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異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
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アルプと友達になる

 子供達とアルプと小さくなったフリーゲンがカウンターに座って、ワクワクしながらプリンを待っている。


「ピコラ達は、さっき食べたよな?」


 こいつら、プリンの前にも包み焼きを食べたのに、まだ食べるのか?


 ピコラとガバルは、さらにトマトソースのワームも食べたはずだが……


「ボク、プリンは別腹だよ!」

「オイラだってチュルンで終わりだ」

「甘いプルプルお腹いっぱい食べたい」


 子供は、成長期だからよく食べるのか?


「あんまり食いすぎると、腹痛くなるぞ」


 まあ、とりあえず、忠告だけはしておこう。


 プリンを皿に乗せて、それぞれの前に置いていくと……


「な、なんですかこれは?」


 アルプは、プリンをスプーンでつつき、プルンプルン揺れる姿に驚いている。


「アルプ!プルプルでしょう?お口に入れるとチュルンで甘ウマだよ!」


 ピコラはそう言ってプリンを一口含み、ゆらゆらとプリンの真似をした。


 アルプは一口食べると、目を閉じて天を仰ぎ無言で震えている。


「アマイ、ウマイ……」


 フリーゲンは、プリンをスプーン一口で、食べるのを止めプリンをじっと見つめている。


「フリーゲン、どうした?」


 ドラゴンには、甘すぎたか?と、心配になり様子を見ていたら


 フリーゲンはキラキラと光ると、手のひらサイズまで小さくなった。


「え?フリーゲン、なんで小さく?」


 プリンにそんな効果はないはずだ。


「コレデ、イッパイ、タベレル」


 フリーゲンは自らが小さくなることで、プリンを堪能するつもりらしい。


 ——めちゃくちゃ可愛いな


 後から触らせて貰えないかな?


「うわぁ、フリーゲンいいなぁ、小さくなったら大きなプリンだねぇ」


 ピコラ達は、2回目のプリンだからか、さっさと食べ終わってしまったので、フリーゲンを羨ましそうに見ている。


 ピコラはこれ以上食べたら、お腹を冷やしてしまうから、やめておきなさい。


「ピコラ、そう言えば、器作りはもう終わったのか?」


 確かエリソンが来る前に、やり始めたばかりなはずだ。


「あ、そうだった!ガバル、器作ろう?ユージン、プリンの器まだいる?」


 ピコラは、器がたくさんあれば、俺が沢山プリンを作るだろうと考えたのだろう。


 ——なかなかの策士だな。


「そうだな、材料があるならお願いするよ」


 型の変更はいつでもできるし、金属の器はあって損がないな。


「分かった!ガバル、エリソン、行こう!」


 ガバルとエリソンはピコラと一緒に、器作りの最中だったウッドデッキに移動して行った。


 フリーゲンも、食べ終わったらピコラの元へ行ってしまった。


 ——触りたかったのに残念だ。


「そうだ、アルプ、このまま子供と店をやっても問題はないのか?」


 念の為、アルプに相談してみよう。


 プリンを食べ終わり、幸せそうにゆらゆらしていたアルプは、ハッとして俺を見た。


「ユージンはこの国のこと……どこまで知っておいでですか?」


 アルプは、困ったような顔で、言葉に迷いながら尋ねてきた。


「魔族国と人間が争っていることと、子供も駆り出されていて、後は最近、大人が操られていることくらいか?」


 話の端々からわかる程度だな。


「あなたは人間ですが、魔族のことをどうお考えですか?」


 アルプは、俺にざっくりと大まかな尋ね方をしてくる。


「どうといわれてもなぁ、俺の知っている魔族は、ここで会った奴らしか知らないから、何とも言えんな」


 俺に対して悪意がないなら、多分、なんとも思わないよな。


「ガバルが、貴方に人間を穴に落としたと、話したことを気にしていました。それに対してはどう感じますか?」


 ああ、そういえばさっき言ってたな……


「うーん、俺の身内が被害にあったなら怒りも湧くけど、実際には俺が人間でも、お前達は襲ってこなかったよな?」


 なんなら、めちゃくちゃ友好的だったぞ?


「ガバルはきっと、作戦の一環で攻撃する必要があって穴に落としたんだろ?あいつは命令に忠実だっただけだ」


 誰彼構わず襲ったわけじゃない。


「……では、好戦的な魔族に対しては?」


 さっきから、アルプは何が聞きたいんだ?


「理由によるんじゃないか?人間に身内を傷つけられたなら、人間に文句を言いたくなる気持ちぐらいならわかるぞ?」


 とは言え、命は狙われたくはないけど……


「……そうですか」


 モフモフでわかりにくいが、アルプはぐぬぬと、眉間に皺を寄せているようだ。


「たとえば、私が人に攻撃されたとしたら、ユージンはどうしますか?」


 アルプの質問の仕方がちょっと変わったか?


「アルプ、その場合俺は攻撃してきた相手が人間であっても、魔族であっても怒るぞ?」


 身内のこととなれば、話は別だ。


「そうなのですか?」


 アルプは不思議そうにキョトンとした。


「逆に、何で不思議に思うんだ?」


 身内だと思っているのは俺だけか?


