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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

地味すぎるとパーティーを追放されたおっさん護衛士《ガーディアン》スローライフを目指して一からやり直すことにしました…って気が付いたら最強のモンスター娘たちに懐かれてしまっていたんだがΣ(・ω・ノ)ノ!

作者: 壱田一
掲載日:2025/10/18


「ジン、お前はクビだ!二度と俺たちの前に姿を見せるな!」


さっき言われた言葉が頭の中で反響している。


「ちくしょうっ!なんで、俺が…はあ…」


俺は空になったグラスを片手に、バーのカウンターで溜息をつく。


「あらあらジンちゃん、今日はずいぶんとネガティブねぇ~。

何か嫌なことでもあったのかしら?」


そんな俺のグラスに酒を注ぎながら、このバーの店主であるダイヤモンドアスチルベ・リィンは色っぽく笑った。


明らかに偽名であるが、通い続けて早30年と少し。もうそんなことなど気にならない。



「…リィンママ、おかわり…」



俺の名前はジン・オオシマ。

ついこの前50になった、おっさん冒険者だ。

職業は護衛士(ガーディアン)をやっている。

守るが華と言った、全く目立たない超不人気職業である。


大盾のみを使って戦う、唯一の職業で、攻撃には全く向いていない。

まあそれもそうだ、なんせ大盾だけで数百㎏。

それに加えて、全身を守る超重装甲鎧もあるので、

初心者はこの重量に筋肉が耐えきれず、すぐにやめてしまう。


俺が護衛士を続けれているのは、筋肉のエキスパートである師匠と出会えたからだ。

そう思えば、俺はずっと人脈が狭いんだな。

俺の知り合いなんて、リィンママ、師匠、あとあいつら…


あああ!また、イライラしてきた。


「聞いてくれよ、リィンママぁ…。俺さぁ、

S級パーティー『雷神の槍』で20年ぐらい、互いに信頼して背中合わせで戦ってきたんだぜ…

なのに、いきなり追放されたからさ、『なんで?』って聞いたのよ、

そしたらパーティーリーダーのヨハン、あいつ何て言ったと思う?」


「さあ、あなたの事が嫌いになったとか?」


「もっとひどいんだよ!『お前は地味すぎる!』だって!

何が地味すぎるだ!何回、お前らのために死にかけたと思ってるんだよ!」


護衛士の仕事は、敵の攻撃を引き付けること。

すなわち、『挑発(ヘイトアップ)』と『防御(ガード)』、自分専用の『治療(ヒール)』。

初心者冒険者ぐらいしか使わない初級スキルを回して、とにかく攻撃を受ける。受ける。受けまくる。


やってることは地味だがパーティーには貢献できていると思っていた。彼らにはそうは見えてなかったようだが。この業界で40年はやってきて、誰かが追放されるのは何度も見てきたが、まさか俺がされるとは夢にも思っていなかった。

