表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
集まる。そして始まる。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/44

お客様は神様?んなわけあるか


「おい! 本当にここなのか? 何もないじゃないか!」

「そんなはずはないです。前に来た時は、確かにここだったはず……」



 結界の外で誰かが揉めている。


 ——あいつ、この間の……シエルボだ。


 きっと、シュピンネのカードを奪い取ったやつは、シエルボと一緒にいる魔族だろう。



「ピコラ、厄介そうな魔族が来た。念のためジェリコの拠点に移動して」


 俺の言葉にサッと反応したピコラは、エリソンを抱きしめ、リコラと共にガバル先導で避難していった。



「あいつらうるさいわね。なんなの?」


 ソワ様は、仕事明けで疲れているのでイライラしている。


「最近の魔人族は、礼儀も知らんのか?」


 フィアールも、迷惑そうにカチカチと歯を鳴らして威嚇している。


「あの知性の無さ……魔王派ですかね?」


 俺の横にいるコルージャも、冷たい視線を向けている。



「奴らは直接招かれてないから、何も見えてないんだろうな」


 あの騒ぎ方から見るに、間違いなく不正で来店した魔族だろう。



「ユージン、なんの騒ぎですか?」


 騒ぎを聞きつけて、家からアルプとフリーゲンが出てきた。


「ああ、厄介な魔族が来た。多分、紹介カードをシュピンネから盗んだ奴だ」


 アルプが警戒しながら入り口を伺い見た時、



「おい!!いい加減ゲートを開けろ!この方はかなりの上客だぞ!ここは飲食店じゃないのか!!」


 シエルボはガタガタと結界付きのゲートを掴んで、力尽くで壊そうと揺らしている。


「うるさい……全く持って迷惑な」


 このまま無視しちゃダメか?


「ここにうまいもんがあると聞いた!魔王様の片腕の私が特別に味見してやろう!私が気に入ったなら、魔王様に献上しよう!!」


 マジか、シエルボより上から目線の魔族かよ


 シエルボの相方も、性格的には同じような、上から目線のタイプだ。


「なんか、また、面倒な奴が増えたな……」


 見るからに厄介な客は、お客様のご迷惑になるからお断りしたい。


 ——正直、面倒だ。


「接客業で『お客様は神様です』なんて、最初に言い出した奴、誰だよ……」


 そもそも、自分本位な迷惑客を許すと、店には何ひとつ良いことがない。


「あれは、マジで客が言う言葉じゃないよな。客が神とか、んな訳あるか」


 騒ぎ立てる二人に、俺は軽くイラついた。


 どう始末するかな? と迷っていたら


「あいつ等は……」


 騒いでいる二人を見て、アルプとフリーゲンの目つきが険しいものに変わっていた。


「アルプ、知り合いなのか?」


 明らかに、会いたくない相手みたいだ。


「知り合いというか、二人とも広義的にはマハト様の部下にはなりますね」


 アルプは冷めた言い方をした。


「広義的にはって、どういうことだ?」


 正式な部下ではないのか?


「あの男達は、昔から現魔王の腰巾着。要するに魔王派閥だったのです。立場的にはマハト様が第一補佐官ですが」


 アルプは俺と話しながらも、奴等をじっと睨みつけたままだ。


「もしかして、かなり仲悪い?」


 フリーゲンも、さっきから口内に炎がチラチラしている。


 ——今にもドラゴンブレスを吐きそうだな


「かなり? 物凄く悪いですね。仲良くするなど考えたくもない」


 アルプは静かな物言いだけど、言っていることは辛辣だ。


「しかし、困りましたね。私では立場的に追い払うのが難しい」


 アルプは奥歯をギリギリと鳴らしている。


「シュピンネは、追い返してたぞ?」


 実はあれも不味かったのか?


「シュピンネが追い返したのは、シエルボです。奴は下っ端なので問題ありません」


 なるほど、腰巾着の腰巾着って訳か。


「セルヴォは、立場的にはマハト様と同格です。実力は足元にも及びませんが、媚びだけで地位を上げ魔王に重用されてます」


 アルプはフゥと息を吐いた。


「アイツラ、モヤシテ、ツブス」


 口元から炎が、溢れて興奮するフリーゲンをアルプはなだめている。


「フリーゲン。奴等を消したいのは山々ですが、今我々が出張ると、ユージンとマハト様に迷惑がかかってしまいますよ」


 アルプは立場的に動きにくいようだ。


 二人はあの魔族の前には、顔を出さない方がいいだろう。


「アルプ、フリーゲン、お前達も隠れてろ」


 あいつらは食事に来たんだ。いきなり襲われることはないだろう。


「ですが……大丈夫ですか?」


 アルプとフリーゲンが心配そうに俺を見た。


「まあ、なんとかするよ」


 とりあえず、面倒だしさっさと済ませるか。


「くれぐれも、人間だとバレないようにお気を付け下さい」


 やっぱり、今は魔族と人間が争っているから、マズイか?


「バレるかな?」


 耳さえ見られなければ平気か?


