48.キケンな先輩(黒い影編)
はぁぁぁ〜。
幸せっ。
アタシは今、超絶に幸せ!
なぜなら。
そう。
今日は。
愛美と、図書委員活動の日だからぁ〜!!!
教室で居る時よりもさらに近い距離間。
優しくダダ漏れする特濃のマイナスイオン。
そして、耳を澄ませば聞こえてくる天使の息づかい。
ああ……。
やっぱり、図書委員ってサイコ〜!
「すいません。コレ、返却お願いします(何者かが愛美に返却本を差し出しっ)」
「はい、お預かりします」
「キミ……1年生だよね?」
「え? あ……はい」
ピクッーー!
な、なんだ?
このインテリ風なメガネ野郎は。
気安く愛美に話しかけんじゃねえ!
「ずっと前から気になってたんだ。可愛い娘が図書委員をしてるな……って」
「え……? えええっっっ⁉︎」
ピッキィィィィィィンッッッーー!
な、なんだとぉ……⁉︎
「ああ、突然ゴメンね。俺、2年の原 黒男。図書委員をしてるってことは、キミも本が好きなの?」
「は、はあ、まあ……(カアァァァ)」
「やっぱり。なんか、わかるんだよね。同じ本好きの人って雰囲気で。名前、訊いてもいいかな?」
「あっ……ふ、普通科、1年A組の凛咲愛美です」
だあぁぁぁっっっ!
だから、なんでそんな出血大サービスの情報提供をしちゃうのーー!(泣っ)
爆裂フェロモン・エレガント野郎の時もそうだったけど、訊かれたこと以外の情報は喋っちゃダメだよぉぉぉ〜!(※第37話参照)
それにしても、どういうつもりだコイツっ⁉︎
アタシが隣りにいるというのに、悠然と愛美を口説きやがって……!
「凛咲さん……ステキな響きの名前だね。どういうジャンルが好きなの? ちなみに、俺は推理系やミステリー系が好きなんだ」
「わ、私は、えっと、その……(タジタジっ)」
「はは、イキナリで困らせちゃったかな? でも、困ってるキミも可愛いけど(マウント気味にクスッ)」
「っ…………(カアァァァ)」
ブゥッチィィィィンッーー!!!
な……!
なっ……!
なっっっ……!
なんなんだあぁぁっっっーー⁉︎
この、インテリ風ナンパ野郎はぁぁぁっっっ!
愛美も、そんなご丁寧に照れないでぇぇぇ〜!
た、耐えられない……。
色々と、耐えられないっ!
インテリ風ナンパ野郎の蛮行も、アタシの目の前で愛美が照れてるのも……!
愛美、お前はこんなヤツにときめいちまったのか?
出会って1分未満のよくわかんねえ野郎に、心を奪われたっていうのかーー?
「……で、凛咲さんの好きなジャンルは?」
「わ、私は……」
「図鑑だあっっっっっっっっっっっっーー!!!」
「ええっ⁉︎(愛美、ビクウッ!)」
「ず、図鑑……?(原先輩、驚きっ)」
「こいつが好きなのは図鑑だっ! 以上っっっ!」
「は、はあ……(原先輩、ポカ〜ン)」
愛美の好きなジャンルなんて、アタシも知らねえ。
それを、ポッと出のテメエに知られてたまるか!
「ははっ、なかなかマニアックなジャンルがツボなんだね。何系の図鑑が好きなの?」
「全部だっっっ!」
「ぜ、全部……?」
「用がすんだならサッサと失せろ! ジャマだ!」
「あの……なんで、そんなに怒ってるの?」
「るっせえな……! 失せろっつったのが聞こえなかったのかっ⁉︎」
「あぁ……聞こえてるよ。とりあえず、今日はもう帰ったほうがよさそうだね。じゃあ……また、凛咲さん。今度会う時は本当に好きなジャンルを教えてね」
「え? ああ……はい」
スタスタスタ……(原先輩、立ち去りっ)
「カ、カッコよかった……(愛美、ボソっ)」
ーーえっ?