ヨハンだけでなく、その他のメンバーからも不要と判断されたようで、理由を聞いただけで


「あら、その程度も分からないの?随分と老けたのね」

「この程度の人間が、私たちのパーティーにいただなんて、恥というものが存在しないのかしら?」

「俺は間違っていた…。こんな俗物は出会った瞬間に殺すべきだったのだ」


とかなんとかボロックソに言われ、

最後まで聞く事すら出来なかった俺は、逃げるようにパーティーを脱退した。

というか思い出してみたら最後だけ殺意が強すぎるだろ。


「確かにさぁ…ヨハンたちみたいにド派手でカッコいい必殺技で戦えてたら…って何度思った事か…。だけど、主役はあいつらだから、なんて考えでずっと耐えてきたけどさ…。

その結末がこれじゃあ、やりきれないよ…俺の20年間何だったの…?」


「その…どんまい」

「まあ…元気出せよ、好きなもの奢ってやるからさ」


常連たちから慰めの声が飛んでくる。

気持ちは嬉しい。嬉しいんだが、今欲しいのはその言葉じゃないんだ。

なんだろうか、どんな言葉が欲しいのか。俺にも具体的には分からない。

はあ…お先真っ暗だな。こうなったらもう……


「あれ?ジンさんじゃないですか!」


バーの扉を開ける音と共に、懐かしい声が聞こえた。

跳ねるような緑の髪をした彼女は、大型犬の様に俺の背中に抱き着いてくる。


「…リット?」

「はいっ!貴方の後輩リット・セラミスです!」


彼女の豊満なそれが背中にのしかかる、その感触で酔いが急速に冷めていく。


「…うおっ!?いきなり抱き着くな、人前で!」

「あれ?人前じゃなかったらいいんですか?」

「そういう訳ではない!淑女としての心構えをだなーーー

「そこらにしときましょうぜ、ジンさん。リットは大型犬なんですから、マナーとか苦手なんですよ」


続けて扉から入ってきたのは、くせ毛の黒髪を伸ばした眼帯の少女。

にっと笑い、リインママに果実酒をオーダーした。


「リットにセネガル…お前ら随分と大きくなったんだな…」


「ひひっ、めっちゃ久しぶりっすからね。もうあたしたちも20歳、立派な大人の仲間入りっす!ジンさんとの再会を祝して、かんぱーい!

(ぐびっ)……うえっ…気持ち悪…」


おい!?そこまで酒に弱いのになぜオーダーした!?



◇◇◇



翠緑の髪をした大剣使い、リット・セラミス

曲刀と円盾で攻守一体に戦う司令塔、セネガル・ウェインホーン


2人で『烈風の大剣』というS級パーティーを組んでいる。

個人でも、200人いるS級冒険者の中にランキング入りしている、凄腕たち(こう見えて)だ。


2人ともかつては孤児だったが、見かねた俺が拾って、なんやかんやあって孤児院に入ることになった。

数年前に、ふと冒険者ランキングを見たら2人の名前があって、飲み物を全て噴き出したのは覚えている。孤児院を卒業した後から一回も会わなかったが、まさかここまで立派になっていたとは。


「聞きましたよ、ジンさん。ずっと思ってましたけどヨハンって馬鹿ですね!」


リットのあんまりにストレートな言葉にまた酒を吹き出しそうになる。

あぶない、あぶない。

隣を見ればセネガルも笑いをこらえていた。


「っていうかそんなに知れ渡ってんのか?なんか恥ずかしいな…」


「はい!ヨハンの鼻糞野郎、自分で吹聴してましたから!

そのせいか、『雷神の槍』は引き抜きによる脱退者がすごいんです!

私情で無理やり辞めさせられちゃあ敵わない、ってなってたところに

ほかの優良パーティーから誘われたってパターンが一番多いそうです!」


ええ…そんなに俺を追い出せたのが嬉しかったのか?

そんなにくだらない事で自滅していくなんて…なぜか自分のことのように恥ずかしくなってきた。

いやそれよりも、リット、ヨハンの事を鼻糞野郎とはヒドイ言い様だな。


「まあ『雷神の槍』は近いうちにS級から転落するでしょうね。一度こうなってしまったら大抵止められない。ヨハンも反面教師の一人になったって事っスわ。

で、こっから本題なんですけど、あたしたちはもっと上を目指したいんです。

…うえっ」


セネガルが俺の肩にもたれかかってくる。滅茶苦茶酒臭い。


「ジンさんって今フリーなんすよね?だったら、あたしたちのパーティーに入ってくれませんか?」


え?俺が?何で?パーティー所属を取り消されたせいで、今やただの最底辺Gランク冒険者だぞ?


パーティーメンバー全員で括られるパーティーランクと違って、冒険者ランクは一人で倒した魔物の強さや数でポイントが与えられていく方式だ。


そのシステムのせいで、

俺みたいなサポート特化職。例えば回復術師(ヒーラー)法陣術師(ルーンウィッチ)薬師(メディア)そして護衛士(ガーディアン)


1人では攻撃のしようのない職業でポイントを上げるのは至難の業。狩ってくれる仲間がいて初めて真価を発揮する職業では大抵G~Eランクまでしか上げられない。


まあ傷心に暮れている時点でお察しだろうが、

(さっき言ったような気もするが) 俺は当然Gランク。


さっきも言ったが世界には俺一人では倒しようがない敵だらけで、ヨハンたちと知り合ってパーティーを組んで、そんな幸運続きで、俺はたまたまSランクに行けたに過ぎない。


当然、俺個人は大した実力では無い。リットとセネガルのような少数精鋭のパーティーに、何故呼ばれたのか。

意味が分からずに途方に暮れる俺の姿を見て、リインママが助け舟を出してくれた。


「まあ、いきなりパーティーに入らなくてもいいんじゃない?

