表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
集まる。そして始まる。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/44

行き倒ればかりだな?

 ガバルからハチミツと、巨大なユムシを手渡されてしまい、ユムシを理解したくない俺は目を細め、途方に暮れて遠くを見ていた。



「ガバル、ダメだよ、ここはお店なんだから、ちゃんとユージンにお金を払わなきゃ」


 ピコラは、会計をするようにと、ガバルにぐいっと詰め寄った。


「でも、さっきのワームは、オイラが持ってきたやつだぞ?」


 確かに、ガバルの言う通り、食材は持参品だし、ハチミツも貰った。


 金も貰うのは違うな。


「ピコラありがとう。今回のメイン食材はガバルからの提供だ。ハチミツも貰ったしお金はいいよ。ちょっとユムシに驚いただけだ」


 俺の事を考えてくれたピコラに感謝して、金はいらないと説明をしてみたが……



「ガバル、ユージンの労働に対してハチミツだけ?正当な対価を払わなきゃダメだよ!そういうの『やりがい搾取』って言うんだ!」


 ピコラは、興奮しているのか、足をタンタンと鳴らしながら怒っている。



「ピコラ、そんな言葉よく知ってたな?」


『やりがい搾取』はあっちの世界の言葉。まさか俺以外にも、同じ時代の転移者がいるのか?



「ボクを助けてくれた商人のおっちゃんが、よく言ってたんだ……」


 ピコラは、話しながら泣きそうな顔をし、顔を背けると何かを堪えている。


 ——ピコラの悲しみは、その商人の事か?


 そう感じたけれど、俺は、ピコラにどう声を掛けたらいいのか、正直迷った。


「ピコラの言うことは正しいけど、金を渡してもユージンは人間だ。街中に買い物にも行けないし……そもそもこの辺りじゃ使えないだろ」


 ガバルに指摘されて、ピコラはハッとして顔をあげた。


 ガバルの言い分を理解したようだ。


「……やっぱり、人間だと色々不味いのか?」


 この世界は、そんなに危険なのかと思い、ガバルに尋ねてみた。


「オイラ達は人間が嫌いじゃないけど……支配された奴らは違うから……」


 ガバルは、答えにくそうに話すと、気まずそうに目を逸らしてしまった。


「——支配?」


 不穏なワードが気になったので、ガバルに聞き返してみたけれど、


「ごめんな、これ以上は言えない」


 ガバルは、首をブンブンと振ると、俺を見ることなく回答を拒否した。


「……ユージン、勘違いしないでね、ボク達は巻き込みたくないだけだよ」


 ピコラは、ガバルの拒否に俺が気を悪くしないか気にしたのか、耳をぺたんと伏せてガバルのフォローをしてきた。


 ——しまった、迂闊に踏み込みすぎたな。


「そうか、なんだか気を使わせてスマン。代価は十分だよ。ありがとう」


 これ以上はお互いに気まずくなるだけなので、俺はピコラに違う話を提案した。


「なあ、ピコラ、ここで店をやるとしたら、何か必要なものはあると思うか?」


 二人の空気が悲しくなっているので、明るい話題がいいかと思い、出店にまつわる話を振ってみた。


「うーん、鍋は足りてる?」


 一瞬キョトンとしたピコラは、首を傾げ即座に考えて質問に答えてくれた。


 ——悲しい顔ではなくなったな


 俺は、空気感が変わってホッとしたので、そのまま、自分の要望を答えていく。


「もう少し追加したいな。あと皿とコップが欲しい」


 何かと鞄に保存が出来るので、鍋ごとや皿ごと保存するには圧倒的に数が足りない。


「鍋は鉄がないから、今は出来ないけど、皿なら作ればいいよ」


 ピコラが俺の欲しい物をメモしていたら、気持ちを切り替えたガバルが参加してきた。


「ガバルが皿を作るのか?」


 皿を作るには、形状変化と性質変化かな?


 ——もしかして、俺にもできるのか?


「木製の皿なら簡単だよ。これはボクが作ったやつだよ」


 ピコラは、キッチンにある木の皿を指差し、自分で作ったと報告してくれた。


 ここ最近使っていた皿は、ピコラが作った皿だったらしい。


「皿と、カップならオイラ得意だぞ」


 ガバルは、そう言って鞄から、皿とカップを取り出した。


「へえ、いい感じだな」


 ガバルのカップは、寄木細工のように、色の違う木を使っているのか、オシャレなデザインだった。


「ユージンが気に入ったなら、オイラ、今から料理のお礼に作ってやるよ!」


 ガバルはそう言って、森に走って行った。


「じゃあ、お皿とカップはガバルに任せて、ボクは、スプーンとフォークを作るよ」


 ピコラもぴょんと跳ねると、急いで森へ走って行った。


「……自給自足には、森は不可欠なんだな」


 必要な資源は森の中らしい。


 俺は、二人が戻る前に、魔法でガバルから貰ったユムシの下処理をして、ガバルからのリクエスト用に鞄に保存しておいた。



「……使う日が来ませんように」


 出来れば忘れてしまいたい……



 ガバルとピコラはあっという間に戻ってくると、今はウッドデッキで次々と、器やカトラリーを作成している。


「ピコラ、フォークとスプーン、小さめのも作れるか?」


 可能なら、デザート用の小さな物を準備しておきたい。


 ピコラは、手元の作業に集中しながら、首だけ頷いて返事をしている。


「ユージン、皿の大きさはこれでいいか?」


 ガバルも自分が作っているサイズが気になったのか、俺に確認してきた。


「ああ、可能なら、スープボールと、大小の皿があると助かるな」


 希望を伝えてはみたけど、沢山作るのは大変じゃないのだろうか?


