32.追跡者(前編)
……最近。
ちょっと、気になってることがある。
ササッーー!
ほらっ、まただ……!
どうも、アタシの周りを誰かがつけ回している。
気配を感じるたびに振り返るが、相手の逃げ足があまりにも早すぎて未だに姿をとらえられない。
いったい誰だ?
なんのためにつけ回している?
くそっ、イライラするぜっ……!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(昼休憩っ)
ふう。
食った、食った。
愛美の横なら、なに食ったって美味さ100倍!
はあ、幸せ〜。
お、愛美が席を立ったぞ。
トイレかな?
よし、じゃあ気づかれないようにアタシも後ろをついて行くか。
この百合子、いつだって愛美お嬢様の安全をお守りいたします〜!
ササッーー!
んっーー⁉︎
なんか今、すっごいスピードのなにかが教室を出たばかりの愛美を追うように走り抜けたぞ?
な、なんだったんだ?
こうしちゃいられない!
愛美になにか危険が迫っている予感がプンプンする!
急げ、アタシも早く後を追うんだ!
ダダダッーー!(百合子、光速で廊下にシュバ!)
ま、愛美は無事か⁉︎
……よかった、特に何事もない様子だ。
よし、もう少し愛美との距離を縮めるぞ!
ササッ……カシャッ!
ササッーー!
な、なにいっっっ⁉︎
誰だっ? 今のは……。
見たこともねえ女子だったぞ?
つ、つーか。
今のヤツ、携帯で愛美の写真を撮ってた……。
そして、目にも止まらぬ速さで姿を消しやがった!
……うん。
こ、これは。
愛美が、盗撮されたあっっっーー!!!
な、なんてことだ……!
愛美が、得体の知れない女に盗撮されてしまった!
はっーー!
……そ、そうか。
最近、アタシの周りで感じていた何者かの気配はこれだったんだ!
今思えば、誰かの気配を感じる時にはいつも近くに愛美がいた。
……そりゃそうだ。
いつでも愛美を守れるように、アタシは常に愛美を射程距離にとらえて動いてるんだもん。
くそっ、うかつだったぜ……!
てっきりアタシをつけ回してるのかと思ってたが、狙いは愛美だったのか!
……だが。
そうとわかれば、チェックメイトだ。
どこのどいつか知らねえが、こんなことしてタダですむと思うなよ……!(指の関節をパキパキッ!)
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(下校の時間っ)
「じゃあ、また来週ね、百合ちゃん」
「お、おう」
……よし。
愛美が教室を出たぞ。
ここは、あの女が油断して愛美に近づきやすいよう、あえていつもより距離を置いて見守り開始だ!
スタスタスタ……。
あ、あれ?
あの女、姿を見せねえな。
すでに愛美は校門の手前まで来てしまったぞ。
今日はもう、現れないのか……?
ササッ……カシャッ!
っっっーー!
で、出たあっっっ!
さっきの女だ!
明らかに愛美を盗撮したぞ!
あんのヤロウ……!
ここで会ったが100年目、絶対に逃がさねえぞ!
アタシの前に間抜けな姿をさらしたこと、後悔させてやるぜ!
ダダダダダッ、ズザアッッッーー!(百合子、光速で謎の女に追いつきっ!)
「おいっ!」
「ひいぃっっっーー⁉︎(謎の女、ビクウッ!)」
……ふん。
この驚きよう。
背中越しでも、やましいことをやってます感がバンバン伝わるぜ。
さあ、振り返りやがれ。
愛美を盗撮する、その汚ねえツラを見せてみろーー!
「っ…………(謎の女、プルプルふるえながらゆっくりと後ろにクルリ)」
ズウゥゥゥンーー!(百合子、仁王立ちでドンッ!)
「ひいっっっーー!!!(謎の女、超絶ビクウッ!)
ふん、やっとまともにツラを拝めたぜ。
……に、しても。
な、なんだ?
このオタク感満載の地味系女子は……⁉︎
昭和を彷彿とさせるガリ勉系メガネ。
目にかかるほど長いパッツン前髪。
髪型に頓着などないことが激バレなおさげ。
こんなヤツがあんな機敏な動きをしてたのか?
