能力発現?チートを希望します。
マハトとピコラに、しっかり捏ねてもらった生地を、フィットチーネ状にし切り茹でる。
マハトに、火魔法で下処理してもらったナッツを、ピコラに剥いてもらい、
バジルとナッツは、マハトの腕力によって、ペーストになるまですり潰してもらう。
ニンニクとオリーブオイル、塩胡椒を加え、茹で上げたパスタと一緒に、さっと炒めれば、
「ランバグラスのパスタ、バジルソース風の出来上がり」
パルメザンチーズがないのが悲しいけれど、ローストして砕いたナッツを表面にトッピングしたから、食べ応えはあるはずだ。
「うわぁ!いい香りだねえ」
ピコラは鼻をヒクヒクさせながら、先に席につき。今か今かとフォークを手に、首を伸ばしてこちらを見ながら待ち構えている。
「凄い、これだけの材料で……美味そうだ」
マハトは、ソファーテーブルまで、パスタを運ぶのを手伝ってくれた。
本日のパスタ作りの功労者は、マハトだ。
怪我人のはずなのに、よく働いてくれた。
「さ、冷めないうちに食べてくれ!」
俺も、今回は一緒に食べることにした。
こちらに来てから、やっと初めての食事にありつける。さすがにお腹が空いた。
「いただきます」
俺が、ようやく食べれる事に感謝しながら、食前の挨拶で手を合わせていたら、
「ユージン、何してるの?」
その姿に気付いたピコラが、不思議そうに俺の様子を見ながら尋ねてきた。
「ん?食材たちの命を頂く事と、それを育ててくれた人に感謝してるんだよ」
とりあえず「いただきます」の意味を、俺の知る限り、ざっくりだけど説明してみたら、
「ふーん……いただきます!!」
一瞬、神妙な顔をした後、すぐにニコニコしながら、俺の真似をして手を合わせると、ピコラはすぐに食べ始めた。
「はは、いい話だな。では、いただきます」
なんと、そのやり取りを見ていたマハトまで、一緒になって合掌をしてくれた。
俺はなんだか、俺という存在を受け入れてもらえたような気がして、嬉しくなった。
「んんー!もちもち!ランバグラスの香りと、この緑色のドロっとしたやつと、カリッカリのナッツが!!一緒になって美味しい!」
好物が練り込んであるからか、ピコラはランバグラスのパスタをかなり気に入ったようだ。
頬袋にいっぱい頬張りながら、モキュモキュとパスタの弾力を楽しんでいる。
——ピコラは、食レポが上手いな。
俺は、ピコラの力強い感想を聞いて、思わず顔がだらしなくにやけてしまった。
「……これは、なんと……」
マハトは、初めて食べる料理に、意識を狩られ語彙力が消失したようだ。
つぶやいた後は、ひたすら「あぁ……」とか「んんっ」と、声を漏らしながらパスタに向き合っている。
俺も食べてみるが、普通に美味い。
「ナッツも良いけど、やっぱり、パルメザンチーズが欲しかったよなぁ」
俺がぼそっと呟いても、2人とも食べるのに必死で、全く聞いていなかった。
2人が「美味しいと」言いながら、食事に集中しているのを眺めていただけで、
乾き切っていた俺の心が、どんどん満たされていくのがわかる。
——俺はずっと、この顔が見たかったんだ。
料理を好きになったのも、単純に母親から、褒められたからだったよな……
ふと、初心を思い出せた。そんな気がした。
「ユージン!すっごく美味しかった!ユージンは食べた後にも何か言うの?」
ピコラはキラキラした目で、食後にも挨拶はあるのかと尋ねてきた。
丁度、俺も食べ終わったので、
「あるぞ。手を合わせて……ご馳走様でした」
と言って合掌して見せたら、
「「ご馳走様でした」」
ピコラとマハトは、同時に合掌した。
完食してくれた2人の皿は、ソースを残す事なく綺麗に掬われていた。
——残さず食べてくれて、ありがとう。
「はーぁ!こんなに美味しいもの食べたの初めてだ!幸せだー!」
ピコラは、いっぱいになって、丸くなったお腹をさすりながら、とてもいい笑顔だ。
——最高の誉め言葉を俺に贈ってくれたな。
「はは、どういたしまして。お口に合ったようで良かったです」
満足そうにピコラの喜ぶ姿を見ていたら、俺は、無性に泣きたくなった。
——さすがに、ここで泣けない
俺は空いた皿をさっさと集めると、後片付けのために、早足でシンクに向かった。
涙腺を刺激しないように、何も考えず、俺は心を無にしたまま、一心不乱になって、一人で皿を洗っていた。
「ユージン、お前、魔法は使えないのか?」
マハトが、いきなり背後から近寄ってきた。
急に後ろから声をかけられたので、驚きで泣きそうだった俺の感情は、見事に引っ込んだ。
「うん、俺は、なんの能力もないんだ」
——何たって『準備中』だしな。
そう伝えたら、いつの間にか手元から、洗っていたはずの皿がなくなり、ピカピカになった状態で作業台の上に並んでいた。
びっくりして、シンクをのぞいたけど、シンクもピカピカで、水滴ひとつない。
——これも、魔法なんだ……便利だな。
感心して、洗浄済みの皿を見つめていたら
