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異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
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子供の希望と現実

 俺の思いつきで口に出したが、一緒に暮らすのは我ながら悪くない提案だと思った。


「まあ、ここはピコラの家だから、俺が決める事ではないが、どうだろう?」


 そうなると、全員ピコラの家の世話になるのだから、家主の許可は必要だろう。と思い確認してみるが。


「ユージン、それ、本気で言ってるの?」


 ピコラは俺の提案を疑っているようで、じっと睨むように俺を見ている。


「みんなで店をやっていきたいのは、本気のつもりだが……何かまずかったか?」


 俺にはこの世界の常識がない。何か間違ったのだろうか?


「まずいなんてもんじゃないよ!そんな提案、嬉しすぎて信じられない!ボクは大歓迎だけど、本当にみんなで手伝ってもいいの?!」


 わっと、三人の空気が明るくなった。


「手伝ってくれるなら、俺は助かるぞ?ガバルとエリソンはどうだ?」


 ピコラの許可が下りたので、ガバルとエリソンも勧誘してみた。


「オイラ、雑用って何すればいいんだ?役立たずにはなりたくないぞ?ちゃんと仕事がしたいんだ」


 ガバルは、目の前の楽しさよりも、ちゃんと現実を見ているようだ。


「僕は、一から鳥を育てなきゃいけないから、役に立つには時間がかかるよ……」


 エリソンも現実的だった。


「二人の言ってることは正しいけど、俺が聞いているのはそこじゃない。やりたいか、やりたくないかだ」


 現実は、大人になったら嫌でも襲ってくる。


 だから、子供のうちぐらい、夢を見たっていいじゃないか。


「面白そうだ。オイラもやってみたいよ……」

「僕も、迷惑じゃないなら鳥を育てたい」



 ガバルもエリソンも、やりたいけれど、現実的ではないと考えているようだ。


「迷惑というが、仕事の対価は食事の提供しかできないぞ」


 俺はそもそも無一文だ。


「食材も、ピコラやアルプの持ってくる物と自給自足頼りだ。全く甘くないぞ?」


 面倒を見てやれるほど、己に余裕はない。


「俺は、お前達に仕事をさせたいわけではないよ。やりたいこと、楽しいことを経験してほしいだけだ」


 殺伐とした世界から逃げてきたなら、自由でもいいじゃないか。


「得意な事がお互いに補えそうだから、お前達を誘ってるだけだよ」


 適材適所でいいじゃないか。


「そ、それじゃあ、オイラ食材狩ってくるなら出来るぞ!」


 ガバル、それ、ミミズのことだよな?