お、思ってたヤツと全然違うんですけど!
「はっ、はわっ、はわっ、はわわっ……!」
いや。
うろたえかた、すごいな。
なんというか……。
もう。
すごいなっ(汗っ)
まるで、絵に描いたようなオタク系キョドリキャラだぜ。
……おっと!
そんなことはどうでもいい。
今は、この女の悪事を暴かねば!
「ちょっと……ツラ貸せよ!」
「ひ、ひいぃぃぃぃぃぃ……!」
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(百合子、人気のない場所に謎の女を誘導っ)
……やって来たぜ。
尋問するにはうってつけの日陰な場所。
そう。
校舎裏ーー!
さあ、それじゃあこの盗撮女を思う存分しめあげてやるとしますか!
「……テメエ、さっきウチのクラスの凛咲愛美を盗撮してただろ?」
「え、えええっーー⁉︎ い、いや、そ、そんなこと、そんなこと、してましぇぇぇん!」
……いや、絶対してるだろ。
うろたえすぎて語尾の発音がおかしくなってるもん。
「じゃあ、携帯見せてみろよ」
「えっ⁉︎ い、いや、これは……!」
「やましい物が写ってねえんなら見せられるだろ?」
「い、いや、で、ですが! こ、これは、き、極めて、プライベートな情報を、保存している、端末で、ありまして……!」
「全部を見せろと言ってるわけじゃねえ。写真データさえ見せればそれでいい」
「で、ですから、そそ、それは、た、大変、個人的な、情報ですから……!」
なるほど。
あくまでも抵抗するってわけか。
じゃあ、これならどうだ?
「そうか……なら、選べ」
「は、はひっ⁉︎」
「写真データを見せるか……それとも、今ここでアタシにぶっ殺されるかーー!(眼力ドオォォォン!)」
「ひっ、ひぃやあああっっっーー!!!」
うおあああっ!(ビクウッ!)
な、なんじゃこの慄き方はっーー⁉︎
わ、わかる!
そりゃあ、このアタシが全力で圧をかけたんだからビビるのはわかる!
だ、だけど、ちょっと度を超えすぎだろ!
「あああああーー!!! あああああっーー!!!」
う、うぉぉぉい!
で、でかい!
声でいからあっ!
そんな大声で泣かれたら、誰かに気づかれちまうだろうが!
ヤバい!
そして、お前の顔もヤバいんだ!
泣き叫ぶ子どものごとく、ヨダレと鼻水がブッワ〜って溢れ出してるからあっーー!
「お、おいっ、落ち着け! 落ち着くんだ!」
「あああああーー!!! あああああっーー!!!」
ダメだあっ!
全然落ち着かないぃぃ!
ど、どうすれば!
どうすればいい⁉︎
「お、おいっ、聞け! いいか、落ち着くんだ! と、とりあえず息を吸え! 鼻から大きく息を吸うんだ! そして、鼻から大きく吐け! こうだ! スゥ〜、フンッ〜(※注 百合子は焦りすぎて、間違った深呼吸方法をレクチャーしております)」
「あああああーー!!! あああああっーー!!!」
ああ、もう限界だっ!
絶対に誰かに気づかれるぅ!
ど、どうすれば!
どうすれば……!
はっーー!
そ、そうだ!
アタシがいなくなればいいんじゃねっ⁉︎
こいつの恐怖の対象はアタシだ。
そのアタシが目の前からいなくなれば、きっと落ち着くはず!
よし、ひとまずは退散だ!(ピュ〜!)
…………。
ど、どうだ?
泣き声はおさまってきたぞ。
も、もう行っても大丈夫かな?
チラッ(百合子、謎の女をソロッ〜と確認)
あ。
やばい。
思いっきり目が合ってしまった。
「あああああーー!!! あああああっーー!!!」
だあああっ!
ま、またイチからやり直しぃぃぃ!
ーー果たして、こんな調子で百合子は謎の盗撮女をしめあげることができるのか⁉︎(後編へ続くっ)




