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異世界リストランテ『ピッコラ』〜宮廷料理人?だが断る〜  作者: 黒砂 無糖
移る。そして出会う。

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18/25

新鮮なエビカニでパニック!

 透き通った水玉が陽の光を反射して、キラキラと輝く水しぶきは虹色に輝き、まるで宝石が空中に広がったように綺麗だ……



 目の前に迫りくる『巨体に押しつぶされる恐怖』さえなければの話だが。



 ——俺、このまま圧迫されて死ぬのか?



 一瞬のことで身動きが取れず、ただ、ぼーっと見上げていたら




「フンヌゥ!!!」  ドゴォン!!




 ジェリコは直前でギュンと体をひねって、俺の斜め半歩前に落ちた。




「……おかえり、なさい?」


 かなりいい音がしたけれど、ジェリコは纏っている肉のおかげか、一切ダメージを受けていないようだった。


 俺は、心にかなりのダメージを食らったが?



「うふん♡ただいま!あらぁ?やだぁ、ユーちゃんだけ?」


 ジェリコは、マハトとアルプが迎えに出て来ていないことに不満そうだ。



「2人は室内に入って行ったよ……そう言えば、ジェリコは水の中しか動けないよな?」


 ジェリコの足元を見る。足じゃなくヒレだ。これでは歩けまい。



「ん〜出来なくもないけどぉ、あまり喜ばしくはないわねぇ。どうしようかしら?」


 ジェリコは、ハート型のヒレをパタパタさせながら、頬に手を当てて迷っていた。




「あ、そんなことよりも、見て♡たくさん入れてきたわぁ」


 ジェリコは、手にしていた袋を渡してきた。きっとこれも空間魔法のカバンだろう。


 俺は袋を受け取り、早速、中にある食材を確認してみた。



「お?エビ、カニ、貝と、海藻、シビレマスに、ドン・パーチだな?」



 ——さっき釣った魚以外、見たことないな。




「どう?アタシの好物ばかりよ♡これで、何が作れるかしら?皆で一緒に、頂きたいわぁ」


 ジェリコは、まつ毛をバサバサしながら、俺を期待のこもった目で見ている。



「ああ、沢山あるし、多分大丈夫だ」


 張り切って、たくさん持ってきてくれたのはわかるが、一覧で見ても、知っている魚以外、大きさが分からない。


 俺は、一旦エビとカニの大きさを見ようとして、1匹ずつ取り出してみた。



「ちょっと!ユーちゃん!!何してんの!」



 エビとカニを、その場で取り出したら、ジェリコが慌てて大声で叫んだ。


 出してみたら、思っていた以上に大きなカニだった事と、ジェリコの大声に驚き、俺の手からゴトンとカニがこぼれ落ちた。



「びっ……くりした。何って?」


 俺はエビだけは、咄嗟に握ることで死守できたけど、大きなカニは落としてしまったので、屈んで拾おうとしたら



 ブィン




 ピンと引っ張った輪ゴムを指で弾いたような音がしたと思ったら、




 ——手中にいたはずのエビが消えた。




「あれ?エビは?」


 もしかして落としたのか?とキョロキョロしていたら



「ユージン!危ない!!」


 今度はマハトから、焦ったような叫び声が飛んできた。



 ジェリコの落下音を聞きつけて、マハトが慌てて表に出てきたようだ。


 俺の後方を見たマハトの目が、驚愕したように見開いた。


 何かあるのかと振り返ると




「グゥッアア!アア!ああああ!!」




 なぜか背後で、ジェリコがビクビクと体を小刻みに揺らし、倒れて痙攣している。




 目が……あらぬ方向を向いている。




 ——大変だ。かなり怖いぞ




「おい!ジェリコ?!」


 何が何だか全く意味がわからないが、苦しんでいるのを放置も出来ず、ジェリコの側に膝をつき、手を伸ばしたら



「ユージン!今は触るな!感電するぞ!!」



 ガッと腕を掴まれ、急いで駆け付けたマハトに止められた。




「マ……ハト?!左ヒレだぁ!!」




 ジェリコはマハトの存在を確認すると、歴戦の戦士のような口調になると、マハトに向かって指示を出した。



「……了解」


 マハトは静かに返事をして、ジェリコの左ヒレを挟んでいる大きなカニの甲羅を布で包んで掴むと、サッと保存袋にしまった。



「っとにもう、未処理なんだから外に出しちゃダメよぉ。うっかりさんね? 危なかったわ」


 ジェリコは髪を乱したまま汗をかき、ふぅと息をしている。



 どうやらジェリコは、大きなカニのハサミ攻撃から、身を挺して俺の事を守ってくれたみたいだった。



「ごめん、ジェリコありがとう。もう起き上がっても平気なのか?」


 さっきはあんなに苦しんでいたのに……



「うふ♡アタシは強いから平気よぉ。だから気にしないでねっ!フン!」


 ジェリコはくねくねしながら、力こぶを見せつけてきた。


 立派な上腕二頭筋が、感電の影響かまだピクピクしている。


 ——本当に平気なのだろうか?