「ワームは……間に合っているかな?」


 ガバルに任せると、ミミズ料理専門店になってしまう……。


「違うよ、オイラは罠が得意なんだ。落とし穴なら一瞬で作れるぞ?人間相手にまとめて10人落としたことも、あ……」


 ガバルはしまったと青ざめた。


「ガバルなら、ボクの畑の土を耕すのも一瞬だよね!!」

「僕と一緒に行けば、山猪の親子や、乱闘牛ぐらいなら簡単に仕留められます!」


 ピコラとエリソンが、慌ててガバルのフォローをしている。


「ガバル、気にしなくていい。それが、その時のお前の仕事だったんだろう?立場が違えば感じ方も違う。ガバルの強さは心強いよ」


 俺のフォローする言葉に、却って三人ともうなだれてしまった。


「三人とも、気にするなって言っても無理か?やっぱり、辞めるか?」


 本人たちにその気がないなら、俺は無理強いはする気はない。


 話を無かったことにしようとしたが、


「え、ボクはやりたいよ?」

「ややややる!オイラもやるよ!」

「本当にたまご屋さんやってもいいの?」


 俺が引いたら、三人は食いついてきた。


 ——子供って、単純なんだな。


 それが本来の姿だよな……


「よし、じゃあ、一緒にやるか?」


 既にしっかり自立している子供達だ。細かいことは、おいおい考えればいいだろう。



「「「やるー!」」」


 さっきまでの迷いはどこへ行ったのか、三人は元気よく返事をしてくれた。


 緊張感が抜けて、どことなく気が緩んだ時、


「あ、何かくる!」


 ピコラが急にハッとして耳を立てると、空を見上げた。


「……ん?」


 俺もつられて見上げてみたけれど、空には何もない。


「ピコラ、何がいるんだ?」

「……逃げる?」


 ガバルは慎重にピコラに尋ね、エリソンは針を逆立てて警戒している。


 この子たちは、今までこうやって警戒しながら生き抜いてきたんだな……


 その姿に心を痛めながら、何かあったら俺が前に出るべきだろうか?と考えながら、何もない空を俺は見上げていた。



「あ、フリーゲンだ!おーい!ここだよー!」



 ピコラがブンブン手を振ることで、来るのはピコラの知り合いと知り、ガバルとエリソンは肩の力を抜いた。


「ピコラは凄いな?全く見えないぞ?」


 俺は何もない空をじっと見つめた。


「ピコラ!ダメだ、ドラゴンだよ!逃げなきゃマズイよ!」


 ガバルが穴を掘り始め、エリソンは針で結界を準備した。


「ガバル、エリソン。アレは、フリーゲン!ボクの友達だから大丈夫だよ」


 ピコラが、2人を穴から引き摺り出している間に、フリーゲンはあっという間に、こちらに近づいてきた。


 バサリと羽ばたき、ズシンと着地すると、背中からアルプが降りてきた。


「ユージン、もしかしてお待たせしましたか?あのやかましい半魚人は?」


 アルプはキョロキョロと、首を回してジェリコを探した。


「ジェリコは、湖に帰ったよ。なんか無理に急がせたみたいでごめん」


 ジェリコの暴走で、アルプに迷惑をかけてしまった。申し訳ない。


「こちらこそ、雑務に追われて後回しになってしまい、申し訳ありませんでした」


 アルプは、そっと鞄を差し出してきた。


 受け取って、中を見たらかなり沢山の食材と調味料が入っている。


「取り急ぎ、かき集めましたが、店をやるには量が少ないので、連絡くだされば、追加が必要な物はすぐにフリーゲンに持たせます」


 アルプはそう言って、腕輪を渡してきた。


「こんなに沢山、ありがとう。腕輪?」


 受け取ってみると、ドラゴンの装飾が掘られたシルバーの腕輪だ。


「これは、通信具です。裏側には3つ通信先が保存出来ます。1がマハト様、2が私、3が半魚人に繋がりますのでご利用ください」


 連絡先は3つか……子供用携帯みたいだ


「ありがとう助かるよ。アルプ、マハトは元気にしてるか?」


 俺とアルプが話をしていたら、


「マハト様って……まさか、あのドラゴン」

「ドラゴンに乗る羊って……」


 ガバルとエリソンが、こちらを見て、なぜかプルプル震えている。


「ユージン、彼達は?」


 アルプはスッと目を細め、2人を見つめた。


「アルプ、この子達は、ピコラの幼馴染のガバルとエリソンだ。これから先、俺の店を一緒に手伝って貰うつもりだ」


 隠すつもりもないし、反対されたらマハトに直談判してみるつもりだ。


