35.ほろにが⭐︎ランチタイム
キーンコーンカーンコーン♪(昼休憩っ)
よっしゃ、お待ちかねの昼休憩だぜ!
愛美の隣りで昼メシだぁ、フッフ〜ン♪
「まなみちゃん、ちょっとイイ?」
「え? ああ、藍川さん」
あん?
こいつは、藍川さくらじゃねえか(第8話、第14〜17話参照)
久しぶりのご登場だな。
いったいなんの用だ?
「ねえねえ、愛美ちゃんって甘いモノ好き?」
「ああ……うん、好きだよ」
「よかった! じゃあさ、コレを一緒に食べない?(背中の後ろに隠していた箱をジャジャ〜ンッ)」
はっーー!
そ、その箱は……!
「なんと、ビッグ福堂の4色大福だよ!」
や、やっぱりぃぃぃーー!
連日、全国から客が押し寄せる超人気スウィーツ店の4色大福だぁ!
甘さと酸味のベストバランスを極めた完熟イチゴ!
秘伝のタレでじっくりコトコト煮詰められた和栗!
ミルク風味が幸せの絶頂に誘うショコラ!
コクと爽やかさが奇跡の融合を果たしたチーズ!
見た目はどれも一緒だから、何味に当たるかは食べてみてのお楽しみ。
大の甘党であるアタシが、今もっとも食べたいスウィーツではないかぁ!
「あ、あのビッグ福堂のっ?」
「うん! 実はお母さんの友達がそこで働いててさ、ご厚意でもらっちゃたんだよね〜!」
「す、すごぉい! ゲットするのは至難の業って言われてるのに」
「へっへ〜! でさ、せっかくだから分け合って食べた方が美味しいと思って。だから、アサミと3人で食べようよ!」
「うん、嬉しい……って、はっーー!」
ズウゥゥゥンッッッ……(百合子、超絶落ち込みっ)
で、ですよね〜。
アタシなんか、誘われるワケないですよね(泣)
「っ…………!(愛美、百合子の絶望具合に焦っ)」
「どうしたの? 愛美ちゃん」
「あ、いや、その……! そ、そうだ、藍川さんっ」
「ん? なぁに?」
「よかったら、もう1人誘って4人で分け合うのはどうかな? 私が言うのもなんだけど、ほら、大福は4種類あるし……」
ピクッーー!(百合子の耳、光速で反応っ)
「ああ……そうだね、それでもイイよ。誰を誘う?」
「え、えっと……ま、松城さんは、どうかな……?」
ま、愛美ひぃぃぃ!
お前ってヤツは……(感動っ)
「どぉええぇぇぇっっっーー⁉︎(さくら、驚愕っ)」
おわあっ!!!
ビ、ビックリしたあ!
毎度おなじみ、藍川さくらのオーバーリアクション芸!
「まままっ、ま、松城、さんっ……⁉︎」
「う、うん」
「っっっ…………!(さくら、百合子をチラッ)」
……お、おい。
あからさまだな。
あからさまにイヤですオーラが伝わってくるぞ、藍川さくら。
「い、いや、でも……! ま、松城さん、甘いモノとか、きっと、お好きでは、ないんじゃ……?」
いや。
あいにくだが。
藍川さくらよ。
アタシは、根っからのスウィーツ女子なんだーー!
この学校で1番といっても過言ではない程にな!
ゴールデンウィークの時に行った鯛焼き屋(※第6話参照)にだって、実は毎週のように通ってる!
だから、もちろんアタシからの答えはーー。
「べ、別に嫌いじゃねえけど?(素直に好きとは言えず照れっ)」
「へっ、へえぇぇ〜……⁉︎ そ、そう、なん、です、ねぇぇぇ?」
「……んだよ、なんかワリィか⁉︎(照れっpart 2)」
「いっ、いや、そんなワケ、ないですぅ〜! そ、そんな、ワケ……(さくら、ホントに誘うんですか⁉︎ 的に愛美をチラッ)
「あはは……じゃあ、4人で一緒にってことで……イイかな?(苦笑)」
「あ、う、うん……イ、イイ、よ〜?」
すまん、藍川さくら。
ホントは愛美だけを誘いたいのはわかる。
……でも。
どうしても、アタシもビッグ福堂の4色大福が食べたいんだ〜!
そして。
ありがとう、愛美ぃぃぃーー!
