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アタシの愛美に手を出すな!〜百合子が初恋した話〜  作者: 碧木美月


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5.消しゴム狂想曲



はあ……。

窓からのぞく空を流れる雲。

退屈な英語の授業を中和してくれる春の陽気。

そして、隣りには愛美。

最高の特等席だな、ここは……。


あん?

なんか、愛美の前の席の男子が後ろを振り返ったぞ?


「ごめん、消しゴム忘れちゃってさ。ちょっと貸してくんない?」


……ピクッ。

消しゴム?


「あ、うん、どうぞ」


えっ?

ちょっ、ちょっと待て、愛美!

かか、貸すのかっ?

お前のその崇高の消しゴムを、いとも簡単に貸していいのかあああ⁉︎


って言うか、ちょっと待てえええええいっ!


そそ、そんな手渡しで!

そんな手渡しでやったら!

手と手がっ!

手と手が触れ合っちまうじゃねえかあああっ!


だめだ、もう見てらんねえっ!(※注 と言いつつも、百合子はしっかり薄目を開けて確認しています)


っ…………。


セ、セェェ〜フ。

ギリッギリだったが、手と手が触れ合うのだけはなんとか回避してた。


ふうぅぅぅ……。

な、なんつう心臓にわるいハプニングなんだ!


……しかし。


あの野郎、前のヤツでもなく、右隣りのヤツでもなく、わざわざ後ろの愛美に頼むなんてどういうつもりだ⁉︎


さては、こいつもあのロールキャベツくそ野郎(※第3話参照)と同様に、愛美を毒牙にかけようとしているのか⁉︎


そもそも、消しゴムを忘れたというのも本当かどうかあやしいぜ。

もしかしたら、それを口実に愛美に近づこうとしてるんじゃ⁉︎


な、なんてことだ、このクラスには危険なヤツしかいねえじゃねえか……!

くそっ、イライラし過ぎて発狂しそうだぜ!


ーーはっ!


落ち着け、今はそんな場合じゃない!

もう少ししたら、あの男子が愛美に消しゴムを返すぞ!


さっきはなんとかセーフだったが、今度はあの男子から愛美に消しゴムを渡すというシチュエーションに切り替わる。


と、いうことは。


自然な形を装って、愛美の手に触れるに違いない!

そして、それをキッカケに愛美に近づいて「あんなこと」や「こんなこと」をするつもりだ!(※注 もう百合子の妄想は止まりません)


くそったれっ……!

そう簡単にコトが上手く進むと思うなよ、この消しゴム貸して詐欺野郎が!

アタシの目の黒いうちは、誰にも愛美に手を出させないーー!


「ごめん、ありがとう」


きた、後ろに振り返った!

だがしかし、これでもくらえっっっ!


「んんんんんっーー!(特大の咳払い)」

「ひいいっ!」


ポロッ、コロコロコロ……。


よしっ!

「不意に驚かせて消しゴムを落とさせる作戦」成功!


しかも、都合よく消しゴムがアタシの机の下に転がり込んできたぜ。これなら、アタシが自然な形で拾って愛美に渡せられる!


……よっと。


ああ、お帰りませ、愛美の消しゴム様ぁ!


「ごご、ごめん、その、決して、拾わせようと思ってしたわけじゃ……(ガクブル)」

「ったりめえだ、二度とこんなフザけたことすんじゃねえぞっ……?(ギロッ)」

「ははは、はいっ!」


ふうう……。

危険は去った。

あとは、この消しゴムを愛美に返すだけだ。


……って、待てよ。

この消しゴム、あの男子が触ってしまってるじゃないか。


な、なんてことだーー!

崇高な愛美の消しゴムに、どこの馬の骨かもわかんねえヤツの手油が……!


こんな状態で愛美が触ってしまったら、もはや強引に間接キスをさせられたも同然……!(※注 百合子は混乱しています)


だ、だが、消しゴムがなければ愛美も困る。

どうすれば……どうすればいい?

考えろ、考えるんだ!




ポクポクポクポクポクポクポク……チーン。




……よし。

アタシの消しゴムと交換しよう。


幸いにもまだ使ってない新品の状態だ。

交換物品としてはわるくないはず!