「ユージンは、基本的に魔族の事情には不干渉なのかと思いまして」


 あー……そう思われていたのか。


「なんていうか、余所者の人間だし、俺が口出すのは違うかと思っていただけだよ」


 実際気にはなったけど、遠慮したしな。


「そのように考えていたのですね……」


 アルプはあごに手を当てたまま、真剣に考えている。


「お前たちの常識も知らずに、勝手なことを言いたくはなかったんだ」


 俺には、魔族の善悪すらわからんからな。


「では、気にはなっていたのですか?」


 意外そうにアルプは俺を見つめた。


「そりゃ、当然だろう?」


 自分の周りが、何やら物騒なんだ。気になるに決まっている。


「……人間は、みなユージンみたいな考え方なのですか?」


 アルプは、あまり人と関わった事がないのだろう。さっきから、質問攻めだな。


「うーん、人によってかなり違うと思うぞ。魔族でもいろいろな奴がいるだろう?人間も同じじゃないかな?」


 種族ごとに感じ方は違うかもしれんが……


「同じ種族でも、アルプと気の合うやつもいれば、全く理解できないやつもいるだろ?」


 家族ですら理解できないこともあるしな。


「そうですよね……」


 アルプは、納得したようなしていないような曖昧な返事だ。


「アルプどうしたんだ?何か気になっている事でもあるのか?」


 なんだかアルプは、さっきからずっと中途半端なままだ。


「ユージンは、なぜここにいるのですか?」


 急にキリッとしたアルプが、踏み込んだ事を聞いてきたので、ドキッとした。


「……え?」


 ——なんで答えたらいい?


 マハトは、アルプには異世界人だと言うなと言っていたよな……


「魔族と人間が争い始めているのに、なぜユージンは一人でここにいるのですか?」


 アルプなりに、俺の存在は色々怪しいと思っていたのだろうな。


「……わからないんだ」


 異世界人だと言わなければ、話してもいいだろうか?


「わからない?自分の事なのに?」


 アルプは、心底意味がわからないとばかりに首を傾げている。


「気が付いたら、荒野にいて、歩いていたらトビ族のキャンプ地でピコラと出会った」


 嘘は言ってないから、これでいいよな?


「まさか!記憶がないのですか?」


 アルプは慌てて俺に聞いてきた。


「いや、記憶はあるぞ」


 むしろ、ない方が都合が良かったかもな。


「でも、理由が分からないと?」


 アルプは腕を組んでうーむと唸っている。


「ごめん。俺にもうまく説明できないんだ」


 異世界人だと隠しながら話すのは難しい。


「ご家族は?」


 アルプの質問は、まだ続くようだ。


「あー、今はもういないな」


 久しぶりに、ふと両親の顔を思い出した。


「もしかして……天涯孤独ですか?」


 アルプはしゅんとしながら、遠慮がちに聞いてくる。


「まあ、そんな感じだな」


 あまり、思い出す事もなくなったな……


「ご友人は?」


 なんだろう?アルプはさっきから、俺の何を知りたいんだ?


「おい、さっきから身辺調査か?」


 さすがに根掘り葉掘り聞かれるのは、あまり気分が良くない。


「はい、ユージンの事を信用したいのですが、他の人間は信用できなくて……」


 アルプなりに警戒していたようだ。


「ユージンはお人よしなので、情報を渡してしまったら、周りの人間に感化されて秘密事項も話してしまうのではと危惧しています」


 それ、俺を馬鹿にしてないか?


「それは安心していい。どのみち仕事しかしていなかったから、友人にも10年は会ってないし、そもそも近くにいない」


 もう、会えないんだろうな……


 そう思ったら、少し悲しくなってきたな。


「それは……申し訳ありませんでした」


 俺の顔が曇ったのを感じたのか、アルプは謝ってきた。


「いや、謝らないでいい。気にするな」


 ——ない物を数えたって仕方がない。


「では、私がユージンの友達になって差し上げましょうか?」


 アルプは、椅子から降りて俺の足元に来ると、手を差し出して見上げてきた。


「はは、ありがとう。よろしく頼む」


 どうやら、俺はアルプに友人として認められたらしい。


 俺は、その気持ちが嬉しくて屈んでアルプの手を握った。


「お友達……ユージン、友達なら、私の話を聞いていただけますか?」


 アルプは握手をしたまま、晴々とした表情で声を掛けてきた。


「いきなりだな、まあいい。話、長くなりそうなら、お茶でも入れよう」


 俺は2つのカップにお茶を入れ、アルプの隣のカウンターチェアに座った。


「ありがとうございます」


 アルプは両手でお茶を受け取ると、お礼を言って一口飲んだ。


「で、なんの話なんだ?」


 きっと、楽しい話ではないよな……


 情勢的に考えても、浮かれた話じゃないことは確かだろう。


「マハト様の事なんです……」


 アルプは、お茶を手にしたまま、静かに話し始めた。

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