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7.イケナイ両手



アタシは今、猛烈にドキドキしている。

そして、形容しがたい興奮に身体がプルプルと震えている。


なぜなら。


そう。


今。


ついに……。




愛美と、初めての図書委員活動をしているからだっー!




ああ、どれほどこの日が来るのを待ったことか……!


図書委員は全学年の各クラスにいる。

なので、アタシたちに当番が回ってくるのは月1回程度しかない。

つまり、1ヶ月も至福の時間をおあずけされるわけだ!


教室とは違い静寂な空間。

気品あふれる澄みきった空気。

そして、独り占めするように隣りには愛美……。


待ちに待ったこのスペシャルタイム!

今日は思う存分に味わい尽くすぞ〜!


「ねえ、百合ちゃん」


は、はひいっーー!


わわわ!

ウィウィウィ、ウィスパーボイスゥーー!

耳元に、愛美のウィスパーボイスゥーー!


そうか、図書室だから大きな声は出せない。

必然的に会話する時はウィスパーボイスになる!


な、なんというご褒美……!

ウィスパーボイスが愛美の可愛いさを限界以上に引き出すとともに、2人だけの秘密の会話感を見事に演出してくれている!

ああ……図書委員って、最っ高ぉぉぉぉぉ!


「あ、あん? なんだ?」

「どうして百合ちゃんは、図書委員をやりたいと思ってたの?」

「え? べ、別にやりたいと思ってたわけじゃ……」

「そうなの? 夢にまで出てきたぐらいだから、よっぽどやりたいと思ってた」


いや、それはロールキャベツくそ野郎から愛美を守るためであってだな!(※第3話参照)

ええっと……どうしよう。

とりあえず、それっぽい感じで取り繕っとこう。


「夢に出たのはたまたまで……まあ、楽そうだとは思ってたけど」

「そうなんだ……じゃあ、百合ちゃんにとって楽だったらいいね、図書委員」


楽ですとも〜!

楽は楽でも、愛美と一緒で「楽しい」のほうの楽だけどな!

フッフ〜ン♪


「あの人、本の返却かな?」

「おう、それっぽいな」

「お預かりします……はい、ありがとうございます」


ああ、この愛美の優しく丁寧な対応よ……。

アタシもそのしなやかな手に包まれる本になりたいぜぇ。


「返ってきた本が結構たまってきたね。百合ちゃん、一緒に棚に戻しに行く?」

「お、おう」


やあったあああ〜!

行く、行く〜!

愛美と一緒に、本を棚へ戻しに行く〜!

ヒューヒュー♪




◇◆◇◆◇




「えっと、これはここで……っと」


さすがだぜ、愛美。

アタシじゃどこに返せばいいかサッパリわかんねえけど、愛美の手にかかればチョチョイのチョイだな。


「ごめんね、こんなにたくさんの本を持たせちゃって……半分、持つよ?」

「気にすんな、これぐらいなんてことない」


つーか、これぐらいしか役に立てることはない。

愛美お嬢様のため、この百合子、力仕事など喜んでお引き受けしますぞ〜!




◇◆◇◆◇




「この3冊で最後だね。これは、えっと……あ、全部棚の1番上のやつだ。ちょっと、届かないな」

「ああ……待ってろ、あそこの脚立を持って来るわ」


ガシャン……カチッ。


「ごめんね、じゃあ、支えててね?」

「おう、任せとけ」


はあああああっ……!

脚立に上った愛美のおみ足が、こんな至近距離にいいいいいっ!


ああ、なんたる絶景……。

許されるならば、今すぐにでもその太ももを優しく撫でながら頬ずりしたい……。


ーーはっ!


て、ていうか、今なら愛美のスカートの中をのぞくことが可能!

ま、愛美の、パパパッ、パンツが、見放題っ!


……って。


バカバカバカーー!

なに考えてんだアタシは!

そんなこと、していいわけねえだろ!


そ、想像だ。

想像だけで楽しむんだ!(※注 ここから百合子の妄想が爆発します。しばしお付き合いください)


そうだな……。

愛美のことだ。

きっと、色は純白に違いない。

そう、まるで汚れなき雪のように。


ーーはっ!


待て……。

し、白は白でも、ひ……紐パンだったら、どうする⁉︎


ダ、ダメだよ、愛美!

そんなハシタナイ物を履いちゃあ!


そ、その紐を、いったい、誰にほどかせるつもりなんだっ⁉︎

ア、アタシだよな?

もちろん、アタシにほどかせるためだよな? なっ⁉︎


ま、まったく……いつからそんなイケナイ娘になっちまったんだ?

紐パンを履く時は、ちゃんとアタシの許可をとらないとダメだろ?(※注 百合子はかなり深い妄想の世界に突入しておりますが、もうしばらくお付き合いください)


……いや。


待て。


もしかしたら。


予想の斜め上をいって、めちゃくちゃ攻めた感じの黒や紫かもしれないぞーー⁉︎


ど、どうしよう?

そんなの、イメージからかけ離れすぎて頭がついていかないぜ!


だ、だけど、もしそんなの履いてたらどうする⁉︎

それはそれでソソるけど、そんなの絶対に「経験ありの大人女子」であること確定じゃないか!


や、やめてくれ!

愛美は何色にも染まってない純粋な妖精さんのはずだろ⁉︎

それともなにか?

アタシの知らないトコロで、すでに「あんなこと」や「こんなこと」を経験済みだってのか⁉︎


いや、そんなことはない!

絶対に愛美は純白のパンツなんだ!

もちろん、紐パンじゃないほうの!


ーーはっ!


い、いや……。


待て……。


そ、そんな予想なんかすべて振り切って……。


も、もしかして……。


な、なにも……。


は、履いてない……。


ーーとか?




