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9.梅雨にご用心



…………。


熱い。


あっついっ。


そして、超絶ジメジメしてる。


昨日から梅雨入りしたらしい。

どうりで毎日うっとうしいわけだぜ。


だが、なによりもうっとうしいのは……。


クラスの連中、全員が汗をかきまくってムサ苦しさが爆発していることだ!


……かくいうアタシも汗ビショだ。

人のことを言える立場じゃないのはわかってる。


……でも。


で、もっ。


わかっていても、眼前に広がるムサ苦しい景色がめちゃくそイライラするんだーー!




「ふう……あっつい……」




ん……?

この声は愛美?


左をチラ。




っっっーー!!!




な、なんてことだ……!

まま、愛美の、愛美のうなじに、じじ、じっとりと、じっとりと汗があああっ!


いっ、いっ、いっ、いっ、いっ、色っぽいいっ!!!


まま、愛美さん!

そ、それはちょっと妖艶すぎやしませんかっ⁉︎

妖艶すぎて、もはや18禁映像になっちまってるよっ!


や、やばい……。

ムサ苦しくてイライラしてたのは一気に吹き飛んだが、今度はムラムラして頭がおかしくなりそうだ!


まずい、これはまずいぞ!

 

もうすでに、妄想の中でアタシが愛美にとんでもない破廉恥な行為をしてしまっている!(※注 現在、百合子の妄想映像にはモザイク処理をかけております)


だ、だめだあああっ!

朝っぱらからこんな妄想していいわけねえだろっ!


わ、忘れるんだ!

今見た愛美のエロすぎるうなじを全力で忘れるんだ!


だが、しかし!


いったい!


どうやって⁉︎




…………。




しりとりをしよう。

1人しりとりをして、気をまぎらわせるんだ。


そうと決まればサッサと始めるぞ!

一刻も早く、この18禁モードの頭を切り替えるんだ!


よし、スタート!


しりとり。

リンゴ。

ゴマ。

愛美。

愛美……?

愛美。




って、おおおぉぉぉぉぉいーー!




い、いきなり愛美が出てきちまったあ!

せっかく頭ん中が全年齢モードになったのに、またしても18禁映像が……!


ああもう、やり直しだ、やり直し!

もう一回いくぞ!


せえの!


しりとり。

リス。

スイカ。

カメ。

メガネ。

ネギマ。

愛美。

愛美……。

愛美?

愛美の……

うなじ。




って、だから、だめだっつーのぉぉぉ!!!




やばい、どうしてもすぐ愛美にたどり着いてしまう!

し、しりとりがこんなに危険な遊びだったなんて……とんだ誤算!(※注 しりとりは大変安全な遊びです。皆さんは安心してお遊びください)


しりとりはだめだ、ほかの方法に切り替えなければ!

どうする?

ほかの方法っつったって……。


…………。


円周率。

よし、円周率を暗唱して気をまぎらわせよう。


えーっと。

3.141592……。


…………。




終了チーン




あ、あほか、アタシは!

普通に考えて円周率なんかすぐ終わっちまうだろうが! どんだけ冷静さを欠いてるんだ!


……つーか。

何気に小数点第6位まで言えた自分をちょっと褒めたい。


あああああ!

だから、今はそんなことどうでもいいって!

ええっと、次は?

次はどんな方法で気をまぎらわせたらいい⁉︎




フワッ……。




えっ?

左から、かすかな風が……。


左をチラ。




っっっーー!!!




ま、愛美が、教科書をウチワ代わりにして顔をあおいでるぅぅぅ!!!


あああっ!

や、やめてくれ!

そ、そんな風を!

そんな18禁全開のエロい風を浴びちまったら、アタシの理性が崩壊するぅぅぅ!!!(頭を両手でワシィッッッ!)


「あっ⁉︎ ご、ごめん、百合ちゃん……!」

「え?」

「ついそっちに向かってあおいじゃって……汗、臭かったよね?」

「…………」

「………… (ションボリ)」

「そ……」

「……っ?」




「そんなわけ、ねえだろおおおっっっーー!!!」


「っ!!!(ビクウッ!)」




「い、今の風は、最高にエロいい匂いだったに決まってんだろうがっ!!!」

「えっ……⁉︎」


はっ!

や、やばい!

本当のこととはいえ、つい超ド級の変態発言をしてしまったーー!


「エ、エロいい匂いって……ど、どういうこと? そ、そんなに、変な、匂いだった?(カアァァァ)」


いやいやいや、ちち、ちが、違うんだっ!

ああ、もう!

どうしたらいいんだ!

どう取り繕えばいいんだー!


「エエエ、エロいい匂いってのは、その、なんつーか……そう、イ、イチゴの匂いってことだ!」

「えっ? イ、イチゴ……?」


あ、あほかー!!!


なんだその言い訳はっ⁉︎

やばい、焦りすぎて意味わかんねえこと言っちまった!


どど、どうする?

どうするっつったって……どうする⁉︎


こ、こうなりゃ理屈なんかどうでもいい!

ここはもう、力技でねじ伏せるしかないーー!


「お、お前、今朝イチゴ味のシャンプーしただろ⁉︎」

「えっ、イチゴ? あ、朝シャンはしたけど、イチゴの香りではなかったような……(※注 愛美はさりげなく味から香りに訂正しました)」


あ、朝シャンは本当にしたんかあああい!

そんな愛美が尊すぎて、壊れるほど抱きしめたいいい!


「じゃ、じゃあ、イチゴ食っただろ、朝!」

「ええっ⁉︎ た、食べた、か、なあ……?」

「食ったはずだ! アタシにはわかる!」

「そ、そっかあ、た、食べた? の、かあっ……」


ああ……。

強引に……。

着地……。

完了。


もう……。

支離滅裂すぎて、しんどい……。

とりあえず、シメにもう一回だけフォローしとこう。


「汗臭いっていうのはなあ、アタシみたいなのを言うんだ!」

「え? 百合ちゃんが?」

「ああ」

「そんなことないよ! 全然、汗臭くなんかないっ」

「いや、汗臭いんだよ。だから、お前は自分のことを汗臭いとか言うんじゃねえ」

「……ウソだ、百合ちゃんだって絶対に汗臭くなんかないよ。だって、ほら……」


えっ?

愛美が、

席を立って、

アタシに、

近づいて、

そのまま、

首に、

顔を寄せてーー。




クンクン……。




「ほら……全然、汗臭くない」

「…………(カキーン)」


至近距離の愛美と目が合い、顔を真っ赤にして時が止まったアタシ。


そんなアタシを見て、同じく顔を真っ赤にして急いで自席に座り直した愛美。


「ご、ごめん! 変なこと、しちゃって……」

「は……はあ……」

「へ、変な子って……思わないでね?(さすがにやりすぎたと反省し、うつむきながら『なにやってんのよ私!』的に恥ずかしさそうな表情で頬をプクッ♡)」




ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)




ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。




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