日が上る東が良い』となんとなく歩いたまでだ。



「俺はここで、ピコラに会えて助かったよ」


 ここは、綺麗な水源の水辺も近い、少しの間なら、なんとか凌げる。


「俺がここにたどり着けたのは、かなり運が良かったかもしれない」


 水があるからトビ族は、この場所をキャンプ地に選んだのだろうな。


「そっか、いきなり知らないところに来たなら、おじさんも大変なんだね?」


 ピコラから同情されているようだ。


 ピコラは耳をハタハタしながら、うんうんと、首を縦に振っている。


「ピコラも大変そうだったけど、ここには、何しにきたんだ?」


 飲まず食わずで走って、行倒れになるなんて、余程の事情があったのだろう。


 大切な用事があったのではないのか?


「ボク?ボクは……逃げて来たんだ……」


 ピコラは、何かを思い出したのか、両耳を押さえてプルプル震え出した。



 しまった、厄介ごとだったか?!



「そ、そうか、ここにいて大丈夫なのか?」


 まさか……ヤバい追っ手でも来るのか?


 残念ながら、俺は戦えないぞ?


「ここまで来れば大丈夫だよ。このキャンプ地は人間の国に近いから『魔王の支配』は届きにくいんだ」


 ——魔王の支配?


 俺の頭の中で「フハハハハ」と笑いながら、大きな魔王がうさぎ達を虐げる姿を想像した。


 ——違う、そうじゃない。


 正直、怖い。だからといって、根掘り葉掘り聞くのは、残酷だし、逃げて来た子供に無理をさせるのは違うよな。


「ここが、お前達のキャンプ地なら、少しの間ここを借りてもいいか?俺には目的も、行くあてもないんだ」


 俺の言葉に、ピコラの耳が反応して、きゅっと持ち上がり、目を大きく見開くと


「ここにいていいよ!それと、ボクもおじさんと一緒にいていい?」


 ピコラは全身から期待と喜びを溢れ出し、キラキラした眼差しで、見つめられてしまった。


 ——不安だったんだな。


 俺は大人だし、子供は縋りたくもなるよな


「もちろん構わないよ。俺はこの世界を知らないし、ピコラがいてくれるなら助かるよ」


 どうせ俺はひとりじゃ何もわからない。丁度良いから、この世界の事を、ピコラにいろいろ教えて貰わなきゃな。


「本当?いやったぁ!!」


 ピコラは、一緒にいられる事が嬉しいのか、ぴょんぴょんと俺の周りを飛び跳ねている。


 跳ね方が……ご機嫌なウサギだ。


 共にいるだけで喜ばれるなんて、なんだかくすぐったい気持ちになる。



「そうだ、ピコラ、お腹空かないか?食材があれば、何かメシ作るぞ?」


 俺は、ご機嫌なピコラを、もっと喜ばせてやりたくなったから、料理を作ってやりたい。



「いいの?おじさん料理人なんだよね?うわぁ鞄に何かあるかな……」


 ピコラは嬉しくて興奮しているのか、鼻をヒクヒクさせて鞄を漁っている。


 まだ空は明るいけど、今は何時なんだろう?もうそろそろ、陽が暮れるのだろうか?