アタシの思いを見透かすような、ナイスアシスト!
やっぱり、あなたはアタシの大天使様だぁっ〜!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(ランチ準備、完了っ)
え〜。
で……ですね。
アタシと愛美。
そして、藍川さくらと小野寺アサミ。
4人そろって昼メシのスタンバイができたワケなんですが。
いや。
なんというか……。
なんなのっ⁉︎
この超重苦しい雰囲気はっーー!
藍川さくらと小野寺アサミが、怯える子犬のような顔で背中を丸めてるぞ……!
わ、わかる。
アタシが目の前にいて怖いのはわかる。
でもっ!
別にとって食うワケじゃねし、そこまで萎縮しなくてイイんじゃね⁉︎
も、もっとリラックスしようよ!(汗っ)
……そして。
なにげに。
今日の、アタシの昼メシがヤバいーー!
みんな弁当箱に米とオカズを詰めてきてるのに、アタシだけスーパーで買ったパンなんだ!
しかも。
そのラインナップ。
①天使のホイップクリームロール。
②りんご姫ちゃんのラブリーデニッシュ。
さらに。
飲み物。
③大和撫子さんの抹茶オレ。
…………。
どれも、アタシのイメージとかけ離れたモノばっかりじゃねえかあぁっっっ!
ど、どうする?
愛美にはいつも見られてるから問題ないけど、藍川さくらと小野寺アサミの目がなんか気になる……!
だってほら、2人とも「え……?」みたいにキョトンとしてるんだもん!
イメージなんて気にせず生きてきたのに、なぜだ⁉︎
ここにきて、チョット恥ずいぃぃ!(赤面っ)
はっーー!
そ、そうだ。
今日のラインナップは、たまたまこうなっただけ感を強調すればイイんじゃね⁉︎
くしくも、今日買ったモノには全て2割引きのシールが貼られている。
ホントは思いっきりアタシの好みで買ったけど、あくまで割引きだったからという理由にすり替えるんだ!
よし、そうしよう!
「はぁ……今日は甘ったるいモンばっかだな。まあ、割引きだったからシャア無しに買ってやったけど」
シ〜ン…………。
……え。
待って。
…………。
ど、どういう感じっっっーー⁉︎
なんのリアクションもないんですけどぉ!
なんかこれ、ただアタシが変なヒトリゴト言ったみたいになってね⁉︎
ああ、もう!
穴があったら入りたい〜!(カアァァッ)
「あはは……え、えっと、それじゃあ、みんな、食べよっか?」
ナ、ナイスだぜ、愛美ぃーー!
このどうしようもない空気を切り裂く女神な一言!
そうだよ、とりま早く食べようぜ!
そして、至高の4色大福を楽しむんだ!
シ〜ン…………。
って。
おぉぉぉいっーー!
な、なんか反応しろよ!
藍川さくらに、小野寺アサミぃぃぃ!
愛美の声が聞こえなかったのかっ⁉︎
「じゃ、じゃあ、いっただっきま〜す……(愛美、苦笑いで合掌っ)
はうぅぅ〜!
ま、愛美が強行突破を図ろうとしている!
もうこれ以上、愛美にだけ特攻役を担わせるワケにはいかない!
アタシもフォローするぜ!
「……おい」
「は、はいっーー⁉︎(さくら&アサミ、ビクウッ)」
「いただきますの号令が聞こえなかったのか……? チンタラせずに、さっさと食おうぜっっっ⁉︎(思わず眼力ドォォォン!)」
「ひぎぃぃぃーー! は、はいぃぃっっっ!!!(さくら&アサミ、涙目で合掌っ)」
…………。
……いや。
アタシ。
フォロー。
下手かよ……(自嘲っ)
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(4人でランチ開始っ)
モグ…………モグ…………。
モグ…………モグ…………。
……ふふ(苦笑っ)
いや。
あのさぁ……。
どういう状況っ⁉︎
これえぇっっっーー!!!
あ、ありえるっ?
女子が4人も集まってランチしてるのに、誰も一言も喋らないとかありえるっ⁉︎
……つーか。
アタシには聞こえるぞ。
藍川さくらに、小野寺アサミよ。
まるで「キュゥゥゥン……」と怯える子犬のような、お前らの心の泣き声が。
そ、そんなに?
そんなにアタシ、怖いっすかぁ〜?(泣っ)
……パクッ。
ん?
あれ?
