表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』  作者: 黒砂 無糖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

魔法は睡眠学習法で


「……ここは?」


 真っ白な何もない空間に、俺は今、ポツンとただずんでいる。


 辺りをぐるりと見渡しても、ただ白い。足元も同様に真っ白だから、立っているのか浮いているのかも定かではない。


「どうすればいいんだ?」


 自分の手を見ても、何もない。



「困ったな」


 頭をガシガシと掻きながらつぶやいた時



 ぽん!



 シャンパンの蓋を飛ばしたような音と共に、手のひらサイズの、羽の生えたアルプが目の前に現れた。



 ——小さい羊が飛んでる?



「ちょっと準備に手間が掛かり、お待たせしてしまいました」


 ハタハタと羽ばたく小さな羊が、礼儀正しくペコリと頭を下げた。



「羽があるけど、アルプだよな?」


 俺は、目の前を飛ぶ羊に、念の為アルプなのか確認をした。



「はい、本来の私は、夢魔なので羽があるのです。普段は背中にしまってありますゆえ」


 そう言って、背中を見せ羽をはためかせた



「ここは、俺の夢の中なのか?」


 ただ真っ白だけど……


 普通、もっとこう、何かないのか?



「はい、ここは夢の入り口です。現実と夢の狭間です。時間の概念がないので、こちらでの時間経過は、現実だと一瞬ですよ」


 羽の生えた小さなアルプの手に、指揮棒のような形の先端が光った棒が握られている。


 ——あれは、魔法使いの杖だろうか?



「一瞬か、分かる気がするな。夢の時間は、現実と体感が全く違う時あるよな」


 うたた寝の時、長い夢を見たせいで、寝過ぎたかと、慌てて起きた経験もある。



「人間のチャンネルに合わせるのは、久々だったもので、ちょっとだけ手こずってしまいました。さあ、始めましょうか」


 アルプは、俺の言葉に頷きながら、手にしていた杖をくるくると振り始めた。



 すると、空間は暗くなり、アルプの光る杖の先端から、見た事の無い光の文字の羅列が、リボン状に伸び、渦を巻きながら俺を包んだ。



 ——魔法少女の変身みたいだな



 光が全身を包むと、頭の中に次々と知識が入ってきたのを感じた。


 魔法の使い方、注意点、利用法まで様々な知識が、一気に流れ込み定着している。



 初めから知っていたかのように、魔法の知識は、俺にどんどん馴染んでいく。




 要約すると、魔法の属性と、司る現象は、



 天【戦闘力】空間、時間、認知、五感

 風【癒し】風、空気、音、気体

 地【守護】地面、石、生成

 火【燃焼】炎、熱、

 水【浄化】水



 基本的に人は1.2種類の属性持ちで、地、火、水を使える人は比較的多く、風まで使える人は限られてくる。



 天の属性を持っている人はかなり稀。


 魔法の発動の要は『イメージ』する事。


 属性を意識しながら発動すれば、尚良い。




 なんだ。魔法ってそんな事でいいのか……




 優秀な魔法使いは、器用な者が多い。

 稀に存在する転生者も魔法に長けている。



 ——転生者は確かに得意そうだな。



 要するに、想像を現実に落とし込む事さえできれば、魔法は自由に扱えるらしい。




 光の文字の羅列は、全て俺の中に取り込まれていき、最後の一文字まで、すっかり身体に吸い込まれていった。



 空間が明るくなり、手をグーパーしてみる。

 

 今までは知る事すらなかった知識が、今は、当然のように理解でき、自分の魔力も、元から存在していたと信じられる。



「へえ、なんか今までとは違う感じだな」



 俺は手のひらの上に、きちんと魔法を理解できている事を確認するために、拳サイズの水の玉を浮かべた。



「おお、一度で理解するとは、ユージンはかなり優秀なようですね」



 アルプの驚く声を聞いて、すぐ使えるのはまずいか?とも思ったが、魔法はイメージする力だから、俺としてはいい訳がしやすい。



 ——多分、問題ないだろう。



「俺は料理人だ。想像力は元々あるからな」


 料理人は、味の想像をしながら追及もする。想像力はあって当然だろう?


 納得したアルプを見て、俺は得意になって、浮かべている水玉を、お湯や氷へと手元でコロコロ変化させてみた。



「なんと、もう変化まで出来るとは?!もしかしたら、ユージンは天才か?!鍛錬すれば優秀な魔法使いになれるやもしれません!」


 アルプは、興奮気味に周りをくるくると飛び回っている。



 ——ちょっとやりすぎたか?



「はは、ありがとう。でも、俺は料理人だから、魔法は料理に上手い事活用してみるよ」


 たしか、魔法を使ってアルプは魚を下ろしていたはずだ。


 魔法食材の下処理が、自分で出来るようになるなら、ありがたい。


 しかし、やってみたい事が沢山あるな



「そうなのですか……ならば、そろそろ目覚めましょうか?」


 アルプは、料理にしか興味のない俺に、少しガッカリとしたのか肩を落とした。


 残念ながら、魔法で無双してみたいと思う性格ではないんだよ。



「ああ頼む。アルプから貰ったミルクのいい活用法も思いついたしな?」


 俺が、含みを持たせてニッと笑うと



「そ!それならば、急ぎましょう!!」


 アルプは慌てながら、その場でくるくると高速にまわり始めると、光の玉になり、そのまま大きく膨らんで……




 パァン!