 こちらは陽が長いのか、それとも転移時に、時間がズレたのか分からないな。



 俺が転移してから、かなり時間が過ぎたはずなのに、外はまだ明るい。



「ピコラ、まだ、陽が暮れないなら、森の中の湖で水を汲みたいんだ。今から行けるかな?」


 料理をするには、水が必要だ。ピコラに森の中に、水汲みに行きたい事を相談したら



「ん?おじさん、中央の小屋に、水瓶があったのは見なかったの?こっちだよ」


 俺はピコラに連れられ、先程一度覗いた、空の水瓶のある小屋までついて行った。



「ピコラ、水、入ってないよ?」


 水がない事はしっていたけど、念のため、再び水瓶の中を覗き込んで見ても、中はやっぱり空っぽだ。


「え?ああ、抜いてあったのか」


 ピコラは、棚板に置いてあった、柄杓を手にして水瓶に近付くと、柄杓の底で——


 コンコンコン


 三度、水瓶の淵を叩くと、水瓶の中はキラッと光り、瞬きをする間に、水瓶の中は綺麗な水で一杯になった。


「……凄いな」


 魔法、だよな?初めて見た。



 俺は、こちらに来てから初めて見た不思議体験に感動していた。


 ——ウサ耳?それは可愛いから気にしない。


 ある意味、不思議ではあるけれど。



「そう言えば、おじさんの名前って何?ボク、聞いてなかったよね?」


 俺はピコラに名前を聞かれて、自分の名を言ってなかったことに、今更気付いた




「俺は、倉持遊人だよ。よろしくなピコラ」


 握手をするために、俺は右手を差し出した。



 その時ふと、俺は店の開店日を思い出した。




『俺は、倉持遊人だ、

 ——これからよろしくな「ピッコラ」』


 と、自分の店に挨拶をしたんだよな。




 かつての光景を思い出していたら、不意に手をきゅっと握られ、ピコラと挨拶の途中だったので、小さなその手を握り返した。



「よろしくな!ユージン!」


 ピコラを見ると、左手に、いつのまにか小さな鍋が握られている。



 ——どこかに、置いてあったのか?



「ああ、よろしく。ところでピコラ、手に持っている鍋は、何処にしまってあったんだ?」


 小屋の中をくるりと見渡すけど、棚は勿論、物を収納してある場所はないはずだ。



「これ?空間魔法の鞄だよ。そっか、ユージンは知らないんだね」


 どうやら俺は、おじさん呼びから、ユージンに昇格したらしい


 ピコラは、肩から斜めにかけている鞄を、ポンポンと叩いてみせた。


 「特別なつくり方の、魔法の鞄なのか?だとしたら値段はすごく高そうだな」


 空間魔法の鞄。ゲームのインベントリみたいな物だろうか?


 ——面白そうだな。


「どうかな?、作り方は知らないし、安くはないけど、外に出る時は、中の大きさは違うけど、大人はみんな持ってるよ」


 ピコラは得意げに、大人だと言っているが、大人はわざわざ、自分が大人だとは言わないぞ。


 魔法世界は、知らない物が沢山ありそうだ。


「日用品なのか?なら。俺もいつか使えるのかな?だとしたら、楽しみが増えるな」



 いつか、魔法も使えるのだろうか?


 でも、俺の能力は『準備中』だしな


 魔法——俺も、いつか使ってみたいな



「余分な鞄があれば良かったけど、ボクも今は一個しかないから、また今度貸してあげるね」


 ピコラは、俺と話をしながら、さっきからずっと、鞄の中をゴソゴソと何かを探している。


 ——あの鞄、中はどうなってるんだ?


考えても想像しかできないな。


 鞄の中がめちゃくちゃ気になるけど、大人だから今は我慢するか。


「空間魔法なんて、本当にあるんだな。俺は、魔法関係は、一切何もしらないぞ?」


 この世界の魔法は、どんな感じなんだ?


「そなの?また今度、色々教えてあげる!」


 ピコラは下を向いて、得意げに返事をしながら、複数の鞄のポケットを、ひとつずつ順番に漁っている。


 次のポケットに手を入れると、ピコラの耳の根本が、ぴょこんと立ち上がった。



「あった!ヴィアジみっけ!あー、カロティは無いや。残念」



 ピコラはいそいそと、鞄から取り出した物を、ひとつひとつ俺の手に渡してきた。



 渡された物は、ずしっと、中々の重量感だ。



「ユージン、はい、コレで何か作って!!」



 俺の手に、重なって積まれた物を見る。



「ピコラ、石は——俺は食った事ないぞ」



 それは、俺の拳より一回りほど大きい



 ——石ころだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