Edward
『下女が連れてきた疫病神が…』
6歳の頃に浴びせられた冷たい言葉
ボクの微かな記憶の中で
未だに鮮明に覚えている言葉のひとつだ
ボクは貴族と下女の間に生まれた子供
幼い頃に貴族の家を追い出されてから
貧民街で暮らしていた
ボクの実母は根が腐っているような人間だった
酒に溺れ男に沼り最終的にドラッグ浸けになり
ボクが17の時に居なくなった
ボクは12歳から働いた
身寄りのないボクのことを受け入れてくれた
町工場の人々
靴を買えるお金もなく服もボロボロで
清潔感なんか程遠い世界だった
そんなボクにも大切と思える家族や親友がいる
家族は小さい頃お父様に買って頂いた人形だった
金髪のウェーブの髪が綺麗な青い瞳の女の子の人形
名前は『ラン』と名付けていた
そして同じ貴族出身のレオ
後に一緒に『Mon petit trésor』を開店することになる
大切な相棒だ
Mon petit trésorはボクの生涯の宝だ
ボクが作り上げた人形達には必ず幸せになってほしい
そう願い人形を作り続けている
”Mon petit trésor”それは
”ボクのちいさな宝物”という意味
この腐った人生の中のほんのひとつの
大切な宝物
それが”人形”なんだよ
ボクが生まれてきた意味なんて
なんにもない
ただ、ボクと同じような境遇の子供たちに
人形を渡してあげたい
いつしかそう思うようになっていた
Mon petit trésorで観賞用人形を販売する裏で
貧民街の子供たちに人形を渡し歩いた
なにかの希望になるように…
生まれたことを後悔しないように…
大切な”家族”としてずっと傍にいれるように…
ボクとレオが20歳のときに
共同資金で建てた観賞用人形店『Mon petit trésor』
1階は人形達の居場所として
小さいが日当たりのいいフロアがある
2階はボクとレオの家兼ボクの作業スペース
小さい家だったがなにより居心地が良かった
人形師として働く毎日は
幸せに溢れていた
人形に命を吹き込んで
作り上げる日々
出来上がった人形達の声や笑顔を見れることが
生きがいで幸福だった
弟子と呼べる存在もできた
しかし醜い血縁だけがボクを苦しめる
切っても切れない醜い血縁
ボクが26の時に実母が姿を現したのだ
エド、あんたいい店持ってるじゃない
お金、あるんでしょ?出しなさいよ
あたしはあんたの母親なのよ!?
このままこいつの存在が恐怖と化して
ボクの人生を苦しめ続けるのかと思ったら
正気で居られなくなった
レオ、この店の権利は全てキミに委ねるよ
契約書も書き換えよう!
今すぐにだ!!!
この店をあの女に取られるくらいならボクは…
エド!落ち着いけ
これが落ち着いていられるか!!!!?
くっそ…こんな人生ってあるか…
その後この店の権限は全てレオのものになった
そしてボクはランを抱きしめたまま眠るように亡くなった
あとのことはレオと弟子に任せると遺書を残して
ボクが作り上げた数千の人形たち
キミたちのことは愛してる
心から愛してるよ
でも、ごめんね
もう、ボク…疲れたんだ…
これで最後だね
おやすみなさい。




