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3.外敵排除



ああ、愛美……今日も可愛いな。

可愛すぎて、お前を中心にビッグバンが起きちまってるぜ。

お前はいったい、1人で何個の宇宙を創り出してしまうつもりなんだ……?


「あ、あの、凛咲さん」

「えっ? あ、はい」


あん?

なんだ、この男子は?

こいつは確か、1番廊下側の列の最後部席の……名前は知らん。


んなことはどうでもいいが、アタシの愛美にいったいなんの用だ⁉︎


「僕、草中くさなか二久ふくって言います。突然なんだけど、凛咲さん、入る委員会とかもう決めた?」


委員会だと?

そう言えば、今日のホームルームでクラスの各委員を決めるとか言ってたな。


「いや、まだ決めてないけど……」

「そうなんだ。あのさ……もしよかったら、一緒に図書委員をやらない?」


ピクッッッーー!


な、なんだと……?

アタシの愛美と一緒に、図書委員だとおおおっ⁉︎


「凛咲さん、休憩時間によく本を読んでるよね? もしかして本が好きなのかな……って。僕も読書が趣味でさ、よかったら一緒に図書委員をできたらいいなって思って」




……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


ブッチィィィィィンンンーー!




い、一緒に図書委員だとおぉっっっーー⁉︎

ふざけやがって、てめえごときが愛美にそんな打診していいねえだろ!


じっ〜〜〜。


ピピピピピ……(※注 ただ今、百合子が草中君の人物像を超速分析中です)


なるほど……だいたい分かったぜ。


いかにも真面目そうな容姿とたたずまい。

本当かどうか知らねえが趣味が読書。

第一人称に「僕」を選択するセンス。


こいつは、今まで目立たない存在キャラとして生きてきたのは間違いない。


だがーー。


アタシには、その裏に隠された本性がバレバレだぜ!

実のところ、内心では己のスペックに自信を持っていて、自分が本気を出せば意外とリア充など簡単にゲットできると思ってるんだろ!


そう!

そんな「ムッツリナルシスト」こそが、てめえの正体だ!(※注 あくまで百合子の私見です)


そして頭ん中では、


「クラスカーストはいつも最下層が定位置だった僕が、高校デビューをきっかけに本気を出したら読書好きの天使とソッコーで付き合うことになった件」


……みてえなラノベを勝手に執筆して、そのヒロインとして愛美を引きずり込もうってんだろ!


そんでもって、最終的には物静かな図書室で愛美に「あんなこと」や「こんなこと」を強引にするつもりなんだ!


なんてことだ、こいつは想像以上にゲスい!

一見は草食系男子だが、中身はゴリゴリ肉食系のロールキャベツ男子じゃねえか!


いや、そんな言葉じゃ生ぬるい!

てめえに相応しい代名詞は、ロールキャベツくそ野郎だっっっ!


都合のいいシナリオを描こうたって、そうは問屋がおろさないぜ!

愛美をてめえなんかの毒牙にはかからせない!




「残念だったなーー!」




「ひいっっっ! な、なんですかっ、急に?」

「こいつは、すでにアタシと一緒に図書委員をする約束済みだ!」

「へっ……?」


目を丸くして「そ、そうなの?」と愛美にくロールキャベツくそ野郎。

そして、それ以上に目を丸くして「え、えっと、そう……だったっけ?」とキョトンとする愛美。


そりゃそうだ。そんな約束してねえんだから。

だが許せ、これも愛美を守るためーー!


「そういうことだ。わかったらサッサと失せろっ!(ギロッ!)」

「そ、そっか、わかった! ごめん、じゃ!」


ふん、ようやく去ったか。

最強パイセンたちをのした効果はこういうトコで役立つな。そう思うとわるくない。


「あ、あの、百合ちゃん……」

「あん?」

「私たち、そんな約束してたっけ?」

「…………」

「…………」

「……した」

「え……?」

「…………」

「…………」

「……昨日、アタシの夢ん中で」

「……へっ?」


バカやろうーー!


アタシの、バッカやろうっっっ!


もっとマシなウソのつき方があるだろうが!

こんな意味わかんねえウソついて、絶対に愛美に引かれちまったに違いない……!


「……ふふ」


えっ?

笑ってる?


「そっか……それは仕方ないね。私も勝手に百合ちゃんの夢に出ちゃった責任があるし、既成事実もできちゃった以上、2人で……やろうか?」


ま、愛美と、2人で、図書委員。


…………。




やあああったああああああああああーー!




や、やばい!

ワクワクとトキメキで、今から胸が爆発しそうだぜ!


ロールキャベツくそ野郎を排除するためだったのは間違いない。


だが、しかし!


実は途中から、愛美と一緒に図書委員をすることしか考えてなかったんだ!


ああ、早く!

早くホームルームの時間よ来い〜!




◇◆◇◆◇◆




「それじゃあ、美化委員は中川と細矢の2名でお願いします」


く、来るぞ!

次がいよいよ図書委員の選出だ!


ロールキャベツくそ野郎は排除したが、もしほかのヤツが立候補したらクジ引きになっちまう。

だが、アタシがソッコーで立候補すれば、ほかのヤツらはビビって手を挙げないはずだ!


「はい、それじゃあ次は図書委員2名を決めます。やりたい人は挙手を」


よし、挙手だ!(シュビイィィィ!)


いいぞ、クラス全員がこっちを見た!

これでみんなビビって手を挙げないはず……。


って、あれ?

クラスのヤツらの視線が微妙にアタシから左にズレてるぞ?


左をチラ。


ま、愛美ぃぃぃーー⁉︎

もう手を挙げてくれてるぅ!

しかも、まるで天に突き刺さるように指先まで真っ直ぐ伸ばした最上級の挙手で!


「や、やる気あるなあ、お前ら……えっと、ほかに立候補がいなければ、図書委員は松城と凛咲の2人でいいか?」


パチパチパチ……。


や、やったあ、愛美と2人で図書委員だ!

ああ、愛美ぃ、愛美ぃぃぃ〜!




◇◆◇◆◇




ピンポンパンポーン♪(下校の時間)


「ねえ、百合ちゃん」

「あん?」

「図書委員の立候補の時さ、なんであんなに早く手を挙げたの?」


そ、そんなの、誰にも愛美を取られたくないからに決まってるだろ!


「べ、別に……一緒にやるって言った手前、ほかのヤツが手を挙げたら面倒くさいと思っただけだ」

「……ふふっ」

「な、なんだよ?」

「だって、私も同じことを考えてたから。ほかの人が手を挙げてクジ引きになるのはイヤだったの。だから、絶対にすぐ手を挙げようと決めてたんだ」


ま、愛美もそんな風に思ってたのか⁉︎

そんなの、嬉しすぎて抱きしめたくなるじゃねえか!


「なんか、似た者同士だね? 私たち」

「そ、そうか?」

「図書委員……がんばろうね!(花畑を心地よく吹き抜ける風のように爽やかなエンジェルスマイルでニコッ♡」




ドボフンッッッーー!(※注 百合子の頭の中が爆発しました)




ーーその後、百合子が昇天したのは言うまでもない。




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