「ユージン、ちょっといいか?」
マハトは、手招きして移動して行くと、俺にソファに座るように促した。
「何、大事な話?」
俺は、何か言われるのかと、少し緊張しながらソファに浅く腰掛けた。
「あー、とりあえず、これ触ってみろ」
するとマハトは、石がいくつか埋め込まれていて、模様が描かれた、怪しげな黒い板の中央に触れろと言ってきた。
「……これでいいの?」
不審に思いつつ、言われた通り板に触ると、板に埋まっていた石たちが、ポッと光った。
「ユージン、お前、強くないけど全属性だぞ?これなら、料理の下処理をするには、全く困らんだろ。まあ、練習は必要だろうがな」
今、何と言われたのか、よくわからず、
「全属性ってなんだ?」
俺は、ぼけーっとした状態で、マハトに尋ねてみたんだが、スルーされた上に
「ほら、今度はここに、血を一滴落とせ」
今度は小刀と一緒に、真ん中に窪みがある、白い角皿のような物を出してきた。
俺は、さっき言われた全属性の意味を、理解するのに時掛かっていて、小刀でちょっと傷つけるつもりが、ざっくり指を刺してしまった。
「イテッ」
鮮血が白い窪みの中にボタボタと落ちた。
「うぉっ、お前、何やってんだ」
マハトは、咄嗟に俺の指を握る。
すると、ポワッと淡く光り、マハトが手を離した時には指の傷がすっかり消えていた。
「あ、消えてる」
俺が、未だに理解せずに、ぽやぽやしているのを見たマハトが、
「お前、よく今まで生きてきたな……」
呆れたような、心配を滲ませた顔でため息混じりに言われてしまった。
いやはや、なにせ転移したばかりなんで……
「ユージンって、人が良すぎるしね」
ピコラにも揶揄われてしまう。良い人なんて久しぶりに言われ、てれ笑いでごまかした。
「俺にも、ちゃんと能力あるのか?」
俺は、何となく理解が追い付き、マハトが、何をしているのかを把握したので、尋ねると
「お、ユージン、能力、ちゃんとあるぞ?」
マハトに能力があると言われたので、俺の『準備中』だった能力が、きっと変化したんだろうと思えたので、
「本当か?ちょっと見てみる」
俺は目を閉じて、早速自分の内側を探った。
頭の中をしっかり見ると、前回と違い、簡単に以前見つけた、空間を認識する事ができた。
黒板には——
お待たせしました!おめでとうございます!
あなたの能力は『鑑定能力』です☆
▪️鑑定能力とは
調べたい対象を見つめ能力を発動する事で、
対象のステータスや、状態などを確認できる
と、はじめに記載されていた。
——お!異世界チート、ついに来たのか?
まだ、後には続きがあり、そのまま読み進めてみたが……
しかし、あなたの鑑定能力は——
——『ただし食材に限る』となります。
驚いたかな?落ち込むことはありませんよ!
*食材であれば、利用方法から、活用事例
オススメレシピまで広く網羅します。
どうぞ、異世界で、美食ライフを存分に楽しんでくださいね!
美味しい物、いっぱい見つけて下さい☆
能力を配布した女神より♡
……
…………
………………
「だあぁぁぁぁっ!!」
俺が。急に叫んだので、ピコラもマハトもびっくりしたのか、ギョッとしたまま、こちらを観察していた。
「ユージン、どうだったの?!」
「何か不都合があったのか!?」
2人は、心配そうに俺をを見ている。
まだ出会ったばかりの2人なのに、一緒にご飯を作って食べたからだろうか?
2人には、全く警戒心が湧かないよな。
「俺の能力『鑑定能力』だったよ」
俺はわざと隠してそう伝えたら、
「そうか!!凄いじゃないか!」
マハトは、手を叩いて褒めてくれた。
だよな、そう感じるよな?
「ユージン、良かったねぇ」
ピコラは労ってくれた。
俺の能力は『準備中』だったもんな。
「……『ただし、食材に限る』だってさ」
——俺と同じ絶望を、2人も味わうといい。
追加の言葉に、俺が、ぬか喜びした後、落胆した事を、2人は一瞬で理解したのだろう。
般若のようになっている俺の形相に、2人揃ってガチっと固まると、
「よし!俺がでかい魚を釣ってきてやろう!」
すっくと立ちあがると、マハトは逃げるように外に飛び出して行き、
「あ!ああ、ランバグラス、収穫しなきゃ!」
ぴょんと跳ねた後、ピコラも慌てて外へ飛び出していった。
残された俺は、悔しくてやり切れず、鬼の形相のまま、キッチンに向かうと、食糧庫の中からバジルの香りの草をガシッと掴み
「鑑定」
と、唱えてみた。
▪️ルーチェグラス(バジル)
甘い香りに、ほんのりスパイス感。
葉は柔らかく、そのままでも食べやすい。
加熱すると香りが飛びやすい。
◻︎使い方
生で食べる。
仕上げの彩と風味。
パスタソース←NEW
*備考
育つ環境によって、色や香りが異なる。
どうやらレシピは、更新されるみたいだぞ。
読んで頂きありがとうございました٩( 'ω' )و
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