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異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
集まる。そして始まる。

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畑には何がある?


「それじゃあ、そろそろ帰るぞ」


 フリーゲンが元のサイズまで大きくなり、その背中にマハトとアルプが飛び乗った。


「じゃあ、またな。気をつけて」


 寂しく感じなくもないが、店を始める事、食材と料理の物々交換をする約束もしたので、前向きな気持ちで見送る事が出来る。



「あー、一旦、早急に食材をアルプに運ばせるつもりだから、またその時には何か料理を頼むよ。じゃあ達者でな」


 マハトはそう言ってフリーゲンを上昇させると、あっという間に空高く上り、遠くに消えて行った。




「……行っちゃったねえ」


 ピコラは、少しだけ寂しそうにしながら見送っている。


 ほんのひと時だったけど、皆と一緒は楽しかったよな。



「じゃあ、アタシもそろそろ戻るわぁ。ユーちゃん、お料理ありがと♡ ピコラ、お魚が沢山取れたらまた顔を出すわねぇ」


 ジェリコは俺達と一緒にマハト達を見送っていたが、お礼を言うと手を振って、水の中に帰って行った。 



 ……長時間は、離れられないようだな。


 ジェリコは、守るべき物があると言っていたし、戻るのは仕方がない。



 ピコラは急に静かになった事が悲しいのか、拳をキュッと握りしめ、耳もぺたんと潰れて俯いている。



「……ピコラ、畑には何を植えたんだ?」


 俺は上手く慰める事など出来ないから、ピコラが楽しみにしていた畑の話を振った。



「はっ! そうだった! ユージン、新しい畑、見てくれる?」


 ピコラはキラキラした目に戻ると、俺の手をグイグイと引き、畑まで連行した。




 家の裏の畑まで行くと、昨日見た景色とはガラッと印象が変わっていた。


「うわ、結構広いな」


 畑のすぐ横には鬱蒼と木が茂った森があったはずが、今は木も伐採されて、広く明るい畑になっている。


「前はランバグラスと石芋の畑だったから、他の畑には色々植えたんだよ!」


 ピコラに腕を引かれ、順番に案内された。


「これはシュクレルートとグロムルート、こっちがラングルートとメディシナルートだよ。森の中で見つけて植え替えたんだ」


 ピコラは開墾だけじゃなく、森の中から苗まで探してきたらしい。


「ピコラは凄いな。森の中の苗だろ? 種類がよく分かったな」


 葉を見ただけで判断しているんだよな?


「森の中にある食材の場所は、小さな頃に教えて貰ったし、よく取りに行ったからね」


 ピコラはフンと鼻を鳴らし当然だと語っているが……



 ——今でも充分小さいと思うぞ?


 言わないけどな。



「こっちの畑はルーチェグラスとモルビドグラスで、あっちがダールグラスとパタラーグラスとヴィアジだよ」


 どれもまだ小さな葉っぱなので、俺には違いが分からん。



「また今度、グルエソグラスも植えるよ!」


 ピコラはさっきから張り切って説明しているが、正直どれがどれだか、名前を聞いただけでは全く分からない。



 ——そもそも、食材の名前すら分からん。



「こいつらは、どのぐらいで育つんだ?」


 今から野菜の成長を待つとは、ずいぶん気の長い話になりそうだ。



「うんと、今日はもう魔力だいぶ使っちゃったからできないけど、明日からなら、使いたい分はすぐに育てる事ができるよ」


 どうやら、ピコラの魔力で育てることができるらしい。



「そんなに早く育つのか。ここの野菜は、魔力で育てるんだな?」


 ——異世界は、やはり不思議だ。


 そもそも、魔力って何なんだろう?



「うんと、植物は土の中の魔素で育つから、魔素が多い所だと早く育つんだよ」


 魔素が養分なのか? それにしても早いな。


「ここはあまり魔素が多くないから、代わりに僕の魔力を撒いて育てるんだ」


 魔素と魔力は似ているようだな。



「場所によって、魔素の量は違うのか?」


 うーむ、知れば知るほど、知らない事ばかりが増えていくな。



「うん、魔素が濃い場所と薄い場所があるよ。人間の国の近くは魔素が薄いんだ」


 もしかして、ここは人間の国に近い?


 だからトビ族は交流して、釣りを一緒にしたのかもしれないな。



「魔素と魔力は同じなのか? 魔力を撒かないとどうなるんだ?」


 野菜は育たないのだろうか……



「魔素が少なくなるだけで、人間の野菜と変わらないよ。ただ大きさが小さくなるし、育つのも遅いんだよ」


 ピコラは手を振ってナイナイと否定する。



「人間が食べても問題ないなら、なんで人間も同じように魔法で野菜を育てないんだ?」


 早く大きく育つと言うなら、その方が良くないか?



「基本的に人間は魔力が少ないから、魔法食材の下処理が大変なんだと思うよ」


 確かに、魔法で処理しなければ危険な物がかなり多いか。



 実際、俺も魔力切れで倒れたしな……


 俺は、目覚めた瞬間のマハトのドアップを思い出し、かなり複雑な気持ちになった。



「確かに面倒事になるな……」


 俺は頭を振って、嫌な記憶を消去した。



「そうだ! ユージン、明日は森の中に食材を探しに行かない?」


 ピコラから森の散策のお誘いだ。


「畑にはまだ空きがあるし、近場にまだ行ってないところがあるから、付いてきてよ」


 ピコラはまだ畑の野菜を充実させるつもりのようだ。


「構わないが、森は安全なのか?」


 何か出ても、俺は弱いぞ?