まずはいくつかのクエストを一緒に受けてみて、相性とかを測ってからでも遅くはないんじゃないかしら?」


「たしかに。ちょっと先走りすぎちゃいました、すんませんジンさん」


「いや、誘ってくれてすごい嬉しかった。セネガルとリットと並べるかは分からないけど、俺なりに全力は尽くしてみる」


何とか気持ちを伝え、今日はお開きとなった。



◇◇◇



数日後、俺たちは一緒にクエストを受けてみることにした。

なるべく簡単な方がいいと言う事で、


『C級クエスト・迷宮浅層で異常繁殖したゴブリンの討伐』を受けることになった。


「いやあ、ワクワクするっす。成長したあたしたちの力を、ジンさんに見てもらうことを、冒険者になってからずっと夢に見てたんですから!」


「はい!ぜひ、その眼球をかっぴらいて見ていてください!」


「はは、俺も楽しみだよ。お手柔らかに頼むね」



◇◇◇



「ぐぶうううう…!!!」


お、さっそくいるな。迷宮に入って数分、角を曲がった所にゴブリンの斥候が見えた。

何やら汗をかいて、周囲を血眼で見回っている。怯えているのか?


「よし、2人とも、まずは様子を見て…


「先手必勝ォーーー!!!吹き裂け、『颪牙(スピニングブレード)』!!!」


ザシュザシュザシュ!!!


リットの一撃で、ゴブリンは一声も発せず、ずたずたの細切れに引き裂かれた。


出会い頭にこれは、ちょっと同情してしまうかもしれない。


リットは持ち替えたナイフでゴブリンを解体する。


「よっしゃありました!ゴブリンの魔晶石!ゴミクズ同然ですが無いよりはまし、明日のお酒のおつまみがちょっと豪華になる事間違いなしです!」


「ジンさんこっちっす。」


セネガルは慣れているのか、何事も無かったかのように、次の階層に続く階段を発見していた。

何だこの温度差、風邪を引いてしまいそうだ。



◇◇◇



洞窟状の迷宮の中を声も無く進んでいく。

ゴブリンと何回か接敵したが、俺の出番は特になかった。2人とも慣れた手つきで殺りまくっている。


「ん~、異常繁殖というわりには、ゴブリンとあまり出会わないっすね。最悪一週間はかかるものと覚悟していたけど、この調子じゃあと数時間もしないうちに迷宮の底までたどり着くっすよ」


「ははは!私たちのオーラに恐れおののいて自ら引きこもったのでしょう!底に女子供を隠し、男衆で時間稼ぎをするという常套句なぞ、殲滅すれば無意味に帰きすが運命につき!」