「ほら」

「えっ? これ、百合ちゃんのじゃ……」

「ん(腕を伸ばして受け取れのサイン)」

「でも、これ、新品……」

「アタシの机の下、汚ねえから。汚れちまったから、これと交換してやる」

「そ、そんな、わるいよっ?」

「んん!(伸ばした腕を振って、もう一度受け取れのサインッ)」

「あ、ありが、と……」


ほっ。

受け取ってくれた。

これでやっと一安心だぜ。


……いや、まだだ。

まだ重要なミッションが残っていたーー。




◇◆◇◆◇




ピンポンパンポーン♪(授業、終了後)


よし、休憩時間に入って消しゴム貸して詐欺野郎が席を立ったぞ。この隙に……!


ーーコト。


よし、準備完了。

消しゴム貸して詐欺野郎の机に、アタシのシャーペンのフタにくっ付いてる小っちゃい消しゴムを置いてやったぜ。


これがあれば、一日ぐらい十分しのげるはずだ。

そして、また愛美に消しゴムを貸してなどと言わないだろう。


……おっと。

そうこうしている内に消しゴム貸して詐欺野郎が帰ってきたな。

さあ、それじゃあ仕上げといきますか。


「あれ、なんだコレ? 消し……ゴム?」

「ソレ、さっきてめえの机の中からポロッと落ちてきたぞ。持ってんじゃねえかよ、消しゴム……!」

「そ、そうなんすか⁉︎ す、すいません!(あれえっ? お、おっかしいな……俺、こんなの机に入れてたっけ⁉︎)」


よし、これでOK。

これでその物体が消しゴムであることを認識させると同時に、自分の物として使わせることに成功だ。


はああ……お疲れ様、アタシ!

グッジョブ、アタシ!




◇◆◇◆◇




ピンポンパンポーン♪(下校の時間)


あれ?

なんか愛美、沈んだ顔してんな……。

な、なにがあった、愛美?


「どうしたんだ? なんか、浮かねえ顔してっけど」

「あっ、ううん、別に……」


いや、絶対になんか隠してるぞ、コレ。

なんだ? なんでも聞くぞ?

そして、そんな顔してる愛美も可愛すぎるよ!


「ごめん、ウソついてるのバレバレだね。実は、ちょっとだけ寂しくなっちゃって……」

「さ、寂しく?」


ど、どういうことだ⁉︎

アタシ、なにか愛美を悲しませるようなことをしてしまったのか⁉︎


こ、心当たりが見つからない……。

だが、今、愛美は悲しんでいる!

な、なぜなんだあっ⁉︎


「百合ちゃん、今日、私の前の席の人にシャーペンの消しゴムを置いたでしょ? しかも、気をつかわせないように、あたかも前の席の人の消しゴムみたいな優しいウソまでついて……」


……へっ?


い、いやいやいや、違うから、ソレ!

あれは、消しゴム貸して詐欺野郎が再び愛美に毒牙を向けないようにするためであって!


「百合ちゃん、優しいなあって思った。でも、どこかモヤモヤしちゃって……」


なな、なんで? なんでっ?

あんなお菓子のオマケみてえな小っちゃい消しゴムを置いたのが、なんかやばかったのか⁉︎


「おかしいでしょ? 私も百合ちゃんから新品の消しゴムをもらったのに、ほかの人にも同じようにしてあげてるのを見たら、なんか、ちょっと……寂しくなっちゃって」


え、えええええっーー⁉︎


ちち、違うんだ、愛美ぃぃぃ!

アタシは消しゴム貸して詐欺野郎に優しさなど微塵も向けてないぞ!

そこにあるのは、愛美へのLOVEだけなんだー!


なんてことだ、アタシとしたことが結果的に愛美を悲しませてしまうなんて……!

ど、どう取り返したらいい?

って言うか、取り返せるのかあああっ⁉︎


「ごめん、変なこと言っちゃって……以上、ヤキモチ終了っ(左手で敬礼ポーズをつくって気丈な様子を強調しつつも、隠しきれない切なさが溢れ出すエンジェルスマイルでニコッ♡」




ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)




ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。




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