あああああっっっ!




ダメだ!

もうこんな想像してたら身がもたない!

む、無だ!

無になるんだあああ!


ーーはっ!


つ、つーか……、

アタシは今、とんでもないことに気づいてしまった。


脚立に上って本を棚に戻す女の子。

そして、その脚立を支える友達。


こ、このシチュエーションって……。




バ、バランスを崩して倒れた女の子が、脚立を支える友達に抱き止められるという二次元の世界では超ド定番のラッキーハプニングのそれじゃないかーー!




そ、そうか、このチャンスが残っていた!

スカートの中をのぞき込ことこそ自重したが、まだそれを上回るご褒美タイムがやって来る可能性がある!


……いや。


待て。


でも。


この脚立、見るからに新品だな。

それに、このアタシがガッチリと支えている。


……つまり。




この脚立は、今この世で最も安定している物と言っても過言ではないーー!




な、なんてことだ……。

ラッキーハプニングなんて、もう絶対に起こらねえじゃねえか……トホホ。


……ゴ、ゴホン。

まあ、元々アタシの役目は愛美の安全を守ること。

雑念不要。

ここは初心に帰り、脚立を支えることに集中しよう。


「あわわっ、ちょ、ちょっと、百合ちゃん⁉︎」

「あん? どうした?」

「な、なんでっ? なんで急にそんなに揺らすの⁉︎」

「えっ? ゆ、揺らしてなんか……」




ユサユサユサユサユサッ。




……って。


な、なにいいいいいっーー⁉︎


て、手が!

手が勝手に脚立を揺らしてるぅぅぅーー!




なな、なんてことだあっ!

ラッキーハプニングが起こらないとわかった途端、アタシの本能が力ずくでラッキーハプニングを起こしにいってるーー!


「わわ、ちょ、ちょっと、百合ちゃん! お、落ちちゃうよぉ!」


や、やめろーー!

止まるんだあっ、アタシの両手!

こんなことして許されるわけねえだろぉ!


ああ!

な、なのに!

わかってるのに!

ラッキーハプニングを起こそうとするアタシの野蛮な本能が止まらないーー!




ユサユサユサユサユサッッッッッッ!




「ダ、ダメ! ゆ、百合ちゃん! もう、それ以上されたら、アタシ……!」


あああああっ!

か、神様あっ、お許しをををっ!

この欲にまみれた小娘の罪深き両手を、どうかお許しをっーー!


「あ、あ、あっ! も、もうダメぇ!」


グラッーー!




シャラララララ〜ン♪(※注 ただいま、百合子が愛美を優しく受け止めております)




ドサッーー。


「つつっ……だ、大丈夫? 百合ちゃん」


はわわっ……。

まま、愛美の、身体、やわらかい……。

まま、愛美の、匂い、イイ、匂い……。


「わっ! ゆ、百合ちゃん、大丈夫⁉︎ 鼻血が出てるよ! ごめん、そんなに強くぶつかっちゃったんだ……!」(※注 それは鼻に衝撃を受けたことによる鼻血ではありません)


ーーはっ!


な、なんてことだ、鼻血だと⁉︎

しまった、アタシとしたことがつい興奮して……。

ま、愛美の前でなんたる失態!


「ごめんね、痛かったでしょ……(ポケットティッシュで百合子の鼻血を優しくフキフキ)」

「わわっ、べ、別にいいよ!(鼻血をフキフキする愛美の右手をグイッ)」

「あっ……! ご、ごめん……(シュン)」


ち、違うんだ、愛美ーー!

そんな悲しみに暮れた顔をしないでくれーー!


本当は、いつまでも優しく鼻血をフキフキしててほしいんだ!

でも、そんなことされたらアタシの鼻血がいつまでたっても止まんねえから、しょうがなく愛美の手をグイッてしちゃったんだあ!


「アタシのこと……嫌い?」

「……へっ?」

「脚立だってあんなに揺らすし、今も……アタシのこと、嫌いだから?」

「……そ……」

「……………(俯いて、憂いの目で下唇をキュッ)」




「そんなわけ、ねえだろっーー!」


「っーー!(ビクンッ!)」




「だ、だって、アタシは、お前が……」

「……え?」


あ、やばい。

勢い余って「お前が好きだ!」って言いそうになっちまったあ!


ど、どうしよう、なんてごまかす⁉︎

「お前が」まで言っちゃったぞ⁉︎

ええっと、ええっと……!


思いつかん。

仕方ない、かくなる上はーー!


「わ、忘れた!」

「……へっ?」

「なに言おうとしたか、忘れちまった」

「は、はあ……?」


困った時の万能奥義、すべて忘れましたの巻ーー!


すまん、愛美。

アタシの勢い任せの告白は、なかったことにさせてもらうぜ!


「むぅ……(口を少しとがらせ、疑いの目で百合子をジ〜ッ)」


や、やばい!

愛美が疑いマックスの目で見てる!

そして、そんな愛美が可愛いすぎて顔が見れねえ!


「……ウソつき」


ひいいいいいっ!

思いっきりバレてるー!

さ、さすがは愛美お嬢様、私目のウソなど軽くお見通しなわけなのですね……。


でも。


こんな至近距離で、愛美お嬢様の可愛すぎる「ウソつき」を浴びれて私目は幸せでございますぞーー!


「……でも、よかった」

「えっ?」

「私のこと……嫌いじゃなくて」

「あ、あったりめえだろ!」

「そこだけは……これからもウソつきにならないでね?(安心してこぼれ落ちた涙を左手の人差し指でぬぐいながら、心からホッとしたエンジェルスマイルでニコッ♡)」




ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)




ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。




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