ゴブリンの返り血を拭いながらの会話、すっかり熟練の冒険者だ。

2人が成長した感動と、狂戦士(バーサーカー)化したリットへの恐怖の狭間で俺は微妙な顔になっていることを自覚する。


2人が言う様に、俺たちは迷宮の深部まで来ている。

だっていうのにさすがに、せいぜい7匹程度しか出会わなかったのはおかしい。

何か、悪い予感がするような…


「おっ!最深部の広間に続く大扉がありますよ!一番乗りは私だーーー


「危ないリット!!!」


俺は急いで、突撃していくリットを片腕で押しとどめる。

大扉が真っ赤に染まり、ぷつぷつと泡を見せ始める。


「2人とも退却!!!後ろに!!!急げぇーーー!!!」


俺たちが後ろへ全力疾走し、階段上部に何とかついた時。


ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


扉が真っ赤に溶け、炎がさっきまでいた場所を包んだ。

こんなものゴブリンじゃあり得ない。


炎のその向こう、ドロドロに溶けた大扉のその向こうで、巨大な体躯の揺らめく影が、吠えていた。


「この大きさは竜…炎の大きさから考えて、Aランク相当のオスの赤竜(レッドドラゴン)か!」


「赤竜ですか…私たちはまだ戦ったことが無いっすね…」


「ドラゴンですと!?神話に伝説に名を残す怪物、倒す相手としてこの上なきではないですか!ははははははは!!!」


狂戦士バーサーカー化しているリットをなだめ、これからどうするか、3人で額を突き合わせる。


「倒すべきです!伝説では竜は宝の番人!金、富、名声、これらを拒む理由の方が少ないでしょう!!!」

リットの意見。よっぽど血に飢えておられるようだ。


「退却するべきっす。ジンさんには悪いけどA級相当なんてただの推定でしかない。ジンさんとの連携も未知の部分が残るし、いったん戻って増援を呼ぶべきっす」

セネガルの意見。現状を冷静に分析しているな。


うーん、どうすべきか…



じーーー

じーーー



…ああ俺か。3人だもんな、しかも対極の2人だ、最後に決めるのが俺になるのもやむなしか。


まずセネガルの意見は納得できる。俺もこちらに両手を上げたい。

しかし、言った所でリットは納得するのか?

他のパーティーとの合同になると、当然報酬は分担される。


旨味だけで言うなら絶対にこの3人で倒した方がいい。というか、こんなこと言っちゃあ悪いが、リットに何されるか分かったもんじゃない。正直怖い。

となると…


ーーー「分かった。リット、セネガル。竜を倒しに行こう」


「はい!!!!!!そうするべきでしょう!!!」


「ジンさん…危険すぎるっすよ!?」


「大丈夫、無理と分かったら即効退却しよう。力を測るだけならまだ安全だし、もしもほかのパーティーと合同で倒すことになっても、俺たちの働きあっての事として報酬を多めに譲ってもらえるだろう。

いいな、リット?」


「もちろんです!はははははは!!!ああ、血沸き肉躍る!ついに私たちも叙述詩の仲間入りか!」


ねえマジで何があったの?俺が拾ったときは普通の明るい子だったんだけど。



◇◇◇



ドロドロに溶け切った大扉を脇に、俺たちは広間に踏み入れた。

…予想通りだ、喜ぶべきなのだろうか?


広間の奥に陣取るは、我が物顔で眠りに耽る赤竜。

その後ろにはゴブリンの骨で作られた巨大な巣が見えた。


よっぽど満足らしい、すぴーすぴーと鼻息を立てている。

どうやらゴブリンたちはまとめて赤竜の餌にされてしまったみたいだ。


最初に出会ったゴブリンが怯えていた訳が分かった。


経験が物語る。この竜は難敵だ。

おそらくゴブリンたちでは敵にすらならなかった、一方的な虐殺だったろう。


幾度となく様々な難敵と戦ってきたが、いまだに戦うのが恐ろしい。

正直、勝てるか分からない。それでも戦るしかない。


覚悟を込め、息を吐く。

扉を溶かした熱気はとうに過ぎ去ったはずなのに。寒い訳がないのに。汗が止まない。


「セネガル、リット。俺の後ろに。」


2人はうなずいて、構えた大盾の後ろに息をひそめた。


「…!」


俺たちの気配に気付いたのか、赤竜が目を覚ます。


リットの言う通りだ。今俺たちは叙事詩の真っただ中に在る。

雲を突くような巨体、ぎらぎらと乱暴に輝く鱗。

竜。まさしく、神話の怪物。人間が太刀打ちできるのか。


「グルルル…」(カチッカチッ)


鉄床を叩くような、あるいは舌を鳴らすような、鋭利な音が竜の喉から発せられる。


そういや昔に魔物研究者の友人が言っていたな。

『竜は喉にある発火器官で炎を着火させるんだ』と。


「セネガル、リット。炎だ!」


竜が顔を上げた!来る!