「大丈夫だよ。その辺りは、もともとお爺様が畑にしていたところだし、この森は大きくても魔豚ぐらいしか出ないよ」



 魔豚? 大丈夫だろうか……



「それ、大丈夫なのか?」


 もし遭遇したらどうするんだ?



「魔豚なら大丈夫だよ。ボクが倒すから、ユージンは見てて」


 こんな小さなピコラが倒せるのに……



 ——俺はこのままでもいいのだろうか?



「ピコラ、食材なら俺も倒せるようになりたいぞ?」


 せめて狩りぐらい出来た方がいいよな?


「ユージンかぁ……どうだろう? 人間の魔豚狩りは、直接倒さずに罠を仕掛けているイメージだよ。何かいいアイデアある?」



 罠か……いや、普段ならいいが、



「それだと、散策中にいきなり襲われた場合は無意味だよな?」



 俺に攻撃魔法は……出来るんだろうか?



「そうだよね。ボクはツタ魔法使いだから何とかなっているけど、ユージンは属性はあっても鑑定でしょう?」


 ピコラは俺には難しいと思っているのか、うーんと頭を捻っている。



「強化された魔法じゃないから、魔力が少ないと威力が弱いかも?」


 ピコラは遠慮がちに、俺の能力は戦闘には向かないという現実を伝えてきた。



 そうなのか……俺、使えねえな。



「ちょっとやってみるか」


 悪足掻きだと理解はしたが、俺は手のひらに石を浮かべて魔法で木にぶつけてみた。



 ヒュン、ゴツン



「うん、弱いな」


 雷ならどうだ?



 パチン、パチパチ



「……弱いな」


 火は、森の中は辞めた方がいいか……



「ユージン、これ飲んで」


 ピコラが横から小瓶を渡してきた。



「ポーションか? どこもケガしてないぞ」


 ピコラは頭を左右に振って、残念そうに俺を見ている。



「魔力、減ってるでしょ? 無理すると倒れるよ?」


 そう言われ、自分の魔力を確認してみると、少し減っている。



「今の威力の魔法だと、10回が限度か……全く意味ないな」


 本当に、今後魔力は増えるのだろうか?



「形が無い物を生み出すのは、魔力を結構使うんだよ。形が存在する物を使えば、そんなに魔力は使わないよ」


 ピコラは地面を指差して教えてくれた。



「確かに、石も雷も、俺の魔力で作ったな」


 俺は足元に転がっている石ころを掴み、振りかぶって木に投げた。


 剛速球になるようイメージしながら、魔法を発動してみた。



 ブォン、ドゴッ!!



「お、さっきよりいい感じだな」


 魔力もあまり減っていないようだ。



「でも、その威力じゃ魔豚は倒せないよ?」


 ピコラは申し訳なさそうに教えてくれた。



「だよな。槍でも作るか……」


 俺は、足元にある岩を魔法で掘り起こし、槍の先をイメージして岩を変化させた。


 石器時代の槍のイメージだ。マンモスを倒せたなら、いける気がする。


「槍なら、持ち手の木もいるよね」


 ピコラは森へ入ると、すぐにいい感じの長さの棒を持って近寄ってきた。



「イテッ!」


 ピコラは走ってくるなり、さっき俺が掘り起こした穴に躓き転んでしまった。



「あ、済まない。やりっぱなしだった」


 俺は慌てて穴を埋めるが、ハタと気付いた。



「ピコラ、落とし穴なんてどうだろう? 足元に深めの穴を一瞬で掘ればどうだ?」


 それなら、魔力もあまり使わない気がする。



「うん、良さそうだね! さっきのポーション飲んでからやってみてよ」


 ピコラはさっきからずっと俺の魔力切れの心配をしている。


 魔力切れで死なれたくはないよな。



「ああ、そうするよ」


 飲んだポーションの味は、なんていうか栄養ドリンクを薄くした感じだ。


 ——少し薬臭いな。


 全身に魔力が戻るのを感じたので、落とし穴を試してみることにした。



「ユージン、ここなら掘ってもいいよ」


 ピコラに指示された場所は、一番奥の畑の、さらに奥だった。



「魔豚って、どのくらいの大きさなんだ?」


 大きさによっては、穴のサイズがかなり変わるよな?



「うんとね、大きな奴だと正面がこの木の間ぐらいで、長さがこっから……ここくらいで、高さは……このへんだよ!」


 ピコラはぴょこぴょこ移動しながら魔豚の大きさを教えてくれるが……



「高さと幅は2m、長さ4mってところか……かなりでかいな」


 俺は立方体をイメージしながら、地面に手をついて



「ドン!」


 掛け声をかけて、指定された場所に、幅3m×長さ5m×高さ4mの穴をあけた。



「ユージン! いいかんじだよ! これならきっと魔豚も出てこれないよ!」


 ピコラにお墨付きをもらい、ほっと一安心をした。


 魔力の減りも、このやり方なら、多分5回はできそうだ。



「よし、じゃあ明日は新しい食材の散策に行こうか」



 あわよくば……肉も欲しいな

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