「さっきの感電状態、普通なら気を失ってもおかしくないんじゃないのか?まさか、ジェリコだから平気だったのか?」


 さすがに申し訳なくなって、心配になったので声を掛けたら、ジェリコは親指をぐっと立てて、ニカっといい笑顔を見せてきた。



 乙女なのか……? いや、漢だな。



「ジェリコは特別だからだな。俺も平気だが、ユージンやピコラだとちょっと厄介だ。これからは、取り出す前に袋の中身を鑑定する癖をつけた方がいいぞ」


 マハトから、食材に対する取り扱いの注意を受けてしまった。



 申し訳ない……



「本当に迂闊だったよ。ジェリコごめん。マハトもありがとう。食材、今、見てみるよ」


 俺はともかく、ピコラに何かあったらさすがにかわいそうなので、俺はさっそく、貰った食材の鑑定をすることにした。





 ▪️シュトローム (タラバガニに類似)


 太くて立派な足に、身がぎっしり。

 上品な味でほんのり甘い。

 爪肉がぷりぷりで美味。

 身離れがよく食べやすい。



 ◻︎使い方

 茹でる。焼く。蒸す。美味い。



 *備考 上級危険食材、取り扱い注意。


 明るさに反応し、身近なものを挟む。


 攻撃を受けても一撃では死なないが、麻痺が残るか、記憶障害になることもある。


 挟まれている間は行動不能に陥る。


 ハサミで電流を流す。必ず調理前に目を隠した状態で、絶縁布を使いハサミを外す。





 上級危険食材だからか? 説明が多いな。



 ——しかしジェリコ、よく無事だったな。





 ▪️スコンパリーレ (車エビに類似)


 火が通ると赤くなる。

 甘く、旨味が濃い。

 身に弾力がありブリンブリン。

 殻にも強い旨味がある。



 ◻︎使い方


 どんな調理法でも美味。万能素材。



 *備考


 水揚げしたらすぐ、触覚を千切るか切らなければ、触覚を震わせる独特な音と共に、瞬間移動をして消えてしまう。





 ……あの音、触覚の震える音だったのか?


 エビは、消えるだけなんだな? でも、種類が変わるとまた違うのかもな。





「ユージン、お前、外で飯は作れるか?」


 真剣に食材を鑑定していたのに、マハトはお構いなしに話しかけてきた。



「外で?まあ、直火でも色々出来るよ」


 ジェリコの事を考えたら、今から食事をするのは外がいいよな?



「なら、火を使う場所を作らなきゃだな」


 マハトはウッドデッキを降りて、少し離れた湖の辺りに向かって行った。



 ——マハトは竈でも作るのか?



 キッチンで作って、食べるのは外にすればいいかもな?


 竈を作ってくれるなら、直火焼きの料理もいいよな。



「ジェリコは、普段はこの食材をどうやって食べてるんだ?」


 水中だし、もしかして丸齧りか?



「え?アタシ達は捕まえたら、料理なんかしないで、その場ですぐに食べるわよ。エビなんてオヤツよぉ」


 やっぱり丸齧りなんだな……


 ピコラも生食だったけど、もしかして魔族は料理をしないのか?


 マハトは料理したよな。種族によるか?



「火の通った料理を食べたことはあるのか?」


 トビ族のピコラは料理を喜んだけど、半魚人の味覚は俺達とは違うのだろうか?



「うーん?ずーっと前に食べたかなぁ」


 オデコに指を当てて考えているが、記憶にないレベルでしか食べてないのだろう。



「普段、生で食べてるなら、料理された物は違和感がないか? 食べれない物はあるのか」


 新鮮な食材だ。美味しく食べてほしい。



「食べられない物なんかないわよぉ〜。アタシ、ちゃんとしたお料理って、一度食べてみたかったから、嬉しいのよねぇ」


 ジェリコは両頬に手を当てて、本当に楽しそうにしている。



「料理の話は他の奴から聞いたことがあったのか?」


 習慣がないのに、興味を持ったんだよな?



「そうよぉ。人間の物語を何度か聞いたの。その度に気になっていたのよ。だって、人間の料理って、すごく美味しいんでしょ?」


 ジェリコは、新しい味覚に期待に胸を膨らませているようだ。


 さて、どうするかな?




「ユージン!ちょっと見てくれ!」


 呼ばれたので、俺はその場を離れ、作業をしていたマハトのいる場所へ向かった。



「食べ初めは、シンプルに火を通した物からだな。慣れてきたら、色々な味にチャレンジさせるといいかもな」


 俺は大まかに料理の流れを考えながら、ゆっくりと歩いた。ジェリコは湖経由で、既にマハトの側に移動していた。



「ユージン、とりあえず火を使う場所は、こんな感じでいいか?」


 マハトはいつの間にか、石レンガのガーデンキッチンを作っていた。



 こんなに短時間で作ったのか?



「ちょ、マハトいつの間に?すごいな。いつもこんなの作ってるのか?」


 そもそも石レンガなんて、どこから持ってきたんだ?



「人間が使っているのを見ただけだ。作ったのは初めてだが、これでいいのか?」


 見様見真似で作ったにしては、かなりしっかりしている。


 俺は、触ったり、叩いたりしてみた。


「即席とは思えないほど綺麗だし、ガッチリしていて、耐久性もありそうだ」


 既に薪も準備されていた。


 マハトに薪に火を付けて貰い、火の回りも確認したが、問題はなさそうだ。



「多分、大丈夫だ。サイズも大きいし、かなり使いやすそうだよ」


 俺が感心していたら、マハトは得意げに胸を張っている。


「まあ、一度作ってみたかったからな」


 マハトは満足そうに、子供のような笑顔をしながら、炉に火を焚べている。



「しかし、鉄板とグリルグレートなんて、どうやって作ったんだ?」


 マハトは、焚べている火をいじりながら、不思議そうに首を傾げ、



「グリル?よくわからんが、鉄の防具を魔法でいくつか変形させたんだよ」


 そう言ったマハトの手元には、いつの間にか火ばさみまであった。



「……マハトは、随分と立派なガーデンキッチンを見たんだな?」


 こんなに立派なガーデンキッチンには、俺ですら出会ってないぞ?



「ん?ああ、俺が見たのは人間の王宮の庭にあった奴だからな。立派なのは当然だよ」



 マハトさん?!貴方は何者なんですか?

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