「分かった!オイラに任せろ。ピコラ、今日ここに泊まっていいか?」


 ガバルは張り切っているのか、泊まりがけで作業をするつもりらしい。


 子供に頼りすぎだよな……


「ガバルの予定がないならいいよ」


 ピコラは手元のフォークに集中している。


 とりあえず、ガバルは今日宿泊する事が決まったようだ。


「ガバル、作ってくれるのは嬉しいけど、そんなに頑張らなくても……」


 ガバルに無理をさせたくなくて、俺が話しかけたとき——



 ドパーン!!


「ブッハァーん!」



 盛大な水飛沫と雄叫びをあげて、水中から勢いよく、ジェリコの巨体が現れた。


 俺は、急に訪れた恐怖に思わず固まった。



「あらぁ、ユーちゃん外にいたのねぇ。ちょうどいいわぁ、この子ちょーっと預かってくれないかしら?」


 ジェリコは、固まった俺の顔を見るなり、俺の前にゴロンと玉のような物を転がした。



「……なんだこのトゲトゲ、ハリネズミ?」


 コロリと転がされた後、目を回したのか、くてっと横たわったのは、小玉スイカサイズのハリネズミだった。



「エリソン!!」


 ガバルは、ハリネズミを見ると慌てて近寄り、様子を見ている。


「あら、ガバルじゃない。ピコラ知り合い?それよりも、この子、モグラ穴から落ちてきたけど、逃げて来たのかしら?」


 ガバルの穴は、ジェリコの洞窟に繋がっているようだ。


 ジェリコは以前、逃げてきた仲間を匿っていると言っていたよな……



「ジェリたん、ガバルはボクの幼馴染だよ」


 ピコラも、エリソンに近寄ると心配そうに膝をついて眺めている。


「そうだったのね。ガバルの穴から落ちて来たんだけど、あなたたち。3人とも知り合いだったみたいね」


 ジェリコは、思う事があるのか、ふう、とため息をついた。



「なんか、最近行倒ればかりだな。そいつ、エリソンは大丈夫なのか?」


 エリソンはぐったりしたままだ。



「……ダメだ、ピコラ、ポーション飲ますから手伝って」


 ガバルとピコラは協力して、ポーションを、強引に飲ませはじめた。



「エリソン!起きろ!しっかりしろ!」


 ガバルが両手でエリソンを掴み、ピコラが口の中にポーションを捩じ込むと、ガバルは上下に勢いよく振り始めた。



「ちょ、そんな乱暴な……」


 エリソンは、まるでシェイカーを振るようにシャカシャカとガバルに振られている。



「ふぁ?ガバル?ちょ、怖っ!!」


 ポーションを飲んで目覚めたエリソンは、振り回されている事に慄いている。



「……ハリネズミも話すんだな?」


 人型のピコラやガバルと違って、エリソンは見た目はハリネズミそのものだから、ちょっと不思議な気がする。



「あの子は、アタシや、アルプと同じ獣魔族だから、可愛くて知性があるのよぉ〜」


 ジェリコが、俺の言葉に反応して、種族説明をしてくれた。



 ジェリコと同じ……?



「そうか……同じか」


 ジェリコの説明した言葉を、俺は本能的に認めたくなくて軽く流した。



 ——アルプと同じタイプだな。


 ジェリコより、アルプの方が想像しやすい



「あ!よかったぁ、エリソン、いったいどうしたんだよ?」


 エリソンの目覚めに気付いたガバルは、手を止めると、抱えたまま尋ねている。



「あ、ああ、ちょっとしくじって……逃げて来たんだ」


 エリソンは、悲しそうにガバルに伝えると、キュッと丸くなってしまった。



 ——逃げてきたって、ピコラと一緒だな?


 行倒れは、ガバルを除けば3人目だ……



「エリソンは、もしかして城下町にいたの?」


 ピコラは、エリソンの滞在していた場所を訪ねているが、城下町と言われる場所は、危険な地域なのだろうか?


「え?まさかピコラ城下町にいたのか?」


 ガバルとエリソンは、ギョッとしてピコラを見つめている。


 一方ジェリコは、さっきから黙ったまま、じっと3人の様子を伺っている。



「うん、ボク……」


 ピコラは話しかけて、ハッと俺を見て話すのをやめ下を向いた。



 ——俺には聞かれたくないか。



「僕は南にいたんだ。でも、大人が皆おかしくなってきたし、急に拘束も強くなってきたから、ガバルの穴を使って逃げたんだ」


 エリソンは、黙って俯いたピコラの代わりに話し始めた。



 逃げたピコラも同じなのだろうか?


 ——拘束っていったい何だ?



 俺、この話、このまま聞いてもいいのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