 弾けた音と共に、俺は目が覚めた。



「おはようございます!お目覚めですか?さあさあさあ!料理人の出番ですよ!」


 目覚めた瞬間にぐわしっと捕まれ、俺はアルプによって、作業台まで連行された。



 ……俺の手を掴んでいる蹄は温かかった。




「おう、ユージン、早かったな」


 マハトは、次々と追加しなが増築していたのか、アウトドアキッチンの周りは、かなり充実していた。



「どのぐらいの時間が過ぎたんだ?」


 上を見上げたら、BBQ場のように、排煙機能のあるドーム型の屋根まで付いている。



「ん?10分ほどじゃないか?」


 マハトは、しれっと返事をした。



「おい、どう見ても、これは10分のクオリティじゃないだろ……アイランドキッチンか、オシャレだな」


 屋根だけではなく、円形に変化したキッチンの周りには、カウンターテーブルがぐるりと取り囲んでいた。



「だろ?コレならジェリコ達も来やすいし、ユージンも落ち着いて料理できるだろ」


 マハトは至ってご機嫌そうだ。



 ——皆のために頑張ったか、良い奴だな。



「雨天決行仕様だな。助かるよ。もう使ってもいいか?」


 マハトに念の為断ってから、キッチンの内側に入ったが、さっき見た時よりも、更に設備が進化している



「そうだ、ユージン。キッチンに古いけど魔導オーブン入れといたぞ」



 うん、俺は、目の前にオーブンみたいな物があるなと見ていたんだ……



「ありがとう。ってなんで、当然のようにオーブンなんか持ってんだよ」


 普通、持ち歩かないよな?



「あー、なんだ、ちょっと前に拠点を移した時に、入れたままにしていて忘れたんだ」


 普通、オーブンなんか忘れるか?邪魔になるだろう。どう考えても、俺には、忘れることなどできないぞ?



「お前の鞄は、どんだけデカいんだよ!」


 俺はどうにも我慢できずに、マハトに突っ込みを入れた。



「俺の鞄か?どうだろう。アルプ!俺の鞄のサイズ、知ってるか?」


 マハトは、アルプに聞かなければカバンのサイズすら忘れているようだ。


 声をかけられたアルプは、カウンターの裏にいるのか、こちらから姿は見えない。



「マハト様の鞄のサイズは、屋敷サイズですよ!いい加減中を一度整頓なさって下さい」



 アルプからの返答は、サイズと小言が一緒になっていた。



「……まあ、容量がデカいと色々放り込むから、考えずに入れた物は、ほぼ忘れるな」


 マハトはアルプの小言は無視して、俺に言い訳をすると、また作業を再開していた。



「屋敷サイズって……まあ、今は考えるのはやめよう。とりあえず、作ろうかな」


 俺は、石芋を入れた鍋に、早速魔法で水を入れてみた。


「うん、楽だな」


 作業台に材料と鍋を並べながら、使いたい調理器具がある事に気付いた。


「マハト!お前のカバンの中に、火に強い串とかないかな?」


 エビや魚を、BBQらしく串打ちをして焼きたい。


「串?んなもん何に使うんだ?」


 マハトはそう言いつつ、カバンから鉄製の剣を取り出した。


「肉とか魚を突き刺して焼くんだよ」


 マハトの鞄は、何でもあるかもしれない。



「ふーん……どのぐらいの太さと長さだ?」


 話をしながらマハトは、剣に洗浄魔法をかけて、綺麗にしている。


 ——まめな男だ。



「幅がこのくらいで、長さはこの位」


 俺は、サイズ感を手で表現をして見せた。



「ちょっと待て……これでいいか?」


 マハトは、即座に一本の細長い鉄の棒を作ってくれた。


 サイズ感はバッチリだな。



「おお……これでいい。可能なら、刺しやすいように先を尖らせて何本かくれ」


 せっかく作ってもらうんだし、今後も使いやすくしてもらおう。


「ん、これで足りるか?」


 瞬時に、剣一本分の鉄串ができた。


 こんなに使うか?まぁいいか。



「ああ、バッチリだ」


 さてと、欲しいものは揃ったな。





「どこまで魔法で出来るのかな?」


 オレはワクワクしながら、ランバグラスを手に取った。


 綺麗に水洗いした後をイメージして



「洗浄」



 パッと手元のランバグラスは綺麗になった。



 次は、食べやすいサイズに……


「ザク切り」


 ランバグラスは長さが揃ってカットされた。




「うーむ、包丁が要らなくなるのか?」


 とりあえず、今から使う食材を片っ端から魔法で下処理していく。



 芋の皮剥きも一瞬だった。



「楽だけど、料理してる感じが少ないな」


 少し物足りなさを感じる



「あ、そうだ」


 俺は、アルプから貰ったミルクを、鞄から一本取り出した。



「出来るかな?」


 俺は、瓶のミルクの中から、脂肪分の生クリームを鍋に取り出すイメージをした。



「あ、出来た」


 ミルクの量が多かったから、そこそこの量の生クリームがタプンと溜まっている。


 鍋を覗いた時、生クリームと一緒に、少しだけ視界が揺れた。


 味を確認したら、まったりとしていて、ちゃんと使えそうだ。



「こっちはどうなった?」


 瓶の中のミルクは、生クリームが抜けた分容量が減っている。



「あ、やっぱりさっぱりしたな」


 脂肪分が抜けたから、スッキリしている。


 俺は満足して、早速料理を始めようと、石芋に手を伸ばしたが……



 急に膝の力が抜け、ぐらりと身体が傾き、俺はその場で倒れてしまった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