37.華麗なる刺客(前編)
ふぁ〜あ。
……眠い。
眠たくて目が開かない。
しかしながら、今日も1日がっつり授業。
ああ……早く愛美の「おはよう、百合ちゃん」をもらわねえと、朝から充電切れになっちまうぜ。
……って。
なんだ?
あの廊下にできてる人だかりは。
しかも、集まってんのは女子ばかり。
いったいなんの騒ぎだ?
「ねえ、今日から国際交流科に交換留学生が来てるらしいよ。フランス人の超イケメンなんだって!(通りすがりの女子生徒A)」
「ウソっ? 見たい、見たぁい!(通りすがりの女子生徒B)」
は〜ん……なるほど。
あの人だかりは、おフランスから来たイケメン留学生を拝もうとする女子どもだったのか。
ま、アタシは全く興味ないぜ。
だって、アタシの心は愛美だけのモノ。
ああ、早く愛美に会いたいよ〜う!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(昼休憩っ)
ふいぃぃ〜。
食った、食った。
さあ、愛美の隣りで食後のまったりタイムを満喫しますかな〜(背伸びっ)
ガタッーー。
ん?
愛美が席を立って廊下に出たぞ、トイレかな?
……いや。
図書室で借りた本を持ってる。
もしかして、読み終わったから返しに行くのかな?
なにはともあれ、後ろからコッソリ愛美の安全を守らなければ!
シュバババッーー!(光速で廊下に移動っ)
うむ、今のトコロ異状なしだな。
ヨシヨシ。
ーードンッ!
「きゃっ!(愛美、廊下の曲がり角で何者かとぶつかり本を落としっ)」
はわわあっ!
ま、愛美が誰かとぶつかった!
くそ、どこのどいつだっ?
まさか、また恋愛不器用ツンデレ野郎の仕業じゃねえだろうな⁉︎(※第26〜27話参照)
スッーー(愛美とぶつかった相手、本を拾いっ)
「スミマセン、オケガハナイデスカ?」
え?
……………。
が、外国人っ?
「タイセツナホンヲヨゴシテシマイ、モウシワケアリマセン」
「あ、い、いえ、こちらこそ……痛くなかったですか?」
で、出たあっっっ!
かつて恋愛不器用ツンデレ野郎の胸を瞬で撃ち抜いた、愛美の「痛くないですか?」マグナム!
やめるんだ、愛美!
そのマグナムの破壊力は、おそらく世界共通だ!
相手が外国人だろうと、それをしたらすぐにフォーリンラブされるぞ!
「ダイジョウブデスヨ。トイウカ……トテモ、ヤワラカカッタデス(嫌味のない爽やかスマイルッ)」
「…………はぇ?(愛美、頬を赤らめポカ〜ンッ)」
な。
…………。
なにぃぃぃぃぃぃっーー⁉︎
とても、柔らかかっただとぉぉぉぉぉぉ⁉︎
サ、サラッとセクハラ発言をしやがって……!
テメエ、いったい愛美のどこを触りやがったっ⁉︎
まさか、 愛美の清らかなトロける極上ミルクプリン(2個入り・非売品)に触ったんじゃねえだろうなあっーー⁉︎
「トコロデ……アナタハ、コノショウセツガオスキナノデスカ?」
「えっ? ああ、はい……」
「ッ……ウレシイデス。ジツハ、ワタシモコノショウセツ、ダイスキナンデス」
「そ、そうなんですか……?」
「ハイ。ウレシイデス、オナジカチカンノヒトトデアエテ」
「は、はあ……(愛美、さらに赤面っ)」
ひゃああああっ!
ま、愛美が照れてるぅ!
や、やめろ!
それ以上、イタズラに愛美を惑わすんじゃねえっ!
「シツレイデスガ、アナタノオナマエハ?」
「あっ……ふ、普通科、1年A組の、凛咲愛美です」
まま、愛美さぁぁぁん!
愛美さんったら、愛美さぁぁぁんっーー!!!
ダメだって!
そんなにベラベラ色んな情報をしゃべっちゃあ!
訊かれたのは名前だけなのに、追加情報を出血大サービスしすぎだって!
「フツウカ、イチネンエーグミ、リンザキマナミ、サン……」
ほらあっ!
復唱してるぅっっっ!
言った情報を復唱して、完全に頭にインプットしてるよ〜!