なんでアタシ、自分の指なんか食ってんだ?
……って。
な、なにぃぃぃーー⁉︎
もう、アタシのパンがないぃっっっーー!
し、しまった……!
この居心地のわるさを紛らわそうと、無意識のうちに食べるペースが超高速になっちまってた!
ど、どうするっ?
愛美たち3人は、まだ半分も食べてないぞ!
デザートの4色大福に行き着くには、まだまだ時間がかかる……。
このあと、いったいどうやってやり過ごす⁉︎
はっーー!
そ、そうだっ。
大和撫子さんの抹茶オレッ!
まだ、あなたがいらっしゃるではないですかぁ!
ズゴゴゴゴッッッ(百合子、大和撫子さんの抹茶オレを吸いっ)
…………。
空ぁぁぁ〜(泣っ)
な、なんてことだ……。
アタシにはもう、残された武器がないぃぃ〜!
ど、どうする?
どうするっつったって、どうするっ⁉︎
…………。
ね、寝る?
机に伏せて、寝る?
……いや、ダメだ!
それじゃあ愛美になにかあった時、すぐ気づけない!
じゃ、じゃあ、えっと……。
そ、そうだ!
大和撫子さんの抹茶オレがまだ残ってるかのように見せかけ、飲んでるフリしてやり過ごす?
……いや、それもダメだっ。
だって、さっき「ズゴゴゴゴッッッ」って音を立てて吸っちまったもん!
あれでもう、飲み切ったことはバレバレだ!
え〜……。
結論。
これは、もう。
ジッと待つしかない(チーン)
アレコレ考えたって仕方ない。
ここは潔く、3人が食べ終えるのを待とう……(遠い目っ)
モグ…………モグ…………。
モグ…………モグ…………。
か、考えるな。
なにも考えず無になるんだ!
できる。
アタシならできるぞ!(腕組み&足組みっ)
モグ…………モグ…………。
モグ…………モグ…………。
モグ…………モグ…………。
モグ…………モグ…………。
…………遅い。
食べるペースが、全然あがらないぃぃ〜!
愛美はもう終盤だが、藍川さくらと小野寺アサミはまだ半分近く残ってるぞ!
スズメの一口みてえにチマチマ食べやがって……。
アタシがいたら、そんなに食欲減退するんすか⁉︎
こんなんじゃ、昼休憩が終わっちまうぜ〜!
「ヒキュンっっっ!(さくら&アサミ、百合子と目が合ってカラダがピックウンッ!)」
え?
「ク、クゥゥンっ……(さくら&アサミ、怯えレベルMAXで箸を持つ手がふるえっ)」
…………。
ま。
待ってっっっーー!
ふ、ふるえないでぇっ!
お願いだから、ふるえないでぇぇぇ!!!
はあぁぁ……こ、こりゃもうダメだ。
アタシがいる限り、コイツらは恐怖のドン底から抜け出せないらしい。
これじゃあ、このあとの4色大福も味がわかんねえぞコイツら。
…………。
ハケようーー。
これはもう、アタシがハケるしかない。
こんな状態で4色大福を食べさせるのは、さすがに気の毒だ。
ホントは、なにがなんでも食べたい。
愛美の隣りで、至高のスウィーツを一緒に食べたい!
でも。
私には聞こえるんだ。
『あ、ああ……どうか、そんな怯えた顔でワタシタチを食べないでーー?』
……っていう、4色大福のふるえる悲しみの声が!(※注 甘いモノが好きすぎて、スウィーツの声が聞こえるようになった女。それが百合子です)
すまん、愛美。
せっかくアタシも誘い入れてくれたのに。
アタシは、ここで退場させていただくぜーー(泣っ)
「……なんか、」
「っ…………?(愛美&さくら&アサミ、ピクッ)」
「やっぱ、アタシ抜けるわ」
「えっーー⁉︎(愛美&さくら&アサミ、驚きっ)」
「昼メシ、甘ったるいモンばっかりだったからな。これ以上甘いモンはいらねえわ」
「えっ? チョ、チョット、ま、松城さん……⁉︎(愛美、困惑っ)」
「つーワケで、4色大福は3人で食べてくれ」
「そ、そうなの? ざ、残念だな……イ、イイの?」
おい。
とか言いながら。
顔がメッチャ嬉しそうだぞ、藍川さくら。
……ま。
でも。
ようやく恐怖から解放されたその表情を見ると、なにも言えなくなっちまうぜ。
「ああ、好きにしろ。お前ら3人で楽しんで食え(ガタッと席立ちっ)」
「ゆ、ゆりっ……! あっ、ま、松城さん……!」
すまねえ、愛美。
そして。
さらば、ビッグ福堂の4色大福っ……。
またいつか、逢う日までーー!(号泣っ)
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(翌日の昼休憩っ)
あうぅぅ……。
ダメだ。
昨日から、ビッグ福堂の4色大福のことが頭から離れない。
やっぱ、自分ファーストを貫いて食べたほうがよかったかなあ……(ガクゥ〜ン)
「ねえ、百合ちゃん」
「わっ! はは、はいっ?(背すじシャキーンっ)」
「よかったらコレ、一緒に食べない?」
へ?