「……そうですか。身元がハッキリしているなら反対は致しません。ですが……」


 そう言って、アルプは2人に近づいていき、


「ちょっとだけ、あなた方のお話を伺ってもよろしいでしょうか?」


 アルプは問答無用で、2人を離れた場所に連れて行こうとした。


「アルプ、待ってくれ……」


 どうか、責めないでほしいと思ったのでアルプを止めたが、


「ユージン、これは魔族の国の問題です。私は彼らに話を聞かなければなりません。開店の邪魔はしないのでご心配なく」


 淡々とした物言いに、部外者の俺が付け入る隙はなく、俺はアルプを信じて引き下がった。


 ガバルとエリソンは、アルプから色々尋ねられているのか、身振り手振りで伝えている。


「ピコラ、あなたも来てください」


 アルプは、ピコラからも話を聞くようだ。



 俺は、する事がないので、フリーゲンに近寄り話しかけた。


「フリーゲン、お前の好物はなんだ?今後、運んでもらうことが増えるだろ?お礼に好きな物作るぞ?」


 今は大きいドラゴンだが、小さくなって俺の料理を食べてくれたせいか、怖さは感じない。


「グル……コウブツ?」


 フリーゲンは首を傾げている。


「ああ、好きな食べ物だ。何かあるか?」


 理解したフリーゲンはぐるぐる言いながら考えている。


「ユージン、ツクル、ナンデモウマイ」


 思いつかなかったようで、困り顔のドラゴンになっている。


「はは、ありがとう。じゃあ、普段食べてる中で、好きな食べ物はあるか?」


 普段は、何を食べてるんだ?


「フダン、カジツ、スキ、ヤサイ、スキ」


 なんと意外にも、フリーゲンは草食だった。


「もしかして、肉は食べれなかったのか?」


 先日食べていたけど、悪い事したかな?


「タベレル、デモ、クサイ、オイシクナイ」


 グニっと口元を曲げて嫌そうな顔をした。


「あー、フリーゲンは、ちゃんと料理しないと肉は無理なんだな?」


 魔族の国は、基本的に生食文化だもんな


「ユージン、ツクル、スキ」


 フリーゲンは、俺の料理を気に入ってくれていたようだ。


「そうだフリーゲン、甘いものは好きか?」


 果物が好きなら、プリンはたべるかな?


「アマイ、スゴクスキ」


 甘党なんだな……


「前みたいに小さくなれるか?アルプがいないと無理かな?」


 このサイズだと、バケツプリンじゃないと足りないよな?


「……デキルヨ」


 フリーゲンは、自分で小さくなれるようだ。


「そうか、じゃあよろしく頼むよ」


 フリーゲンを軽く撫でて、皆が話している方へ顔を向けると、アルプがまだ話をしているようだった。


 子供達は、じっと下を向いている。そろそろ解放して貰おうかな?


「おーい、アルプ!お前から貰ったミルクで甘くて美味しいプリンを作ったんだ!みんなで食べないか?」


 卑怯な手だと思うが、子供達を解放するには食べ物で釣るしかない。


 アルプの事だから、きっと話は終わっているはずだ。


「プリン!アルプ!プリン食べよう?夢みたいにトロトロプルプルあまあまだよ!」


 ピコラが俺の思惑に反応して、アルプにプリンの魅力を伝えている。


「プリン?なんだか可愛らしい名前ですね?ミルクから作ったのですか?」


 アルプは、あっさりプリンに気を取られ、ピコラに尋ねている。


「プリンはミルクと卵とお砂糖を混ぜてました。プルプルで甘くて幸せな味でした」


 作る工程を見ていたエリソンは、アルプに追加情報を渡している。


「金属の器だから、持つと冷たくて、皿に出したらプルプルゆらゆらするんだ」


 ガバルもプリン情報を報告している。


「そ、そのような物が……みなさん、先程の事、しっかり理解出来ましたか?」


 グラグラ揺れる心をなんとか支え、アルプは最後の言葉を子供達に投げた。


「「「はい!約束します!」」」


 子供達は、良い返事を返し、キラキラした目でアルプを見つめた。


「……では、一緒にプリンを食べましょうか」


 はぁ、とため息を吐いて子供達を解放した。


「やったー!アルプ、一緒に食べよう!」

「プリン、プリン、プルプルプリン!」

「ミルクと卵は素晴らしい!」


 アルプの許しを貰い、子供達ははしゃぎながら走ってきた。


 説教中のアルプは、プリンの魅力の前にまんまとひれ伏したようだ。

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