「……トテモ、ウツクシイヒビキノナマエデス」
「えっ⁉︎ そ、そう、かな……」
「イエ、ナマエダケデハアリマセン。アナタモ……マナミモ、トテモ、ウツクシイーー」
「ひゃ、ひゃい……?(愛美、免疫のない言葉攻めに目&頭がグルングルンッ!)」
っっっっっっっっっっっっ…………!!!
こぉぉぉ……!
こぉぉぉぉぉぉ……!
こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!
このヤロォォォッッッッッッーー!!!
なに勝手に、アタシの愛美を口説いてんだーー!!!
「モウシオクレマシタ。ワタシノナマエハ、ラブール・ゴッドプリンスーー。フランスカラコウカンリュウガクセイトシテ、ホンジツ、コクサイコウリュウカニヤッテキマシタ」
フ、フランスーー!
……なるほど。
そういうことか。
今朝、女子どもが群がってたフランス人の超イケメン留学生ってのはコイツだったのか。
確かに、超がつくほどのイケメンだ。
……だが。
だからといって、白昼堂々と出逢って1分のオンナを口説いていいワケねえだろっっっ!!!
テメエの国じゃあスタンダードなのかもしれねえが、これ以上は好き勝手にさせないぜーー!
ズンズンズンッ!(百合子、愛美とラブールくんのもとへっ)
「おい……!(百合子、愛美の肩をポンッ)」
「えっ? あ、ゆ、百合ちゃん……!」
「こんなトコでチンタラしてっと昼休憩が終わっちまうぞ。その本、返しに行くんじゃねえのか?」
「あ、うん……」
とりあえず、今はこの場から愛美を引き離すことが先決だ。
ウブな愛美には、このフランス野郎とのコミュニケーションは刺激が強すぎて危険だ!
「アア……シツレイシマシタ。デハ、ワタシハコレデ。マタ、オハナシシマショウ、マナミーー(超絶イケメンスマイルでニコッ)」
「っっっーー!!!(愛美の頭から煙がボフンッ)」
スタスタ……(ラブールくん、華麗に立ち去りっ)
……は。
…………。
はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーー⁉︎
な、なんだっ?
あの聞きずてならない最後の一言は!
また、話しましょうだと⁉︎
そんな約束、お前ごときが取りつけていいワケねえだろうがっっっ!
「ぷ、ぷしゅうぅぅ……(愛美、頭の中がオーバーヒートして口からも煙っ)」
ま、愛美ぃぃぃぃぃぃ⁉︎
おい、気をしっかり!
気をしっかり持つんだあぁぁ〜!!!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(翌日の昼休憩っ)
「ぷしゅうぅぅ……」
っ…………。
「ぷしゅうぅぅ……」
……いや。
こりゃ、重症ですな。
愛美お嬢様。
昨日から一夜明けて、今日なら愛美も落ち着きを取り戻してるだろうと安易に思っていた。
だが。
結果はーー。
「ぷしゅうぅぅ……」
え〜……。
このように、ですね。
数秒置きに口から煙を吐き出しておられるワケです。
全然ダメだ、これは……(ガックシ)
昨日のことが、愛美にとって衝撃的すぎるほど刺激が強かったのはわかる。
ウチのクラスの池照米(※第34話参照)ですら、少し霞んでしまうほどの伝説級のイケメン。
そんなヤツから至近距離で美しいなんて言われたら、そりゃ全女子が瞬でイチコロとなるに決まってる。
ただ1人、アタシを除いてなーー!
ふみゅうぅぅ……。
愛美ぃ〜。
今度こそ、ホントに恋に落ちてしまったのか?
せっかくの昼メシも、愛美のことが気になって全然味がわかんなかったよぅ……(泣っ)
「キャアァァッッッーー♡(教室にいる全女子、黄色い声でザワつきっ)」
おわっ!
な、なんだ⁉︎
コイツら急にどうした⁉︎
……って。
全員、廊下のほうを見てるぞ。
いったいなにが……(廊下に目をやりっ)
「アハッ……(ラブールくん、超絶イケメンスマイルで教室内の誰かに向かい手を振りっ)」
な。
…………。
なにぃぃぃぃぃぃーー⁉︎
あのフランス野郎が、こっちに向かって手を振っているだとおぉぉぉ⁉︎
ーーかくして。
突如、現れたフランスからの刺客。
果たして、百合子は愛美を守り切ることができるのだろうか⁉︎(次回へ続くっ)