「スキル発動!我を凝視せよ、『挑発(ヘイトアップ)』!」


竜が口を開くと、喉奥から轟声と共に、全てを焼き尽くす炎が押し寄せる。

赤の波、直前の『挑発』の効力で俺に集中している。

体を焼く熱気は、まだ耐えられる範疇だ。


炎が床を焦がし、煙がぶすぶすと出る。

その煙に紛れて、リットとセネガルは竜の側面に回り込む。


流石、S級冒険者だ。何も言わずとも己がすべきことを理解している。

さて、俺もまだまだ耐えなくちゃな!!


「グルルル?」


竜はリットとセネガルに気付いたのか、首を傾け、横を見ようとする。


「おい!誰から目を背けてやがる!」


俺は解体用のナイフを投げ、再度『挑発』を上書きした。

ナイフは竜の胴体に当たったが、カンッと音を立て跳ね返った。鱗がだいぶ硬いな。だが…


「グルッルアアアアアアアアアア!!!」


ちょっかいに怒ったのか、竜は鎌首をもたげて俺を睨みつける。

ははははっ、いいぞ!もっと俺に夢中になれよ!


…いかん、リットの笑い方が染みついてきているな。

……え?リットの狂戦士(バーサーカー)化って俺が見本だったりして?


カチッカチッ


また炎を吐くつもりか。

顔を上げ、轟炎を吹き降ろそうとしている。その眼は依然俺を睨んだまま。


はっ。そんな長いタメに、S級冒険者が2度も付きあう訳ないだろ?


「吹き裂け、『颪牙スピニングブレード』!!!」


「曲がり裂け、『閃光速雷尖牙斬(デッドスピードオブヴァルカ)!!!』


両脇に忍び込んだ2人の、交差する一撃が竜の胴体を切り裂いた。

全てを絶つ強烈な一撃のリットに、圧倒的な速度で繰り返し刻むセネガル。


鱗を絶ち、柔らかい肉をめりめりと引き裂いて、竜の臓腑を完膚なきまでに両断する。

暖かな鮮血を吹き出し、竜は上半身と下半身が別の方向を向いたまま、地面に倒れこんだ。


俺たちの、圧倒的な勝ちだ。

…やっぱあの『颪牙(スピニングブレード)』を出会いざまにぶつけられたゴブリンには同情を禁じ得ないだろう。


「ジンさん!!!大丈夫っすか!?」


セネガルが心配そうに俺に駆け寄ってくる。


おいおい、この程度で傷つくほどやわな鍛え方はしてないぞ。

…って、ちょっとセネガルさん!?なぜ俺に抱きついて!?


「よかった…炎に包まれた時に、姿が見えなくなってたからっ…もう、不安で…たまらなかったんです…」


…そうか、硬さが持ち味の竜への攻撃でなぜ速度に特化した技を使うのか、冷静なセネガルらしくないと思ったが、俺を案じてくれてのことだったのか。


「…ありがとう。俺は大丈夫だ、なんたって2人が一瞬で倒してくれたからな!最高だったぞ!」


そう言って俺はセネガルの頭をわしわしと撫でる。


セネガルは下を向いて俺の鎧に額を押し当てた。


…?あれ?俺の伝え方が間違えていたのか?

………いや、少し待て。昔の仲間から聞いたことがあるぞ、女性にとって髪を整えるのは世界の終わりと同じぐらいに大切な事らしい。つまりだ、俺はセネガルにこの上なく恐ろしい失礼を犯してしまったのでは!?


「あ、あのー、セネガルさん?」


セネガルは俯いたまま何も言わない。


あ、ああ、ままままずい、彼女を怒らせてしまったに違いない。

お、俺にできることは…


「俺にできる償いがあれば何でもします!!!」


膝をつき、両腕を地面に密着させ、セネガルに首を垂れる。

東方最強の詫び、すなわちドゲザである!


「え、ええええ!?何してんすか!?あたし、何かしましたっけ!?」


◇◇◇


「ああ…そういう事っすか。まあ、あたしは気にしないっすよ。生まれつきクセ毛なんで」


ふう…今回はセネガルが許してくれたからよかったが、ほかの女性相手に無遠慮にやってしまったらただでは済まなかっただろう。これも学びとしていかないとな。


そういえば、リットは何をしているんだ?