な、なに……ソレ。
カッコよかった……って。
そ、それって。
もう。
それって、もう……。
好きって、ことじゃんーー。
「ねえ、百合ちゃん」
……愛美が、恋に落ちた。
「ゆ、百合ちゃん?」
アタシの、隣りで。
「あ、あの、百合ちゃん?」
「…………(百合子、生気のない目でうわの空っ)」
「っ……(愛美、無反応な百合子に心がキュッ)」
アタシの……隣りでーー。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(図書委員活動、終了っ)
……ホントなら、特別なハズの今日の帰り道。
普段は愛美に気づかれないようコッソリ見送ることしかできないけど、図書委員活動の日だけは自然な形で校門まで一緒に帰れるから。
だけど。
今日は。
無言ーー。
結局、あれから愛美とは一言も話さなかった。
……いや。
正確に言えば、何度か愛美から話しかけられた。
でも。
……聞こえない、フリをした。
ほかの誰かに恋をした愛美と話せるほど、心の整理がついていなかったから。
だから。
聞こえないフリをして、無視をした。
世界で1番好きな人を。
世界で1番、愛する人をーー。
1日の終わりをこんな重苦しいものにして……。
なにやってんだよ、アタシ。
そもそも、愛美が誰を好きになろうと自由な話だろ?
変な虫がつかないように守るコトと、誰も好きにさせたくないのは違う。混同させちゃいけない。
もしも愛美の恋が動き出してしまったのなら、それをジャマする権利なんてアタシにない。
……わかってる。
そんなことは、頭ではわかってる。
でも。
それでも。
それでも、アタシは……。
愛美が恋に落ちる時は、その相手がアタシであってほしいと願ってしまってるんだーー。
ピタッーー(校門にたどり着き、愛美が足を止めっ)
「じゃあ……ね、百合ちゃん」
愛美が挨拶してくれてる。
なのに。
返す言葉が出てこない。
そんなエネルギーが、どうやっても作り出せない。
……ダメだ、アタシ。
どうしようもないくらい、重症だーー。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(翌朝っ)
「おはよう、百合ちゃん」
「……ぉぅ」
なにやってんだよ、アタシ。
あれから1日経ったっていうのに。
愛美が、いつもどおり挨拶してくれたっていうのに。
……なのに。
なんなんだ? このアタシの重苦しさはーー。
今だって、あんな呟くような声じゃ愛美に聞こえてるはずがない。
……もしかして。
このまま、アタシと愛美の関係は崩れてしまうのか?
……怖い。
未来が。
ただただ、怖いーー。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(下校の時間っ)
「……じゃあね、百合ちゃん」
「……ぉぅ」
終わっちまった。
結局、こんな調子のまま1日が終わってしまった。
愛美……きっと悩んでるだろうな。
なんで、アタシがこんな状態なのか。
自分がわるいことでもしたんじゃないか……って。
ホント、最低だアタシ。
でも、どうしようもないんだ。
どうやったら元のメンタルに戻れるのか、自分でもわかんねえんだよ。
…………。
あ……。
愛美、帰っちまった。
校門までコッソリ見送ることさえ忘れてた。
毎日、欠かさずやってきたのにーー。
大丈夫だったかな、愛美。
……って。
なに言ってんだ、アタシ。
心配するぐらいなら忘れんなよ。
大事なルーティンなんだろ?
……ダメだ。
なんにもイイことが浮かばない。
……………………。
ん?
ああ……。
教室、もう誰もいねえや。
どんだけ抜け殻みてえにボッ〜としてんだ、アタシ。
……………………。
帰ろうーー(力なく席立ちっ)
愛美の背中を見ずに歩く廊下、久しぶりだな。
……ふふ。
つまんねえ高校生活が始まることにうんざりした、入学式の日に戻ったみてえだ。
「やあ」
あん……?
誰だ?
「昨日、凛咲さんと図書委員をやってた娘だよね?」
っっっーー!
「やっ、1日ぶり(原先輩、振り向いた百合子に右手をあげて微笑みっ)」
こ、こいつは……。
昨日、愛美に馴れ馴れしく話しかけてきたインテリ風ナンパ野郎ーー!
ーー突然、百合子のもとにやって来た原先輩。果たして、その真意とは……(次回へ続くっ)