コ、コレは……イチゴ大福?
「百合ちゃん、昨日一緒に4色大福を食べれなかったでしょ? コンビニのだから、ビッグ福堂みたいなプレミアム感はないけど……でも、2人で食べたらきっと美味しいと思って」
っ…………!(感動でジ〜ンッ)
「昨日はみんな1個ずつ好きなのを取って食べたんだけど、最後に残ったのがイチゴだったの。ラスイチは3人で分けようって藍川さんが言ってくれたんだけど、小野寺さんと2人で食べてもらったんだ」
「え? な、なんで?」
「だって……ホントは、百合ちゃんが食べるはずだったはずのイチゴだから。百合ちゃんナシでは、食べれないよ」
ま、愛美ぃぃ〜!
お前ってヤツは……お前ってヤツはぁ!
サクッ……(愛美、備え付けの菓子切りでイチゴ大福を半分に分けっ)
「はい、半分コだよ」
「あ……イ、イイのか?」
「もちろん! そのために買ったんだよ?」
「えっと、じゃ、じゃあ、遠慮なく……」
「へへ……それじゃあ、いただきますっ」
パクッ……(百合子&愛美、半分コのイチゴ大福を互いに一口で食べっ)
っ…………。
う。
美味ぁぁぁぁぁぁい!
イチゴのみずみずしさとか、爽やかな甘さとか、そんなんじゃなくて……。
愛美の気持ちと、愛美と半分コってのが、何よりも最高の旨味成分だぜぇ!(感涙っ)
「うん、おいひぃ。百合ちゃんは……どう?」
「……う、うまひに、決まってんだろっ」
「ふふ、よかった」
ゴクンッ……。
…………。
美味かった。
ホントに、美味かった。
なんか、優しい気持ちになれるというか……。
そんな味だった。
……ありがとう、愛美ーー。
「百合ちゃん」
「ん……?」
な、なんだ?
愛美、ニコニコしてるぞ。
「私ね、百合ちゃんが美味しそうにお昼ご飯やデザートを食べてる顔……大好きなんだ」
「はっ、はあ……⁉︎」
「だって、ホントに幸せそうに食べるだもん。あと……それがね、すっごく可愛いんだ」
「な、なに言ってんだっ? つーか、勝手に人の顔、そんな風に見んなつっーの!(カアァァァ)」
「あはは、ゴメンね。あ……そうだ!」
「っ?」
「今度、私が4色大福をつくってこようか?」
え。
えええぇぇぇ〜⁉︎
ま、愛美の手作り4色大福ぅっっっ⁉︎
そ、そんなの……。
そんなのっっっ!
そんなの幸せすぎて、食べた瞬間にゴートゥーヘヴンだぜえっ!!!
「い、いや、別に、そんなの、ワリぃから……」
はうぅぅぅ!
バ、バッカやろう!
アタシのバッカやろうーー!
なんでそこは、素直にお願いしますって言えないんだぁ〜!
「ふふ……それは、お願いしますってことでイイのかな?」
「へ、へっ?」
「だって、そう顔に書いてあるように見えるよ?」
「っっっーー!(百合子、真っ赤に染まった両頬を手でパチンと覆いっ)」
「あははっ……ゴメンね。からかうつもりじゃなかったんだよ? でも……」
で、でも……?(恥ずかしくて涙目っ)
「そんな可愛い顔がもっと見たいから……私、がんばって作るねっ(もう! 真っ昼間からこんなにキュンキュンさせて……午後の授業が頭に入らなかったら責任とってよね? 的なエンジェルスマイルでニコッ♡)」
ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)
ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。