「ふうう…さすがに竜の筋肉は違いますね!魔晶石まであとどれほど掘ればいいのか…ああ、もっと早めなくては!」


リットは一人で竜を解体している。

大剣で鱗を、解体用のナイフで肉と内臓とを。

鮮やかな手さばきだ。2刀のナイフで繊維を繰り返し繰り返し断ち切っている……ん?

あのナイフ俺のじゃね?


それにしても、宝には一瞥もくれずにか。

始まる前は一番興味津々かと思ったが案外そうではないのか?


セネガルもリットを手伝いに走っていった。

解体に関してはあの2人に任せておこう。俺は得意とは言えないから。


では、広間の奥、ゴブリンの骨が洞天にまでそびえる竜の巣の中に何があるのか。

予想としては、竜がため込んだ宝。

繁殖期のメスの竜だったら卵という線もあっただろうが、こいつは独り身のオス。まあ、ありえんだろ。

さて、確かめに行ってみよう。



◇◇◇



ぎしっぎしっ



「ぐうっ、死臭がすげえな…気が滅入ってしまいそうだ…」


巣が崩れないように気を付けながら、骨をかき分けて進む。


仮に崩れたとしても、洞窟が崩落するような事態にはならないだろうし、

俺だったら、幾らあろうと骨は骨。積み上げられた骨程度で俺は潰れたりはしない。

刺さったら痛いだろうがな。


◇◇◇


おっ、そろそろ一番奥かな?