「そうですね……ちょっと、失礼」


 アルプがスティックを振りながら、俺に魔法をかけた。


「耳に幻影をかけました。アイツ等は単純なので、これならバレないはずです」


 自分の耳を触ってみたら、シュピンネみたいに尖っている。


「ユージン、部屋から見ていますので、ご安心ください」

「ユージン、マモル」


 緊急時は助けに来ると、アルプとフリーゲンが部屋に戻って行った。


「我々はこのままここにいるよ」


 さすがにひとりは危ないと、フィアールとソワと共にコルージャも残ってくれた。



 俺は、結界の外に出て、騒いでいる魔族と対峙することにした。



「申し訳ありません、ご来店頂きましたが今日は定休日です。お引き取り願えますか?」


 とりあえず、面倒だから一旦帰ってくれ……


 なんて甘い考えで声を掛けてみたが、



「何?貴様、客に帰れというのか?!」


 シエルボはキイキイと声を荒らげ、いきなり掴み掛かろうとしてきた。


「待て、貴様、魔族のくせに、まさか俺が誰だかわかってないのか?」


 セルヴォは、信じられないとでもいいたげに目を見開き俺を凝視した。


 セルヴォはシエルボとは違い、見た目だけは整っている。


「はあ、田舎者で、顔を覚えるのが苦手なんですわ。とりあえず、今日は帰ってくれないか?」


 全くの嘘だが、納得してくれないか?


「この辺なら仕方がない。許してやろう。私はセルヴォ。魔王様の片腕だ。田舎者でも、噂くらいは聞いた事があるだろう?」


 自信満々なほど、滑稽に感じる……


「噂……なら」


 残念ながら、俺は悪口しか聞いてない。


「そうだろう。私は有名なんだよ。お前の店の料理が上手かったら、私の口利きで流行らせてやろう」


 鼻高々なところ悪いが、こっちはお前と関わりたくないんだよ


「さっきもお伝えしましたが、今日は材料が入荷してないので、店はお休みですよ」


 だから、さっさと帰ってくれないか?


「はっ、お前の都合はどうでもいい、料理の腕を見てやるから早く何か作れ」


 セルヴォはこちらの話を全く聞いてない。


 ——いやな感じだ。


 これ帰らないよな? 店の中には絶対入れたくないな……


「申し訳ありません。本当に材料がないので、何も作れません」


 俺は一芝居打つ事にした。


「今から仕入れに行くので、本当に何もないのです。何も出来ないのは心苦しいので、私の昼食でよろしければ、お持ちください」


 こんな奴に渡したくはないが、鞄から、定期的に大量に作っているおにぎりとBLTサンドイッチをひとつずつ取り出し、セルヴォに渡した。


「なんだこれは?冷たいではないか!この店は冷えたものを出すというのか?!」


 渋々、シエルボにも渡したが、早々に文句を言ってきた。


「サンドイッチは冷たい物ですよ」


 相手にするのも面倒くさいな……


「なんだその言い方は!!俺は客だぞ!なんとかするのが店員の勤めだろう」


 シエルボ……うるさい。


 セルヴォの方がまだマシだな。



「お客様は神様とか言った奴、馬鹿だろ」


 俺は思わず、ぼそっ毒を吐いた。


 店側が言うならまだしも、アレは間違っても客側が口にする言葉じゃない。


「シエルボ、黙りなさい。威圧ばかりじゃ要望が通りませんよ。彼が立場を理解して、自ら差し出すのを待ちなさい」


 横柄な態度のやつは、大概馬鹿だから勝手に自滅するからいい。


 厄介なのは、調子に乗って謙虚さを忘れてる奴だ。周りが自分の思うままに動くと勘違いをしている。


「今、二人に渡した分しかありませんよ」


 俺は、勘違いした奴らを、コンサル時代にたくさん見てきた。


「なに? これっぽっちだと?! セルヴォ様を馬鹿にしてるのか!!」


 俺もそうだったが、他者へのリスペクトを忘れた奴らは、滑稽で哀れだな。


「貴様、もしかして、私の存在を軽く扱っているのか?」


 高圧的に睨んでも変わらんよ? 


 相手に大切にされたいなら、自分達の礼儀をまずは見直せ。


「申し訳ありません。先ほどお伝えした通り、本日は休業日で、お渡ししたのは私の昼食です。不満ならお返しください」


 店側は、たとえ頭を下げたとしても、他のお客様のご迷惑になるから下げるだけで……


「グッ、し、仕方がない。これは我々が貰った物だ。食ってやる。しかし、温かい物が欲しい。なんとかしろ」



 ——お前の要望なんてしらねぇよ。



 こっちにも、客を選ぶ権利があることを忘れてないか?


「はぁ……」


 つい、深いため息が出てしまった。


 どうやって追い払おうか……


 俺は、思考を放棄したまま、考えるふりをしていたら、


 ジェリコがぬぅっと水音もなく、静かに湖から上がって来た。



「あぁ?セルヴォお前、こんなところで何してやがる?」


 魔族の背後から現れてパッと状況を判断したのだろう。


 ジェリコは今、オスバージョンだ。



「げっ! ジェ、ジェリコ、なぜ貴様が……」


 セルヴォとシエルボの顔が、青ざめて一気に引きつった。


「ここは、俺の行きつけだ。お前みたいな、けつの穴の小さい、シケた小判鮫が来るところじゃねぇ! 邪魔だ! とっとと帰れ!!」


 ジェリコは地を這うような低音に、ビリビリとガラス窓が震えるほどの音圧で、魔族の二人を怒鳴りつけた。



「チッ、ラマンティーヌ族の行きつけとは厄介な。シエルボ行くぞ」


 セルヴォは、忌々しいとばかりに舌打ちをすると、さっさと背を向けて去っていった。


「セ、セルヴォ様!クソ、覚えてろよ!!」


 シエルボは、三下感満載の捨て台詞を吐いてセルヴォを追いかけていった。



「ジェリコ、ありがとう。助かった」


 正直、かなり面倒だった。


「邪魔だったしいいのよぉ〜♡でもユーちゃん、あれ、魔王のお気に入りだから、もしかしたら、ちょーっとまずいかも」


 ごめんなさいねぇと、笑顔で不穏なことを口にするジェリコの目は、


 全く笑ってなかった……


 俺、マジでやばいのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