なにやら、あるていどの空間が作られている。

その中央に鎮座するそれは、「…竜の卵?」


真っ赤な卵がそこにあった。

大きさは俺の腰ぐらいまで。ゴブリンの骨ではない、羽毛のような巣に寝かされている。

殻一面に奇妙な模様、否。読むことが出来そうにない複雑な文字と、壁画のような絵が彫られている。


盾を持った男、紅い髪の少女、四体の巨大な竜、世界樹、

天に近づく世界樹を引きずり降ろそうとする、先ほどの四体の巨大な竜たち。

そして、その中央で光り輝く、大盾の男。


明らかに物語(ストーリー)性が存在する絵も気にはなるが、今はそれどころではなかった。




卵がひび割れている。

ぴきりぴきりと音を立て、ぐらぐらと。


卵の揺れが激しさを増す。中の存在が暴れている。

だんだんと割れ目が開き始めてきた。


中は糸のようなもので覆われていた。

そしてその糸も裂けはじめ、卵が完全に割れる。


卵の中には少女が眠っていた。

卵に描かれていたのと同じ、真紅の髪をした少女。


服とも呼べぬ布切れを身に纏い、くうくうと寝息を立てている。

そこまでならただの怪奇的かつ神秘的 (即ちさっぱり訳が分からない) だけの少女と呼べるだろう。


しかし、決定的に人と違うところがあった。

尖った耳、真っ赤な角。しかも華奢な両足の間から、竜特有のぶっとい尻尾が飛び出ている。


「…なんだこりゃ…俺はどうしたらいいんだ?」


情報量が多い。多すぎんだろ。

脳はさっぱり動かん。しかも勝手に混乱を口走る始末。


とりあえずセネガルとリットと合流して…

それから…。それから、冒険者協会の救援を呼ぼう。こんな案件、俺らの手に負えるわけがない。


俺は2人のもとへ駆けだそうとする。



「うぅん…」



がしっ




小さな手が、それを許さなかった。


いつ目覚めたのか、少女が立っていた。

俺の手を掴み、じっと見つめてくる。


髪や角、尻尾と同じ。真っ赤にぎらぎらと輝くその瞳に射られ、俺は動けなくなる。

燃えるような煌めき、縦長の瞳孔。

明らかに人ではなく。であれば魔物なのか、だが、俺の本能は否定を叫ぶ。


彼女は魔物などに非ず。

遥かに高次元。

本能が叫ぶその喉奥に、抗えぬ恐怖が見え隠れしている。


いつ敵意を見せるのか。いつ手を握りつぶされるのだろうか。

もしもそうなったのならば、速やかに逃げられるように、身構える。







「…お父様?」








「…え?」



何だそれは。その言葉は。

全く警戒していなかったその言葉は、俺に奇妙な脱力感をもたらした。

死線特有の極度の緊張、それが一気に浴びせかけられる。


笑っていた膝が崩れ落ちた。

俺は手を掴まれたまま、地面に倒れそうになる。


少女は手を放し、崩れ落ちようとする俺の体を胸で受け止め、頭に手を回した。


「大丈夫だよ、護人(もりと)との戦いで、随分と疲れたんだね。

テュフォンの胸でぐっすりとお眠り?」


「テュ…テュフォン…?」


「うん、それが私の名前。

生まれつき覚えてる、私のたった一つの宝物。

これを最初に明かすのは。ジンお父様、あなただって決めていたから」



…ははっ、何だよそれ。

だんだんと温かさが脳を包んできた。


ああ、なんか眠くなってきたな。

こんなに大切に思われてんなら、もうなんだって。


…そうか。

俺は誰かに欲されたかったのか。

出会ったばかりだというのに、全く俺ときたらちょろすぎんだろ。


やさしさが少しずつ、瘡蓋になる。心が少し軽くなっていく。


ああ…もう少しだけ、生きてみてもいいかな…。


そんなことを思いながら、温もりに包まれながら、涙を流しながら。

俺は眠りに引き込まれていった。


しかしこの時の俺は知る由も無かった。

この出会いが、世界に眠る真実を暴くことになるなんて。


更に、

テュフォン、そして残り3人のドラゴン娘とハーレムを築くことになるなんてーーー


始めましての方もそうでない方も、ここまで読んでいただきありがとうございます!

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作者の励みになります故。

もし好評だったら連載版も書こうかな?


ここから先はキャラクターのプロフィールを書いています。

細かい設定が気になる方は是非ご覧ください。


ジン・オオシマ

188㎝・150㎏・50歳

かなりの体重だがほとんど筋肉。50とは思えぬほどムッキムキで、健啖家。酒は極力飲まない主義だが今回は例外。追放されたことは彼の心に深い傷を残したのであった。小さいときのことはあまり覚えておらず、気が付けば冒険者になって、大盾を握って仲間を守っていた。孤児院で育ち、冒険者業で稼いだ金の7割を寄付している。初恋はそこのシスター。しかしそのシスターは先に卒業した先輩と結婚しため、幼いながらにド級の脳破壊を喰らった。その傷はいまだに癒えていない。趣味は筋トレと散歩。動物に懐かれにくいことを気にしている。


リット・セラミス

159㎝・80㎏・20歳

主人公から恐れられている狂戦士。しかし意外と乙女なためそれを直接言われると傷つく。セネガルと同じく、自分を拾ってくれたジンに深い感謝をしており、成長した姿を見てもらうため奮起したのだが、かえって仇となってしまった。いつもは優しく明るいためよく人の相談に乗っている。人の機微に疎く、今回のジンみたく積極的なスキンシップに加え、同じ視点で相談に乗ってくれるため、冒険者仲間からつけられたあだ名は『女の敵』。人生で一回ぐらいは同性にメロる瞬間ってあるよね。多分。


セネガル・ウェインホーン

158㎝・69㎏・20歳

ジンを強く慕う。いつもは本心を隠して飄々としているが、ジンを気遣うあの瞬間は本当に焦っていた。

生まれは遠くの民族で、服の下には民族特有の刺青が彫られている。眼帯の下にも実は…

街の片隅で凍えていた所をジンに拾われ、以後は孤児院で育てられることに。ジンに憧れ、冒険者を目指すことを決意した。他が怖く、自分をさらけ出すことを恐れ、リットとジン以外の人間とは最低限しか関わらないようにしている。趣味は読書、小説執筆。


テュフォン

143㎝・30㎏・0歳

人外最強ドラゴン娘その1。一人称は私だが、ジンの前ではテュフォンに変わる。普段は落ち着いているが、ジンの前では好奇心旺盛積極的になる。かー、見んねリット!卑しか娘ばい!

好きなものはジン。今のところネタバレにならず書けるのがこれぐらいしかない。


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